言葉を失ったF1―物議を醸すISC「付則B」の見直しを示唆するFIA会長

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F1を含むFIA管轄下の各チャンピオンシップに参戦するドライバーたちからの懸念を受け、「罵り言葉」問題を巡って2025年より導入されたFIA国際競技規則(ISC)付則Bが、修正される可能性が浮上した。

FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長は、今週末のマイアミGPを前にInstagramを通じて、ドライバーたちから「建設的なフィードバック」を受けたことを明かし、罵り言葉の使用や、FIAの中立性原則に反する言動など、幅広い違反行為に対する処罰内容をまとめた同ルールの「改善」を検討していると述べた。

新たに導入されたこのルールでは、F1ドライバーが「侮辱的または不適切な発言」を行った場合、1回目の違反で4万ユーロ(約650万円)の罰金、2回目で8万ユーロ(約1,300万円)の罰金および1か月の出場停止(執行猶予付き)、3回目で12万ユーロ(約1,950万円)の罰金に加え、選手権ポイントの減点が科される可能性がある。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は前戦サウジアラビアGPの決勝後、メディアからの質問に対して頑なに口を閉ざす方針を貫いた。FIAやスチュワードに対し、少しでも否定的な発言をすれば、それだけで処分を受けかねないという懸念があるとみられる。

FIAはベン・スレイエムの主導の下、2024年から罵り言葉の取り締まりを強化し、2025年からはさらに厳格な罰則を適用可能としたが、この取り組みは当初から物議を醸してきた。

ドライバーたちは、レース中の無線での感情的な発言や、英語が母国語でない者が表現のニュアンスを十分に理解せずに不適切な言葉を使ってしまうケース、あるいは自分自身や自車に対して怒りを表現するような場合などについて、柔軟で寛容な対応を求めてきた。

ベン・スレイエムは投稿の中で「元ラリードライバーとして、彼らが直面する要求を誰よりも理解している」と述べた上で、「ルールを作るのも人間、改善するのも人間だ。この『継続的改善』という理念は、私が常に信じてきたものであり、FIAが行うすべての活動の中心にある」として、対応の柔軟化に前向きな姿勢を示した。

なお、具体的な修正時期やルールの変更内容については、現時点では明らかにされていない。2025年はFIA会長選挙の年でもあり、今回の見直しが現体制の評価やベン・スレイエムの再選にどのような影響を及ぼすのかという点も注目される。

ISC付則B:スチュワード・ペナルティガイドライン

該当規則(ISC) 初回違反 2回目の違反 3回目の違反
第12.2.1.f条:FIAやモータースポーツの利益およびFIAが掲げる価値に損害を与える、如何なる言動、文書 €10,000 €20,000 + 1か月の出場停止(執行猶予付き) €30,000 + 1か月の出場停止 + チャンピオンシップポイント剥奪
第12.2.1.l条:侮辱的・不快・粗野・攻撃的な言動を含む不品行 €10,000 €20,000 + 1か月の出場停止(執行猶予付き) €30,000 + 1か月の出場停止 + チャンピオンシップポイント剥奪
第12.2.1.n条:暴力や憎悪を扇動する公の場での行為 €10,000 €20,000 + 1か月の出場停止(執行猶予付き) €30,000 + 1か月の出場停止 + チャンピオンシップポイント剥奪
第12.2.1.o条:FIAの中立性原則に違反する政治的・宗教的・個人的な発言および掲出(事前にFIAまたは該当ASNから書面による承認がない場合) €10,000 + 公的謝罪および発言撤回(罰金は執行猶予の場合あり) €20,000 + 公的謝罪および発言撤回 + 1か月の出場停止(執行猶予付き) €30,000 + 公的謝罪および発言撤回 + 1か月の出場停止 + チャンピオンシップポイント剥奪
第12.2.1.p条:競技会中のFIA公式式典において、取り決めや出席に関するFIAの指示に従わなかった場合 €15,000 €30,000 + 次戦でのイベント指定エリアへの立入禁止 €45,000 + 6か月間の指定エリア立入禁止 + チャンピオンシップポイント剥奪

上記の罰金は、違反が発生したシリーズに応じて下記の数字が乗算される。

シリーズレベル 対象カテゴリ 適用倍率
レベル1 国際シリーズ(※第12.2.1.o条は対象外) ×1
レベル2 FIA地域選手権およびFIAカップ ×2
レベル3 FIA世界選手権(F1を除く) ×3
レベル4 FIA F1世界選手権 ×4

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