師父とでも言うべきヘルムート・マルコ同様、マックス・フェルスタッペンは率直な物言いを信条としてるが、F1ラスベガスGPに対する批判は特に辛辣で、不憫な観客への対応から設備不備、お偉方の発言まで、その対象は留まる所を知らない。

エモーション不在のラスベガス

フェルスタッペンがラスベガスGPを嫌悪しているのは、F1とラスベガスGP社（LVGP）がイベントの本質であるべき競技ではなく、ショーやエンターテイメントに遥かに多くの重点を置いていると感じているからだ。

3番手タイムを刻んだ予選を経てフェルスタッペンは、ショーの重要性を重ねて認めつつも、自身にとっては「エモーション（興奮・感情）」の方が重要だ主張した。

「子供の頃、僕はこのスポーツのエモーションに恋をした。スポーツを取り巻くショーじゃなくてね。本物のレーサーとして僕は、そんな事はどうでもいい事だと思ってる」とフェルスタッペンは語る。

「そもそもレーシングカー、特にフォーミュラ1は市街地コースでは本当の魅力が活かせないと僕は思ってる。エキサイティングじゃない。常設のサーキットの方が遥かにいい。スパやモンツァや何かに行くと、そこにはたくさんのエモーション、情熱がある」

「そして、そこにいるファンは信じられないほど素晴らしい。そんな場所でクルマに乗るとワクワクする。そういう場所を走るのが僕は大好きなんだ」

「もちろんファンにとって、競技以外の何かが必要だって事は理解している。でも、もっと大切なのは、僕らがスポーツとして何をしているのかを彼らに理解してもらうことだと思う」

「彼ら（ラスベガスGPの観客）のほとんどはパーティーやお酒を楽しみ、DJのパフォーマンスを見るために来るだけだ。でもそれは世界中どこでもできることであって、イビサ（スペインのリゾート地）に行って酔っ払って楽しい時間を過ごすこともできる」

「でも、そういう目的で見に来てもらったところで、一体彼らは何のファンになるんだろう？ お気に入りのアーティストを見たり、友達と何杯か飲んで、クレイジーな夜を過ごしたいだけなんじゃないだろうか。僕らが何をしているのか実際には理解していないんじゃないかと思う」

「実際の競技面にもっと焦点を当てて、チームが何をしているのか、何を達成しようとしているのかをF1がもっと説明すべきだと思う。その方が、あちこちでランダムなショーを開催するより遥かに重要だと思う」

「僕はラスベガスが大好きだけど、そこでF1マシンをドライブする事に関してはそうじゃない。僕だって外に出かけて何杯か飲んで、賭け事をしたり、少しクレイジーになったり、美味しい食事を楽しむのは好きだけど、さっき言ったようにエモーションと情熱という点で、幾つかの伝統的なコースと比べてみてほしい」

フェルスタッペンはラスベガス市街地コースを「退屈」と称し、歴史と伝統に溢れるモンテカルロ市街地コースと比較した場合、ラスベガスはサッカーで言うところの「国内リーグ」に過ぎないが、モナコはクラブサッカーにおける世界最高峰「チャンピオンズリーグ」に相当するとも語った。

混乱巡り転んでなお、金儲け

「99%がショーでスポーツイベントとしては1%」との批判をフェルスタッペンが口にしたその翌日、イベント初日を迎えたラスベガス市街地コースは混乱に見舞われた。排水溝の設備不良によりFP1は事実上の中止となり、FP2は2時間半の延期を余儀なくされた。

警備スタッフのシフト時間の終了と共に、高額なチケット代を支払って6時間近くを寒さの中で待ち続けていた観客は会場から締め出された。

事実上の同一組織であるF1とLVGPは、チケット代の払い戻しはおろか謝罪の一言も発せず、200ドル分の商品券を配り、自分たちの対応の正当性を強調するばかりだった。

これもラスベガスGPに対するフェルスタッペンの嫌悪感を増幅させた。

蘭「RacingNews365」によるとフェルスタッペンは「それでもまだお金を儲けるんだ！最高だね。もし僕がファンだったら、この場所を全部、破壊するだろうね。そんな対応あり得ない」と語った。

「いいかい、あのマンホールの蓋と、それがどのように組み合わされているのかを見れば、F1マシンがその上を走った時に自然と浮いてくる事が分かるはずだ。IQが高くなくても分かることだ」

フェルスタッペンが批判の矛先を向けているのは主催者だけではない。

一連の問題を受けてメルセデスのトト・ウォルフ代表は、マンホールの蓋が外れる事故はストリートサーキットの常であり、そのリスクを受け入れるべきだとの立場を示し、批判的な質問者を罵倒、まくし立ててF1を徹底的に擁護した。

フェルスタッペンは、どんなに努力しても予期せぬアクシデントが起こる可能性をゼロにできないからと言って、何よりも重要な安全対策を怠る事はあってはならないと考えており、過ちを犯したのであればそこから学び、批判を受け入れる姿勢を持つことが必要だと指摘する。

「起きるべき事ではないけど、最近は何度か同じ事が起きている。でも注意が必要だって分かっているんだから気をつけないと。特に新しいイベントではね。当然の事として対応すべき話なんだ」とフェルスタッペンは語る。

「それは僕らに『全力を尽くしても壁にぶつかることもある。まあ、そんな事もあるよね』って言うのと同じだ。当然のことだけど、そんな事はあってはならない」

「それから学び、批判を受け止めなきゃ駄目だよ」

フェルスタッペンはまた、マンホールの蓋の犠牲になったのがカルロス・サインツ（フェラーリ）ではなくメルセデスのドライバーであったならば、ウォルフは「もっと違う言い方をしたと思う」としつつも、「僕は彼には期待していない」と付け加えた。

フェルスタッペンの「1%」発言を受け、ラスベガス観光局のスティーブ・ヒルCEOは「マックスはここでレースをする事に少しピリピリしているようだ。神経質になっているのかどうかは分からないが、これは今週末に少しばかり緊張をもたらすだろう」と小言を口にした。

これについて問われたフェルスタッペンは「どう思うかって？ こういう人たちは彼ら独自の世界に生きているから、僕には何の役にも立たない」と答えた。

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