
”フェイク画像”で始まった家族への攻撃、ドゥーハンが悲痛の訴え―アルゼンチン大手メディアも誤報拡散
SNS上で拡散されたフェイク画像により家族が誹謗中傷の標的となったことを受け、アルピーヌのF1リザーブドライバーであるジャック・ドゥーハンが、嫌がらせをやめるよう公に訴えた。
発端となったのは、イモラで開催されたエミリア・ロマーニャGPの予選中に、ドゥーハンに代わってアルピーヌのレースシートに昇格したフランコ・コラピントがクラッシュした一件だった。
その後、F1のパロディアカウント「formulafakers」が、ジャックの父でありMotoGPの伝説的世界王者でもあるミック・ドゥーハンが、クラッシュを嘲笑するかのようなInstagramストーリーを投稿したように見せかけた偽の画像を作成し、公開した。画像には、クラッシュしたコラピントの写真とともに「本当に感動的だ」というキャプションと笑顔の絵文字が添えられていた。
Courtesy Of Alpine Racing
アルピーヌF1リザーブドライバーのジャック・ドゥーハンと、父親でロードレース世界選手権(MotoGP)5連覇を果たしたミック・ドゥーハン、2024年F1オーストラリアGP
この偽画像は瞬く間に拡散され、特にコラピントの母国であるアルゼンチンの大手を含む複数のメディアが事実として報道したことで、ドゥーハン一家への誹謗中傷が激化した。ジャック・ドゥーハンは自身のInstagramで「この手のコンテンツは極めて有害」と警鐘を鳴らし、家族への攻撃をやめるよう呼びかけた。
「ご覧の通り、拡散されている話は全くの虚偽だ。アルゼンチンのファンが、僕と家族を悪く見せようとして捏造した。実際には父が投稿していないにもかかわらず、あたかも父の投稿のように見せかけて編集された。お願いだから、家族に対する嫌がらせを止めてくれ」
ドゥーハンは当初、画像の出所はアルゼンチンのファンによるものだと考えていたが、後に訂正。「アルゼンチンの複数のメディアが偽造画像を誤って報道し、それが家族への誹謗中傷につながった」と説明した。
同じ週末には、角田裕毅(レッドブル)も一部のコラピント支持者からSNS上で誹謗中傷を受ける事態となり、コラピント本人がファンに対し冷静な対応を求めた。これを受けて、FIA会長モハメド・ベン・スレイエムは、両ドライバーを全面的に支持する声明を発表した。
一連の事態を受け、アルピーヌF1チームも声明を発表。「どんなにスーパーヒーローのように見えるドライバーであっても、そのヘルメットの奥には“ひとりの人間”がいる。感情を持ち、家族や友人、そして愛する人々とともに生きていることを忘れないでほしい」と述べ、誹謗中傷を非難した。
問題の発端となった「formulafakers」アカウントも「あのスクリーンショットを投稿したのは間違いだった」と認め、「ドゥーハン一家は、我々のフェイクニュース投稿で攻撃されるに値しない」と謝罪した。さらに、アルゼンチンの大手メディアの1つも「再発防止に取り組む」との声明を発表し、誤報に対して謝罪している。
今回の騒動は、SNS上での過剰なファンダムの在り方が再び問われる契機となっている。ドゥーハンに関しては、マイアミGPにて本人および、その交際相手を含む家族に対する脅迫が行われ、24時間体制の警備が敷かれたことが報じられている。