アルピーヌのリザーブを務めるオスカー・ピアストリとフェルナンド・アロンソ
Courtesy Of Alpine Racing

悩めるアルピーヌF1、続ける気満々のアロンソ、控えに甘んじ続ける気がないピアストリ

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アルピーヌのオトマー・サフナウアー代表は就任早々、難しい決断を迫られる事になる。今季末で契約が失効するフェルナンド・アロンソは現役続行に強い意欲を示しているが、若手筆頭ホープのオスカー・ピアストリは、来年もリザーブに甘んじ続けるつもりはないと主張する。

2度のF1ワールドチャンピオンは第3戦オーストラリアGPに先立って「まだ競争力があって速さもあると感じているし、F1での時間を楽しんでいる」として、少なくとも今後数年間はF1に留まる意向を明らかにした。

ヘルメットを被るアルピーヌのフェルナンド・アロンソ、2022年F1サウジアラビアGPCourtesy Of Alpine Racing

ヘルメットを被るアルピーヌのフェルナンド・アロンソ、2022年F1サウジアラビアGP

「あと2、3年はレースをすると思う。アルピーヌとでも良いし、他のチームとでも良い」とアロンソ。

「どうなるかはいずれ分かる事だけど、おそらく夏には話し合いを始める事になると思う」

対するピアストリは「もう1年、リザーブドライバーを続けたくはない。実際、最終的には受け入れたけど、1年でさえ嫌だったんだ。僕としてはできるだけ早く再びレースに出たいと思ってるし、来年それが実現する事を願ってる」と述べ、2023年も控えに甘んじ続けるつもりはないとチームを牽制した。

エステバン・オコンは昨年の母国フランスGPを前に、アルピーヌとの3年間の長期契約にサインしており、少なくとも2024年末までエンストンのチームに留まる事が決まっている。

つまりアルピーヌは”原則的”には、2023年に向けて経験豊富なF1王者か、若手の中で最も高い評価を受ける21歳のオーストラリア人ドライバーのいずれかを選ばなければならない。チームがオコンとの契約を破棄するという禁じ手を使わぬ限り、どちらか一方がチームを去る事は避けられそうにない。

カート時代のピアストリは、さほど目立っていたわけではなかった。だがシングルシーターにステップアップすると、その類まれな才能を開花させた。

2016年にデビューした英国F4選手権ではその初戦で優勝を飾り、ランキング2位を獲得。2019年にフォーミュラ・ルノー・ユーロカップでタイトルを獲得すると、その翌年にはFIA-F3選手権を、翌々年にはFIA-F2選手権を制し、3年連続でチャンピオンに輝くという歴史的な快挙をやってのけた。

F3(GP3)とF2の連続制覇としては過去に、フェラーリのシャルル・ルクレールとメルセデスのジョージ・ラッセルが達成している。

これだけの経歴があれば、すぐにでもF1デビューのオファーがあって然るべきだが、カスタマーチームを持たないアルピーヌのF1シートは限られており、F2で打ち下したライバルの周冠宇がアルファロメオの今季F1シートを手にする一方、ピアストリは不本意ながらもリザーブの役割を受け入れざるを得なかった。

アルピーヌF1チームのリザーブドライバーを務めるオスカー・ピアストリ、2022年4月6日F1オーストラリアGPCourtesy Of Alpine Racing

アルピーヌF1チームのリザーブドライバーを務めるオスカー・ピアストリ、2022年4月6日F1オーストラリアGP

その才能と献身ぶりはレギュラードライバー達をも唸らせる。アロンソは19歳年下のピアストリの才能を高く評価し、一刻も早くF1デビューできる事を願っていると語った。

「彼は良い奴だし、間違いなく才能に溢れている。これまでの全てのジュニアカテゴリーで勝利している事からも彼に才能がある事は明らかだ。それにシミュレーターでもファクトリーでも、あらゆるミーティングでも本当にプロフェッショナルな一面を見せている。まだ凄く若いのにね。早くシートが見つかると良いんだけど」

オコンはピアストリについて、アルピーヌ史上、F1に向けて最も念入りに準備を進めてきたドライバーであり、どのチームのシートかはさておき「近いうちにF1のシートを手に入れるのは間違いないと思う」と語った。

仮にアルピーヌとの契約から開放されれば、ピアストリを狙って触手を伸ばすチームが出てくるであろう事は想像に難くない。失うだけに留まらずライバルの利益になり得るという点においても、アルピーヌは難しい判断を迫られる事になる。

2023年にピアストリのシートを見つけなければならないという点でプレッシャーを感じているかと問われたサフナウアーは「いや、4月の時点ではね。ただ、7月にはプレッシャーと共にシリーシーズンがやってくる」と述べ、移籍を巡る噂が飛び交い始める夏の訪れと共に、重圧を背負って決定を下す事になると認めた。

アロンソがキャリアを継続する意向を示したことに対してサフナウアー代表は「素晴らしいことだ」とする一方で「我々の台本にはオスカーの名前もある」と述べ、ピアストリを”今後”の「注目株」と形容した。

「オスカーは素晴らしい若者だ。準備万端だし、本当に、本当にハングリーで、最も有能な若手の一人だ」

「もしF1マシンに乗せるチャンスがあれば、我々はその機会を与えている。今年の後半には幾つかのFP1でステアリングを握る予定だし、彼は我々のために本当に精力的にシミュレーター作業にも取り組んでくれている。これからの注目株だ」