レッドブルF1、制約負うも圧勝発進…罰則が裏目に?空力テスト減への対処とアストンマーチンの伸び代
マシン開発が制限されているにも関わらず、レッドブルは2023年のF1シーズンを圧勝でスタートさせた。マックス・フェルスタッペンは3周を除いて開幕バーレーンGPをリードし続け、セルジオ・ペレスは開始直後に後退しながらも2位表彰台に上がった。
レッドブルはライバルを完全に粉砕した。57周を通してアストンマーチンに38.6秒差、フェラーリに48秒差、メルセデスに51秒差をつけた。もはや別カテゴリーの速さだ。
これはフェルスタッペンにとってバーレーン初、開幕戦での初優勝となった。またレッドブルにとっては創設以来初の開幕戦1-2であり、予選・決勝共に1-2を達成したのは2013年のアブダビGP以来、10年ぶりのことだった。
テスト制限、開発方針を修正…現行追求
全23戦の初戦はレッドブルにとって初物づくしの支配的レースとなったわけだが、チームはそもそも両足に枷が打たれた状態だった。
2021年の予算超過に関して空力開発テスト10%減のペナルティを受けた事で、昨季のコンストラクターズタイトル獲得に伴う減少分と合わせて風洞・CFDの使用可能時間はランキング7位のチームの63%にまで制限されている。
ペナルティは無意味だったのか? レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコによると、少なくとも現時点に限って言えば裏目に出ている可能性もあるのかもしれない。
開発が制限された事でレッドブルは、どう転ぶか分からない未知のアイデアを評価・追求する道を捨て、2022年のチャンピオンマシン「RB18」の改良に専念する事を余儀なくされたようだ。
テスト制限への対処についてマルコは独「SPEEDWEEK」とのインタビューの中で「ペナルティが発表されたのは比較的早い時期だった。固まったのはシンガポールの時だった」と説明した。
「そのため我々は比較的早い段階で、旧車(RB18)を進化させることに集中した。上手く機能していなかった部分について、どうすれば最適化できるかを検討したんだ」
「風洞に持ち込む場合はそれがすぐに成果を上げるものでなければならない。だが我々はそれをやってのけた」
「チームの中心メンバーは15年来の付き合いで、何を、どのようにやれば良いのかが分かっていて、互いに連携している」
「もちろんエイドリアン・ニューウェイの存在もあるが、その下には高い技術と知性を持った人材が揃っている」
シンガポールGPの開催は昨年の9月末であり、2023年型「RB19」の開発サイクルは既に最終段階にかなり近づいていたものと思われる。開発の方向性に関して、ちゃぶ台をひっくり返したとは考えにくい。
もともとRB18のブラッシュアップを主軸とした開発ラインがあり、ペナルティの見通しが固まったため、もう一方ではなくそちらに注力したということなのだろう。
あるいはひょっとすると、それよりも前の段階からペナルティの可能性を考慮して開発プロジェクトを軌道修正していたのかもしれない。
まだまだ続く制約、アストンの伸び代に希望を抱くアロンソ
何れにせよ、確かに初戦はレッドブルの圧勝に終わったが、開発制限はまだ半年以上に渡ってレッドブルを悩ませることになる。
チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「このハンディキャップは12ヶ月間に渡って続くものだから、みんな知っての通り、まだ8、9ヶ月残っている」と指摘する。
「それは現行マシンの開発において、非常に選択的で、かつ非常に効率的でなければならないことを意味する。もちろん来年のクルマ(RB20)に関してもそうだ」
9ヶ月間に及ぶ2023年シーズンが最後までレッドブルの独壇場であり続けるかどうかは分からない。
基本的に、大幅な変更を加えてパッケージを一新したようなチームの伸びしろは大きい。クルマに対する理解が十分でなく、パフォーマンスを引き出し切れていない可能性があるためだ。
シーズンを通した性能向上という点で最も期待されるチームの一つはアストンマーチンだろう。昨季コンストラクターズ選手権7位のアストンは現時点でレッドブルの1.6倍の時間を風洞・CFDに割くことができる。
バーレーンGPで3位表彰台に上がったフェルナンド・アロンソは「何より重要なのは、アストンマーチンのクルマは新車だってことだ」と強調する。
「これは最終スペックじゃないんだ。僕らが冬の間に変更したコンセプトの出発点に過ぎない」
「トップチームの中には、昨年の哲学をそのまま引き継いでいるところもあると思う。レッドブルやフェラーリも同じような形状を維持しているよね。彼らは微調整を重ね、ベースラインを完璧なものにした」
「僕らの場合はクルマの95パーセントを変えなければならなかった。だからクルマから学ぶべきことはまだまだあるし、引き出せるものはもっとあるはずなんだ」