バクー市街地コースのパドックを歩くフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2023年4月27日F1アゼルバイジャンGP
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アロンソ、3度目のF1制覇は「最優先事項に非ず」トリプルクラウンに代わる新たな目標

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フェルナンド・アロンソはかつて、世界三大レース全制覇の野望を胸に秘めていたが、今はこれに代えて3度目のF1タイトル獲得と並び、ダカール・ラリーでの優勝をターゲットに据えているようだ。

F1モナコGP、ル・マン24時間レース、そしてインディ500の全てに勝ったドライバーは歴史上、グラハム・ヒルただ1人だ。トリプルクラウンの内の2冠を達成したアロンソは過去に3度に渡ってインディ500に挑戦しているが、無念の予選落ちを含めて未だ勝ち星がなく、4度目の挑戦については消極的だ。

グリッドに並ぶマクラーレンSPのフェルナンド・アロンソとマシン、2020年第104回インディ500にてCourtesy Of Indycar

グリッドに並ぶマクラーレンSPのフェルナンド・アロンソとマシン、2020年第104回インディ500にて

アロンソはポッドキャスト「High Performance」の中で、「もう一度、F1でチャンピオンを獲りたいと思っているけど、それは最優先事項じゃない」と述べ、世界一過酷なモータースポーツと称されるダカール制覇への想いを語った。

「99%の確率で、もう一度ダカールに挑戦する事になると思う。3度目の世界タイトルの優先順位が低いというわけじゃないけど、いつかダカールで優勝することも僕にとっては最優先事項なんだ」

「幸運に恵まれ優勝を賭けて戦える日が来るまで、ひょっとすると8年、あるいは10年に渡って挑戦しなきゃならないかもしれないけど、F1と耐久レース、そしてダカールで勝てれば、それはドライバーとして、そして人間として、僕の中で特別な何かになるんじゃないかと思っている。だから、ダカールへの挑戦を考えているんだ」

アロンソはFIA世界耐久選手権(WEC)での関係を背景に、マルク・コマをコドライバーとして2020年にTOYOTA GAZOO Racingからダカールに初挑戦。足回りの破損や大クラッシュに見舞われながらも、ステージ最高2位、総合13位で完走を果たした。

ダカールラリー2020を完走し、拳を突き上げるTOYOTA GAZOO Racingのフェルナンド・アロンソCourtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION

ダカールラリー2020を完走し、拳を突き上げるTOYOTA GAZOO Racingのフェルナンド・アロンソ

レーシングドライバーとしてのキャリアが続いていくとしても、本人が認める通り、F1での現役生活は最終盤に差し掛かっている。42歳のスペイン人ドライバーは、そんな20年に及ぶF1での旅路の中で後悔している事があると明かす。

「もし過去に戻って物事を変える事ができるなら、真っ先に思い浮かぶのはフェラーリでタイトルを獲得することだろうね。2010年と2012年はタイトルまであと数周にまで迫った」とアロンソは語る。

「それが叶っていれば、少しばかり歴史を変える事ができただろうし、あれは間違いなく悔やまれることだった」

だがその一方で「自分の時間、キャリアを大いに楽しまなかった事については間違いなく後悔している」と述べ、タイトルを逃した事以上にパドックでの時間を存分に楽しまなかった事を反省していると明かした。

「キャリアの終盤にいることは分かっている。ステアリングを握る事のない新しい生活が数年以内に始まる事になるだろう」

「自分のキャリアを振り返る時、たくさんの素晴らしいこと、友情、信じられないような経験に想いを馳せるだろうけど、同時に、そういった事をもっと楽しんでおくべきだったという思いに駆られるような気がする」

「もう一度、同じ人生を歩む機会があるとすれば、チームや自身の選択、あるいはフェラーリでのタイトルの事や何かについては何も変えないかもしれないけど、あらゆる瞬間をもう少し大切にして、もっと多くの思い出を残せるようにするだろうね」

「悲しいことに、2005年と2006年にブラジルでタイトルを獲った日の午後と夜のことは殆ど覚えていないんだ。だからそういうところを変えたいと思う」