低迷のアストンマーチンを選んだアロンソ、将来的なメルセデスF1移籍を視野に?
フェルナンド・アロンソは選手権4位につけるワークス・アルピーヌでの残留を選ばず、ランキング9位と低迷するアストンマーチンへの移籍を決めた。やや不可解な決断だが、これは将来的なメルセデス移籍に望みを繋ぐための布石なのかもしれない。
アストンマーチンの前身、フォース・インディア/レーシングポイントはV6ハイブリッド時代に悪くともコンストラクター7位を維持。2016年、2017年、2020年には3強に次ぐ4位を獲得した中堅の雄として知られていた。
だが、ローレンス・ストロール主導のもと買収・リブランドされて以降は下降気味で、今季は13戦を終えて9位と低迷している。
確かにシルバーストンに建設中の新たなファクトリーや、トップチーム水準の組織作りに向けた大規模リクルーティングで明らかなように、アストンマーチンは将来の成功に向けて莫大な投資を続けており、飛躍のための条件は整っているように見える。
ただ、トップチームにそぐわない縁故でのドライバー起用や厳しいビジネス環境など、懸念材料もあり、数年以内にレッドブルやフェラーリ、メルセデスを相手にタイトルを争うアストンマーチンの姿をイメージするのは決して簡単ではない。
自動車会社としてアストンマーティン・ラゴンダは販売台数と収益の低下に苦しんでおり、2022年上半期の損失は前年同期の3倍にまで急増した。
先月、新株発行を通してサウジアラビアの公共投資ファンドから6億5300万ポンド(約1063億円)を調達するとの資金計画を発表したもののマーケットは冷ややかで、株価は史上最高値から90%以上も下落したままだ。
新株発行後の出資比率はサウジが16.7%、対してストロール率いる投資家グループ「Yew Tree Consortium」は18.3%、メルセデスは10%弱と共に低下した。市場関係者は買収を含めたより抜本的な対策が必要だと警鐘を鳴らしており、F1チームを先導するストロールの内部的立場は決して安泰なわけではない。
アロンソがアルピーヌではなくアストンマーチンを選んだ理由の一つは契約年数だとみられている。オスカー・ピアストリの2024年デビューを描いたアルピーヌは、複数年を求めるアロンソに対して1年をオファーした。対してアストンマーチンは複数年契約で2度のF1ワールドチャンピオンを迎え入れた。
契約年数こそアロンソの希望に沿った形となったが、それでも現時点でコンストラクター4位につけるアルピーヌを見限った事はやや不可解だ。
この点に関してSky SportsのF1ピットレポーター、テッド・クラヴィッツの見解は興味深い。クラビッツは2023年末で契約が切れるルイス・ハミルトンに触れ、メルセデスがアロンソを潜在的な後任の一人として見なしている可能性は捨て切れないと指摘した。
「フェルナンドが再びメルセデス・エンジン・ファミリーに加わるというのも興味深い視点だと思う。彼は15年前にマクラーレンを去って以来、メルセデスパワーをドライブしていない」
「つまりこれには、トト・ウォルフ(メルセデスF1のCEO兼チーム代表)のサインが必要だったはずで、それが得られたという事を意味するわけだ」
「フェルナンドがどういう人物なのかを知るために、メルセデスがファミリーに戻す事を望んでいたとする考えは馬鹿げた事だろうか?」
「もし、ルイスが何らかの理由でチームを去る事になり、ジョージと並ぶワールドチャンピオンを必要とした場合、41歳のフェルナンドがどのような人物なのかについて少しでも知っていれば、メルセデスにとってそれ(ハミルトンの引退)はこの世の終わりとは言えないのではないだろうか?」
「そんなことはあり得ないと思うかもしれないが、この発表で明らかなようにF1であり得ない事など何もない」
クラビッツの指摘はメルセデス側のロジックだが、これはそのままフラビオ・ブリアトーレがマネジメントを担当するアロンソ側にも当てはまる。
クラビッツはアロンソの決断について、アストンマーチンの「今後3年間での著しい向上」に懸けたものだとして理解を示す一方、英国シルバーストンのチームが選手権争いに加わるためには「良くても3年」はかかるとして、「少し奇妙だ」とも語った。