
アストンマーチンF1、ホンダ共闘時代を前に「ドライバー・アカデミー」を新設―第一弾としてマリ・ボヤと契約
アストンマーチンF1チームは2025年6月24日、若手ドライバーの育成を目的とした「ドライバー・アカデミー」の設立と、その第一号ドライバーとしてFIA-F3選手権に参戦中のホセ・マリア・ナバロン・ボヤ(José María Navalón Boya)との契約を発表した。
”マリ・ボヤ”はスペイン・レス出身の21歳。国内カート選手権で3度のタイトルを獲得し、2020年にはフォーミュラ・ルノー・ユーロカップでシリーズ2位に輝いた実績を持つ。2023年からはFIA-F3に参戦し、今季のモンテカルロ市街地レースで表彰台を獲得するなど、着実に頭角を現している。
ボヤについて、チーム代表のアンディ・カウエルは「彼は速さ、実績、そして意欲を兼ね備えた有望株であり、総合的にバランスの取れたアスリートでもある。それこそが、我々がモータースポーツにおいて最も重視する資質だ」と高く評価した。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
アストンマーチンの若手育成プログラム「ドライバー・アカデミー」の第一号ドライバーとして契約が発表されたホセ・マリア・ナバロン・ボニャ、2025年6月
アカデミー構想と支援体制
今回新設されたドライバー・アカデミーは、F1の舞台で活躍できる才能を早期に発掘し、長期的な視点で育成していくことを目的としたプログラムだ。カートからフォーミュラまでの各ステージに応じた段階的な育成環境を整え、レースクラフトやシミュレータートレーニング、フィジカルトレーニング、メディア対応、さらにはF1現場での実地経験といった多角的なサポートを提供する。
また、アカデミー発足と合わせて、スペインのプロカートチームであり、FAアロンソ・カート・シャシーの公式チームでもあるDPKレーシングと提携。フェルナンド・アロンソとDPKが持つネットワークと育成ノウハウを活かし、キャリア初期段階からの発掘と支援に取り組む体制を整えた。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
FAアロンソ・カートと並ぶフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)
カウエルは「我々はこのドライバー・アカデミーを通じて、未来のトップドライバーを発掘し、育てる機会を得た。競争が激しく、厳しい世界で成長していく若者たちの支えになれることは、チーム全体にとっても大きな喜びであり、共有された情熱でもある」と述べた。
背景と狙い
レッドブルを筆頭に、フェラーリ、メルセデス、マクラーレンといった競合チームが育成アカデミーを通じて若手の囲い込みを進める中、アストンの今回の動きは、F1における持続可能な競争力の確保に向けた布石といえる。
同チームは2026年からホンダのF1パワーユニットの独占供給を受けるワークス体制に移行する。これに伴い、これまでレッドブルと連携して展開してきたホンダの日本人若手育成支援も、アストンとの新たな協働体制へと移行していく可能性が考えられる。
なお、アストンによるアカデミー設立を受け、現行グリッド上で若手育成プログラムを有していないチームはハースのみとなった。