12番目のF1チーム参戦なるか、資金と自動車メーカーを既に確保とサフナウアー

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かつてアストンマーチンやアルピーヌのF1チーム代表を務めたオトマー・サフナウアーが、新たなF1チームの設立に向けて本格的な動きを進めている。2025年5月20日に公開されたポッドキャスト番組「Team Principal Podcast」の中で、自身が主導する“12番目のチーム構想”について公に語った。

この計画は1年以上前から水面下で進行しており、サフナウアーによれば、資金面・技術面ともに堅実な基盤を既に確保しているという。「資金面では、F1チームを支えるのに十分な財力を持つ真剣な投資家グループが存在する。また、F1参戦を希望している自動車メーカーもすでに確保している」と語り、その本気度をうかがわせた。

具体的な出資者名や、パワーユニット供給元となる自動車メーカーの名前については明かさなかったが、いずれも高い実現可能性を持つパートナーであるという。なお1年前の段階では、「北米の幾つかの組織」が出資者であると説明している

さらにサフナウアーは、「実際に売りに出されるかどうかが問題」としつつも、新規参入だけでなく、既存チームの買収も視野に入れていることを認めた。

サフナウアーによれば、ゼロからチームを立ち上げる場合と既存チームを買収する場合のコスト差は「10%から30%」程度に収まるという。実際の差額は、売却価格や設備投資に加え、新規参入チームが支払わなければならない希薄化防止料に左右される。

アルピーヌのオトマー・サフナウアー代表と並んで歩くニック・デ・フリース(アルファタウリ)、2023年6月16日F1カナダGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

アルピーヌのオトマー・サフナウアー代表と並んで歩くニック・デ・フリース(アルファタウリ)、2023年6月16日F1カナダGP

新規チームとしての参戦を目指す場合、国際自動車連盟(FIA)とフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)の承認が不可欠だ。FIAは競技的、技術的、財務的な適格性に関して厳格な評価基準を設けており、さらにFOMとの商業契約が必要となる。この二重の承認プロセスが、新規参入における最大の障壁となっている。

それでもサフナウアーは、2028年または2029年の参戦を視野に、着実に準備を進めているという。ゼロからの立ち上げには施設整備や人材確保に2~3年を要するとしつつも、「適切な人材を集められれば、3~4年で競争力のあるチームを築ける」と自信をのぞかせた。

自身の役割については、従来のチーム代表にとどまらず、トト・ウォルフ(メルセデス)のように経営にも関わる“共同オーナー”的ポジションでのF1復帰を希望しているという。短期的なリーダーシップではなく、長期的かつ戦略的なチーム運営に取り組む考えだ。

メルセデスのトト・ウォルフ代表と共にセッションを見守るアンドレア・キミ・アントネッリ、2024年8月30日F1イタリアGPフリー走行Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

メルセデスのCEO兼チーム代表トト・ウォルフと共にセッションを見守るアンドレア・キミ・アントネッリ、2024年8月30日F1イタリアGPフリー走行

サフナウアーにとって、チームの立ち上げを経験するのはこれが初めてではない。かつて、ブラウンGPやホンダF1ワークスの前身であるBARにおいて、オペレーションディレクターとして創設期から組織を支えた実績がある。

「当時は従業員が3人というゼロからのスタートだったが、2年目(2000年)にはベネトンと並んでコンストラクターズランキング4位(同点ながらも実際には5位)を獲得した。何が必要だったかは今でも鮮明に覚えている」と述べた。サフナウアーにとって、今回の挑戦は過去の延長線上にあるともいえる。

現時点でFIAは新規参入チームの募集を行っておらず、公式な申請プロセスも存在していない。だがサフナウアーは、機が熟した時に即座に動けるよう、万全の準備を進めている。