ピアストリ危うし? 2023年ウィリアムズF1の意外な候補者、アロンソのアルピーヌLMDh転向のシナリオ
2023年のウィリアムズのF1シートを巡る候補として、FIA-F2選手権でタイトル争いを繰り広げるローガン・サージェントが新たに加わった。ヨースト・カピートCEOはラインナップ決定に際して「大きな頭痛のタネ」になり得ると認めた。
サージェントの活躍は「大きな頭痛のタネ」
アメリカ・フロリダ州出身の21歳は2019年にFIA-F3選手権に参戦。2年目にランキング3位に輝くと、昨年ウィリアムズのドライバー・アカデミー・プログラムに加わった。
F2での初のフルシーズンを迎えた今年はシルバーストンとレッドブル・リンクのフィーチャーレースで2連勝を挙げてランキング2位に浮上。また、ポール・リカールで行われた22日の予選では、岩佐歩夢を交わしてポールポジションを獲得した。
アレックス・アルボンの来季続投は手堅いものの、逆にニコラス・ラティフィのシート喪失も確実な見通しで、ウィリアムズの2023年のF1シートは一つ、空きがある状況だ。
ラティフィの後任最有力候補はアルピーヌのリザーブドライバーにして、F3とF2で連続王者に輝いた至宝、オスカー・ピアストリだが、ここに来て突如、サージェントがストーブリーグの主役の一人に浮上した。
残念ながらフランスでの2つのレースでは僅か1ポイントの加算に留まったものの、それでもランキングとしては1つ落としただけの3位と、上位につけるサージェントが仮に今年のタイトルを穫れば、ピアストリがそうであるように来年のF2に留まる事はできず、ウィリアムズは何らかの代替プランを用意する必要に迫れられる。
ウィリアムズのヨースト・カピートはその点について問われると「私はもっと酷い状況を経験した事があるが、それはさておき、大きな頭痛のタネになるだろうね」と認めた。
「我々は感銘を受けているが、ご存知のように彼にとってはF2での初のシーズンだし、彼にプレッシャーを掛けるような事はしていない」
「つまり彼はまだ成長途上なわけだが、クルマに対する理解やタイヤマネジメント、そしてその成績に関しは目を見張る物がある」
ヨースト・カピートは「彼は将来、F1マシンに乗る事になるだろう。自信を持ってそう言える」と付け加え、スペインGPのFP1でニック・デ・フリースに費やした今年の若手起用枠の残り1つをサージェントに与えるのは「当然」と主張した。
ピアストリ起用のデメリット
実力と将来性で言えばピアストリがサージェントを上回るのは確かだが、ピアストリの起用にはデメリットもある。
アルピーヌはピアストリをフェルナンド・アロンソの後継者と位置づけ多大な投資を行ってきた。例えウィリアムズがピアストリと契約しても、それは1年か2年程度の期間限定であり、教育と成長に力を注いでもその成果は最終的にアルピーヌが享受する事になる。
アルピーヌのローラン・ロッシCEOは、ピアストリのレンタルについては前向きだとする一方、その条件として「取り戻せる」事を挙げた。
「取り戻せるのであれば、他のチームに貸し出しても良いと思っている」
「我々はオスカーに多額の投資をしてきたし、彼を信じているし、だからこそ彼は我々のリザーブドライバーを務めているんだ」
「我々はその有望な才能をぜひとも自分達のチームで開花させたいと思ってる」
「だから、他の多くのドライバーと同じように、レンタルという形で他のチームから始めて技を磨き、その後我々の元に戻ってくるというシナリオは悪くないだろう」
ヨースト・カピートは「それが自分達にとってベスト」であるならば、他チームからのレンタルを選択する考えを明らかにした。たしかにサージェントも魅力的な選択肢の1つとなり得るだろうが、2023年のF1デビューには課題もある。
「ローガンの場合はスーパーライセンス・ポイントが必要だ。そのためには今年のF2でのチャンピオンシップでトップ5に入らなければならない」とヨースト・カピートは指摘した。
アロンソのアルピーヌLMDh転向のシナリオ
40歳のアロンソは今季限りでアルピーヌとの契約が失効するが、契約更新は既定路線とみられている。アルピーヌ側は1年、アロンソ側は2年の延長を希望しているとされる。
実際ローラン・ロッシは詳細な言及こそ避けたものの、アロンソとピアストリの両方が「来年のグリッドに着くだろう」とした上で「2人のドライバーが満足するようなシナリオ」を描いていると明かした。
ピアストリが不毛なF1浪人生活を強いられている事に象徴されるように、アルピーヌはジュニアドライバー達の受け皿が少ない。F2卒業後のシートは2つのF1ワークスシートと、リザーブの計3つに限られている。
そこでアルピーヌは、これにLMDhプログラムを追加すべくプロジェクトを進めているわけだが、ローラン・ロッシは将来的にアロンソをスポーツカープログラムに転向させたいと考えている。
アロンソとの現在の交渉内容について、その一部にLMDhプログラムへの転向が含まれているのかと問われると「そうだ。それは常に議論されている。今年の契約更新に関する昨年の議論の中でさえ話し合ってきた事だ」と認めた。
「我々にとって彼はチャンピオンなのだ。彼はいつだってLMDhのシートを手にできる立場にある」
現在、FIA世界耐久選手権(WEC)のノンハイブリッドLMP1クラスに参戦するアルピーヌは、2024年以降、新型LMDh車両での参戦を予定している。
2度のF1ワールドチャンピオンはトヨタと契約し、2018年に初めてスポーツカーに転向。2018年と2019年にル・マン24時間レースを制し、シリーズチャンピオンにも輝いた。
2021年のアルピーヌからのF1復帰に伴い、チームの意向の下、アロンソはインディ500を含む他のシリーズでの活動を全て取りやめているが、将来的なル・マン復帰の可能性を除外していない。
ただそれが来年となる可能性は低い。アロンソは現役引退の可能性を完全に除外しており「あと数年はここ(F1)でレースをするつもりだ」としている。