
「ヘリ待機」で臨んだ英GP―Williams代表ヴァウルズの知られざる妻への愛と尊敬
2025年F1第12戦イギリスGPの週末、ウィリアムズのチーム代表ジェームズ・ヴァウルズは、仕事と家庭の間で文字通り「二足のわらじ」を履いていた。
というのも、レースウィークと重なるかたちで、妻レイチェルさんとの間の第2子の出産予定日が重なっており、ヴァウルズはその緊急事態に備えて、なんとヘリコプターまで待機させていたという。
「ご想像の通り、私はあらゆる事態に備えるタイプなんだ。計画に次ぐ計画……すべて準備は整っている。ヘリコプターの手配も済んでいるし、あらゆる手を打ってある!」とヴァウルズは英紙『テレグラフ』に語った。
すでに19か月になる長女エロディちゃんがいる中でヴァウルズは、チーム代表だけでなく父親・夫としての責務を両立するため、万全の体制を整えて週末に臨んでいた。
ヴァウルズ夫妻は、イギリスGPの会場シルバーストン・サーキット近郊のオックスフォードに住んでいる。通常であれば車で1時間もかからない距離だが、レースウィーク中は大規模な交通混雑が予想される。
ふたりの出会いは、ヴァウルズがメルセデスで戦略責任者を務めていた2019年。初デートの際、ヴァウルズは「僕の仕事は人生そのものだから、すごく長時間働くけどいいの?」と告げた。それに対し、レイチェルさんも「私もよ」と即答したという。
ヴァウルズが「英国でも最高の外科医のひとり」と称賛するように、レイチェルさんの経歴は輝かしい。
名門オックスフォード大学でダブル・ファースト(2専攻で最優秀成績)を修めた後、ロイヤル・ロンドン病院の救急科で研修。その後、形成外科と乳がん外科に進み、現在は乳がん切除後の再建術におけるメッシュ素材の活用に関する博士研究に取り組んでいる。
「彼女は診断も、切除手術も、再建手術まで全部ひとりでこなせるんだ。そんな人は他にはいないよ」とヴァウルズは語り、「私はただF1の世界で働いているだけだけど、彼女は人の人生に関わる仕事に取り組んでいる。賢いのは僕じゃない、彼女のほうさ」と、深い尊敬と愛情をにじませた。