リードするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)と、その後方にほぼ一列で続くシャルル・ルクレール(フェラーリ)を含むライバル車両、2025年4月6日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)

F1日本GP「退屈だった」ドライバーから噴出―新路面とタイヤの功罪、一方で上がる”素晴らしい鈴鹿”の声

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2025年4月6日、三重県・鈴鹿サーキットで行われたF1第3戦日本グランプリの決勝では、順位の変動がほとんど見られず、複数のドライバーがレース後に「退屈だった」と率直な感想を口にした。

追い抜き困難な鈴鹿、現代F1マシンとのミスマッチ

現代のF1マシンは年々大型化・重量化が進んでおり、オーバーテイクが難しいことで知られる伝統的なコースでは概してレース展開が単調になりがちだ。

特に鈴鹿の場合、DRSゾーンはホームストレートの1か所のみ。加えて、コース序盤の高速セクションでは、先行車の巻き上げるダーティエアーの影響で接近すら困難になる。

さらに今季はグリッド全体のパフォーマンス差が極めて小さく、DRSトレインが発生しやすいという構造的な問題もある。

グリップは向上、戦略は単調化―“滑らかすぎる”新路面の功罪

ただ、2025年大会に限って言えば、主な要因はターン1からデグナー1(ターン8)にかけて再舗装された新しい路面と、持ち込まれたタイヤの種類にあるといえる。

再舗装により路面のグリップは大幅に向上し、速度も上昇したが、同時にタイヤのデグラデーションが著しく低下。その結果、1ストップでレースを走り切ることが容易となり、戦略の幅が著しく狭まった。

鈴鹿サーキットのターン2で隊列をリードするマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年4月6日(日) F1日本GP決勝レースCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

鈴鹿サーキットのターン2で隊列をリードするマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年4月6日(日) F1日本GP決勝レース

16番グリッドからスタートして16位でフィニッシュしたニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)は、「もっぱら退屈なレースだった」と振り返り、「新しい舗装は確かに滑らかで速いけど、デグラデーションが減ったせいでレース全体が単調になってしまった」と分析した。

さらに、「ダーティエアーの影響が以前よりも悪化しているのは明らかだ」として、オーバーテイクの難しさに拍車がかかっているとも指摘した。

鈴鹿初走行となったチームメイトのガブリエル・ボルトレートも、「前のクルマより0.4秒速くても追い抜けなくて驚いた」と嘆いた。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)もまた「本当に退屈なレースだった」と評価し、アレックス・アルボン(ウィリアムズ)も「退屈だったけど、ポイント圏内でレースをしている時は歓迎だね」と苦笑交じりにコメントした。

タイヤ配分がもたらす戦略の硬直化―ピレリへの注文

タイヤサプライヤーのピレリは、今回も例年通り最も硬いコンパウンド(C1~C3)を持ち込んだ。鈴鹿はカレンダー上で最もタイヤに厳しいサーキットのひとつとして知られる。

だがジョージ・ラッセル(メルセデス)は、ピレリがタイヤ選択において保守的だったと考えており、少なくとももう1段階柔らかいレンジを選択すべきだったと指摘した。

「今回の鈴鹿に限らず、同じく再舗装された中国でも同じことが起きた。新しく滑らかな路面に対して、持ち込まれるタイヤが硬すぎるんだ」と語り、戦略の多様性を欠いた要因としてタイヤを挙げた。

ルイス・ハミルトン(フェラーリSF-25)のタイヤ交換作業を行うクルー、2025年4月6日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ルイス・ハミルトン(フェラーリSF-25)のタイヤ交換作業を行うクルー、2025年4月6日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)

マルチストップ義務化の可能性

2025年のモナコGPは新たな試みとして、レース展開の幅を確保すべく、最低2回のピットストップが義務付けられる。鈴鹿を含む他のクラシックサーキットにも、同様の措置の導入が検討される可能性はある。

とはいえ、2026年には新たな技術レギュレーションが導入されるため、車体のサイズや空力特性の変化により、ダーティエアーや追い抜きの難易度が緩和され、自然と問題が解決する可能性もある。

今回もまた、素晴らしい鈴鹿だった―アロンソ

レース後のインタビューに応じるフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2025年4月6日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

レース後のインタビューに応じるフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2025年4月6日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)

確かにレース展開は単調で、コース上でのアクションは限られたが、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)は鈴鹿の価値を強調し、目先の課題だけを以てグランプリを評価すべきではないと主張した。

「これが鈴鹿なんだ。天候が変わらない限り、ここでオーバーテイクが容易だったことなんてほとんど記憶にない。週末の前段階では、誰もが『鈴鹿は最高』『モナコは華やかだ』って言うのに、日曜になると『鈴鹿は退屈』『モナコは退屈』って言い出す。これがF1なんだ」

「グリップが足りないと文句を言い、ピットストップが多ければまた不満を口にする。ネガティブばかりに目を向けるのではなく、週末の体験そのものを楽しむべきだと僕は思う。今回もまた、素晴らしい鈴鹿だったよ」

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