エステバン・オコン(ハース)とリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)、2025年F1イギリスGP
Courtesy Of Haas / Red Bull Content Pool

F1イギリスGP 接触の実像―ローソン対オコン、事故見解に浮かぶ“違い”

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2025年F1第12戦イギリスGPのオープニングラップで発生したエステバン・オコン(ハース)との接触により、リアム・ローソン(レーシング・ブルズ)はわずか数百メートルでリタイア。52周のレースは、波乱の幕開けとなった。

両者は責任の所在について明言を避けたが、それぞれの言葉からは、接触に至るまでの状況認識や思考に、明確な違いがあったことが浮かび上がる。

スチュワードは本件をレーシングアクシデントとして処理。どちらの責任も問わなかった。ただ、両者の証言を照らし合わせると、状況認識という点では、ベテランのオコンが一歩上回っていた印象を受ける。対照的に、ローソンはポジションアップを焦ったようにも見える。

接触はターン3・4を並走したまま迎えたターン5で発生した。アウト側にいたローソンがターンインした瞬間、左リアタイヤがオコンの右フロントに接触。ローソンはスピンを喫してコース外に弾かれ、バーチャル・セーフティカー(VSC)が導入された。

ローソンはレース後、映像を見直していないから「何が起きたのか分からない」としつつ、「ターン5ではスペースを空けようとした」「とにかく1周目を“生き残ろう”としていただけなんだ」「無理に攻めようとしてたわけじゃない」と語るなど、実際のレース状況よりも自身の意図、およびその正当性を強調する発言が目立った。

一方で、「スタートがすごくうまくいって、目の前が開けた」とも語っており、ポジションアップへの誘因があった可能性を示唆した。「チャンスを逃したのがとにかく悔しい」と述べるその姿には、焦りにも似た感情がにじむ一方で、1周目に早くも何らかの勝機を見出していたことがうかがえる。

オコンはレースを完走して13位でフィニッシュしたが、終盤にはチームメイトのオリバー・ベアマンとも接触。スピンを喫しており、「本当にフラストレーションの溜まるレースだった」と振り返った。

ローソンとの接触については「2台の間に挟まれる形になって、『これは当たるかも』と思ってすぐに引こうとしたけど、間に合わなかった」「正直、3台が並ぶスペースなんてなかった」と語り、接触のリスクをより早い段階で察知していたことを示唆した。

また、「彼が無事でよかったよ」とローソンへの配慮も忘れず、「僕のマシンがあれで壊れなかったのは奇跡だった」とも語り、接触の衝撃がいかに激しかったかを印象付けた。

この日、レーシング・ブルズにとっては災難が続いた。もう1台のVCARB 02をドライブするアイザック・ハジャーも、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)との接触でリタイア。チームはまさかのダブルリタイアを喫し、苦しい週末を象徴するかのような苦い結末を迎えた。

決勝前のグリッドでナイジェル・マンセルと話すリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP決勝(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝前のグリッドでナイジェル・マンセルと話すリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP決勝(シルバーストン・サーキット)

決勝前のドライバーズパレードでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と談笑するエステバン・オコン(ハース)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP決勝(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Haas

決勝前のドライバーズパレードでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と談笑するエステバン・オコン(ハース)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP決勝(シルバーストン・サーキット)


2025年F1第12戦イギリスGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)が3番グリッドから優勝。オスカー・ピアストリが2位でフィニッシュし、マクラーレンが1-2フィニッシュを飾った。3位には自身初となる表彰台獲得を果たしたニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)が続いた。

スパ・フランコルシャンを舞台とする次戦ベルギーGPは、7月25日のフリー走行1で幕を開ける。

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