
角田裕毅、F1日本GPよりレッドブルに移籍「これは純粋に競技的な決断」とホーナー―ローソンと交代
強豪レッドブル・レーシングは2025年3月27日、開幕2戦で苦戦が続いたリアム・ローソンに代わり、F1第3戦日本GPから角田裕毅をマックス・フェルスタッペンのチームメイトとして起用することを正式に発表した。ローソンはジュニアチームであるレーシング・ブルズに降格し、再び経験を積むことになる。
角田は「レッドブルからホームグランプリを走るのを楽しみにしています」とファンにメッセージを送った。
この決定は、3月25日にドバイで行われた会議の場で正式に下された。会議にはレッドブルの経営陣や筆頭株主チャルーム・ユーウィッタヤーらが出席したとされる。昇格の背景には、エンジン供給元であるホンダによる「数百万ドル」規模の金銭的支援の可能性も取り沙汰されたが、チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「純粋に競技的な決断だ」と強調した。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
レーシング・ブルズのアイザック・ハジャーと角田裕毅、2025年2月英国ロンドン
ホーナー、RB21の課題解決に角田の助力を期待
ホーナーは今回の判断について、「開幕2戦を通してリアムがRB21に苦しんでいる姿を見るのは辛かった」と述べたうえで、「この決断は、ドライバーズタイトルの防衛とコンストラクターズタイトルの奪還という目標を見据え、純粋に競技的な観点から下したものだ」と説明した。
さらに、「RB21には多くの課題がある。ユーキの経験はマシン開発において大きな助けとなるだろう。彼を迎え入れることを嬉しく思っているし、RB21での走行を楽しみにしている」と期待を寄せた。
一方でローソンについては、「我々には彼の成長とキャリアを守る責任がある」と述べ、「難しいシーズンスタートを受け、慣れ親しんだレーシング・ブルズで経験を積むことが、現時点では理にかなっていると判断した。リアムには引き続き期待している」と配慮を示した。
ready for the challenge ahead
挑戦への覚悟はできている pic.twitter.com/T7pyPSi26R
— 角田裕毅/Yuki Tsunoda (@yukitsunoda07) March 27, 2025
メキーズ代表「ユーキはこれからも我々の一員」
レーシング・ブルズのチーム代表ローラン・メキーズも、声明を通じて角田の昇格を祝福。「ユーキがレッドブル・レーシングへ昇格したことを誇りに思う。彼の成長は昨年から今季序盤にかけて目覚ましく、ファエンツァとミルトンキーンズの両拠点でその過程を見守れたのは特別な経験だった」と語った。
さらに「彼のエネルギーとポジティブさは、我々のファクトリーとガレージの隅々にまで影響を与えてくれた。彼はこれからもレーシング・ブルズの一員だ!今後の成功を心から願っている」と、角田に対する感謝の言葉を述べた。
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ガレージ内で話をするローラン・メキーズ(レーシング・ブルズ チーム代表)と角田裕毅、2024年10月18日(金) F1アメリカGPフリー走行&スプリント予選(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)
チームはローソンの再加入に向けても準備を進めている。メキーズは「彼は昨年、チームに上手く溶け込んでいた。チーム全体として成長を続け、共に挑戦していくのが楽しみだ」とし、「リアムが我々のクルマで輝けるよう、そして彼が持つ才能を最大限に発揮できるよう、最高の環境を用意してともに取り組んでいく」と述べた。
また、今年デビューを果たした新人アイザック・ハジャーについても、「すでに我々とともに素晴らしいスタートを切っている」として、ローソンの再加入により「若く強力なラインナップ」が揃うとして、今後の戦いへの自信を示した。
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ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)とともにドライバーズパレードに向かうリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2025年3月23日(日) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)
株式会社ホンダ・レーシングの渡辺康治代表取締役社長もコメントを発表し、「Hondaの育成プログラム出身で、F1ドライバーとして5年目を迎え大きく成長した角田裕毅選手が、強豪チームであるRed Bull RacingからF1に参戦することをうれしく思います。彼のこれからの活躍に大いに期待しています」と述べた。
レッドブル・レーシングは昨季こそコンストラクターズ選手権の連覇を逃したものの、2022年と2023年にはタイトルを連取。加えて、マックス・フェルスタッペンは2021年から4年連続でドライバーズタイトルを獲得しており、現在のF1界を支配する存在だ。
角田は、そんな絶対王者フェルスタッペンのチームメイトとして、日本人ドライバーとしては初となるトップチームへの本格移籍を果たすことになる。
ローソンの失速、角田の実績が昇格を後押し
ローソンは2024年シーズン後半、ダニエル・リカルドの後任としてRB(現レーシング・ブルズ)に加わり、2025年に向けてセルジオ・ペレスの後任としてレッドブルに昇格した。しかし、開幕2戦となったオーストラリアGPと中国GPでは期待された結果を残せなかった。
オーストラリアでは予選最下位に終わり、決勝ではクラッシュによりリタイア。続く中国GPでも再び予選最下位となり、決勝は15位フィニッシュ(他車の失格により最終12位)にとどまった。このパフォーマンスを受け、第3戦日本GPを前にして早くも交代の噂が広まることとなった。
一方で角田は、2021年にアルファタウリ(現レーシング・ブルズ)からF1デビューを果たして以来、ニック・デ・フリースやリカルド、ローソンらチームメイトたちを予選・決勝ともに上回る成績で凌駕してきた。2024年シーズンにおいては、チームが獲得した全46ポイントのうち30ポイントを記録し、「キャリア最高のシーズンのひとつだった」と振り返っている。
さらに、昨年末にアブダビで行われたポストシーズンテストでは、初めてレッドブルのマシンをドライブ。その際の「優れたフィードバック」がチーム関係者から高く評価されたものの、レッドブルは2025年シーズンに向け、将来的な可能性や精神的な強靭さを理由に、角田ではなくローソンをペレスの後任に指名した。
角田の“初陣”は母国日本GP、一方でリスクも
角田にとって今回の決定は、2021年のF1デビュー以来、念願だったレッドブル本隊への昇格となる。しかも、その晴れの舞台は母国日本での一戦。ホンダの支援に加え、地元ファンの後押しも受けながら、自身にとって最高の舞台で“初陣”を迎えることになる。2025年F1第3戦日本GPは、4月4日から6日にかけて三重県・鈴鹿サーキットで開催される。
一方で、角田にとっては自身のF1キャリアを懸けた正念場となる。
ローソンがわずか2戦でシートを失った最大の理由は、RB21のピーキーな特性にあると考えられ、角田が同様の課題に直面する可能性は十分にあるといえる。さらに、ローソンにはプレシーズンテストという準備期間があったのに対し、角田はぶっつけ本番で公式セッションに臨まなければならない。
ローソンには姉妹チームへの降格という選択肢が用意されたが、角田がレッドブルで同様に結果を残せなかった場合、解雇というシナリオも現実味を帯びてくる。
角田はすでに、レッドブルの育成チームであるレーシング・ブルズにおいて5年目のシーズンを迎えており、その支援の柱であったホンダは2026年よりアストンマーチンと提携する。さらに、ジュニアカテゴリーにはF1デビューを狙う有望な若手が控えている。