アロンソのアストンマーチン電撃移籍の全貌…ブリアトーレ関与の真偽、知らなかったのはサウナウアーのみ
フラビオ・ブリアトーレの関与、オトマー・サフナウアー代表の「プレスリリースで初めて知った」発言等、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)がアストンマーチン電撃移籍の全貌を明かした。
第13戦ハンガリーGPの閉幕翌日、2度のF1王者が慣れ親しんだ英国エンストンのチームを去り、コンストラクターで低迷するアストンマーティンへと移籍する事が発表された。サマーブレイク突入後のアナウンスであった事から、経緯や理由などについては不明瞭な部分が多かった。
後半戦の幕開けとなるベルギーGPのためにスパ・フランコルシャン入りしたアロンソは移籍発表後初めてメディアの前に立ち、契約内容や交渉プロセス、決断の理由など、さまざまな質問に対して口を開いた。
サウナウアーが知らなかった理由
チーム代表を務めるサフナウアーは、アロンソ退団の事実を知ったのはアストンマーティンのプレスリリースによってだと説明した。そのためアロンソの移籍はアルピーヌ首脳陣にとって寝耳に水の出来事だったかに思われたが、そうではなかったようだ。
サウナウアーの発言についてアロンソは「本当だ。オトマーはたぶん何も知らなかったんだ」と答えた。
「でもローラン・ロッシ(アルピーヌCEO)やルカ・デ・メオ(ルノー・グループCEO)、そして僕のメカニックやエンジニアのみんなには発表前に伝えてあった」
「交渉に関わった全ての関係者は、アストンマーチンへの移籍発表の前から既に知っていたんだ」
「オトマーは交渉に関与していなかったし、恐らくローランやルカは発表前に彼に電話をかけなかったんだろうね。彼は驚いていたよ」
ブリアトーレ関与の真偽
夏休み中のビッグニュースはアロンソの電撃移籍だけではなかった。アルピーヌはアロンソの後任としてオスカー・ピアストリの名を発表したが、21歳のオーストラリア人ドライバーはこれを蹴った。
ピアストリのマネージャーを務めるのはアロンソの親友であるマーク・ウェバーであり、またアロンソとウェバーが共にブリアトーレを長らくマネージャーとしていた事から、今年F1パドックに舞い戻ってきたF1界の大物が裏で画を描いたのではとの噂が飛び交った。
アルピーヌ及びアストンマーチンとの交渉にブリアトーレやウェバーは関与していたのか、ウェバーは裏で情報を得ていたのかと問われたアロンソは「いや、そんな事は全くない」と言い切った。
「その陰謀説については読んだけど、正直なところかなり悲しかったし、腹立たしかった。だってこの決断を下したのは僕自身なんだからね」
「数カ月間に渡って僕は契約延長についてチームと話し合ってきたけど何も起こらず、そんな最中にセバスチャン(ベッテル)が引退を発表し、アストンが電話をかけてきた」
「そもそもセバスチャンが引退せずに続けていれば、僕がアストンに移るような事態には至らなかった」
「オスカーの件に関しては全く僕の関与するところじゃない」
「フラビオは何度か週末に足を運んでいるけど、知っての通り彼はステファノ(F1のドメニカリCEO)やF1、パドッククラブなど、僕とは関係のない契約に基づいて動いているだけさ」
アロンソはまた、ベッテルの引退劇が起こらなければアルピーヌに「留まるつもりだった」と認めながらも、最終的には若く有望なピアストリのためのシートが空いたわけで、これは誰にとっても「ウィンウィン」な状況だと主張した。
アルピーヌ離脱の理由は単年オファー?
アロンソは何故、アルピーヌ残留の選択肢を捨て去ったのか?
アルピーヌはアロンソに対して1年のオプション付きの単年契約をオファーしたが、アロンソ側は少なくとも2年の延長を望んでいたものと見られており、これが一因になったとの見方が大勢を占めている。
だがアロンソは「早い段階から2年以上の長期契約が提示されていたら、アストンへの移籍話が出る前にサインしていたのでは?」との質問に対して「それは分かりようもない話だ」と答えた。
「契約期間だけじゃなく、信頼感や自分がどのくらい必要とされているか、といった部分も重要なんだ」
「アストンに移籍したのは正しい選択だったと思ってる。なぜなら彼らは本当に僕を必要としてくれているようだし、過去2年に渡る僕のパフォーマンスを評価してくれているように思えたからね」
「アストンのプロジェクトは本当に魅力的だ。ここ数年で多額の投資が行われ、エンジニアやデザイナー等、たくさんの優秀な人たちが新しくチームに加わっている」
「それに加えてシルバーストンには新しい施設が建設されているし、将来性のある素晴らしいプロジェクトだと感じたんだ」
肝心なのは勝てるかどうか
アロンソは、現在コンストラクター4位につけるアルピーヌではなく、獲得ポイントの点で5分の1に過ぎないコンストラクター9位と低迷するアストンマーチンを選んだ。
既に2度に渡ってタイトルを獲得しているアロンソにとって、優勝やチャンピオンシップ争いに絡めないのであれば、4位でフィニッシュしようが11位でフィニッシュしようが違いはない。
「F1ではどんな決断にもリスクが伴うものだ。未来を当てる水晶玉を持っている奴なんかいないし、F1だけじゃなくどんなスポーツであっても、重要なのは勝つか勝てないかという点にある」とアロンソは語った。
「4位か9位か13位か、というのはどうでも良い話で、1位じゃなきゃ勝ち取る事はできない。すべてのF1チームとドライバーは、トップに立つためにここにいるのだと思う」
「F1における投資や最高の人材といった要素は概して成功と同義であって、さっき言ったように、このプロジェクトにはそれが揃っているんだ」
「実現のための時間をできる限り短縮できるかどうか、来年のアストンマーチンを速くできるかどうか、見てみる事にしよう」