物議を醸したアロンソのF1ペナを巡り「大量の殺害予告」を受けたジョニー・ハーバート
元F1ドライバーで、第3戦オーストラリアGPのスチュワードの一人を務めたジョニー・ハーバートは、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)に対するペナルティ裁定を巡り、殺害を含む「大量」の脅迫を受けたと明かした。
メルボルンでのレース最終盤、6位争いを繰り広げていたジョージ・ラッセル(メルセデス)が、アロンソを追撃する最中のターン6で単独クラッシュを喫した。リフト、ブレーキング、シフトダウンを含むアロンソの「異常」な走りにより不意を突かれた事が原因と見なされた。
ハーバートを含む競技審判団は、F1競技規定第33条4項が禁止する「潜在的に危険」な走りに該当すると結論付け、ドライブスルー・ペナルティーに加えて3点のペナルティポイントをアロンソに科した。
しかしながらアロンソは「レーシングドライバーであれば誰もがやること」であるとして、ペナルティに対する不満と異議を表明。一件は物議を醸し、ドライバーの中でも見解が割れた。
英「Sky Sports」の元解説者でもあるハーバートのInstagramアカウントには、「ドライバーとしてだけでなく、スチュワードとしても無能」「頼むから二度とレースコミッショナーとして戻ってこないでくれ」「馬鹿げてる、世界チャンピオンなれなかったから解説者になったんだろ」と言った多くの中傷が寄せられた。
英紙「ミラー」によるとハーバートは、「ソーシャルメディアを通じて大量の殺害予告を受けた」と明かし、その多くはアロンソの母国スペインのユーザーだったと説明した上で、2度のF1ワールドチャンピオンであるアロンソとの以前の軋轢について触れた。
「アロンソがマクラーレンにいた数年前、彼は無線を通してほぼ毎レースに渡って声高にエンジン(ホンダ)を酷評していた。GP2エンジンのようだと言ってね」とハーバートは語る。
「その時、私はSkyで働いていて、気に入らないならアロンソはチームを去るべきだと言ったんだ。引退しろとは言わなかった」
「彼はその後、バーレーンでの生放送の際に私のところにやって来て、『僕はワールドチャンピオンだから引退してコメンテーターになるつもりはない。でも君はワールドチャンピオンじゃない(注:君にはコメンテーターがお似合いだ)』と嫌味を言った」
「オーストラリアでの一件を経てファンは、僕に対する口撃としてこれを使ったんだ」
「寄せられたメッセージの中には短剣の絵文字を含むものがあった。彼らは『お前の住んでいる場所は分かってる。迎えに行くから』と言うんだ。そのほとんどはスペイン語だった」
「公表された声明の中で、どのようにして決定が下されたのかは明白に記されているわけだから、彼らは理解すべきだった」
「中には、ワールドチャンピオンでないのだからそれについて語る資格がないというものあった」
こうした誹謗中傷があったにも関わらず、ハーバートはスチュワードとしての仕事を辞めるつもりはないとした上で、SNSがもたらしている問題点を指摘し、ソーシャルメディアを運営する企業は、こうした行為を取り締まるために「行動を起こすべきだ」と強く訴えた。
「脅迫は2週間以上が経った今も続いている。これがソーシャルメディアの一面だ。誰もが自分の意見を持っているが、それを裏付ける事実のないものがあまりに多い」とハーバートは語る。
「多くのスポーツ選手や関係者が死の脅迫を受けている。そのために多くの人が苦しんでいるんだ。こうした汚い言葉や虐待は、一般人にさえ向けられている」
「プラットフォーム側はそれを管理すべきだが、彼らはそうせずに、それを許している。理解できない。彼らは行動を起こすべきだ。彼らはそれを止める方法が見つからないと言うが、私はそうは思わない」
「私は笑い話にできるが、多くの人々が傷ついている。行動を起こすべきだし、何か対策を講じるべきだが、何かが行われているとは聞いたことがない」
「私の住所を知っているというコメントにしろ、短剣で私を傷つけるとの脅迫にしろ、そういうことをする人たちのメンタリティが理解できない」
「彼らは本当のF1ファンではないし、自分のファンがそんなことをしていると知ったら、フェルナンドはきっと、恥ずかしく思うに違いない」