メルセデスの時とは「全く違う」とレッドブルF1、”敬意”と”競技精神”を持つフェラーリとの競争は「本当に気持ちが良い」
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはフェラーリを「敬意」と「スポーツマンシップ」に溢れるチームと称し、マラネロの伝説的チームとの今季のタイトル争いは険悪なムードに包まれた昨年のメルセデスのそれとは「完全に異なる」と指摘した。
2021年はシーズンを経る毎にメルセデスとの緊張関係が高まっていった。両者の争いはマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンによるコース上での衝突のみならず、チーム代表による絶え間ない場外での舌戦にまで発展した。
そもそもトト・ウォルフと馬が合わないクリスチャン・ホーナーだけでなく、マルコも時に痛烈な表現でライバルを批判した。フェルスタッペンが病院へと搬送されたF1イギリスGPでのクラッシュの際には、ハミルトンを「怠慢かつ危険」「無謀」と称し、「出走停止などの形で罰せられるべき」と語気を強めた。
レッドブルは今季もまた昨年に勝るとも劣らない僅差の争いを繰り広げているが、その相手はメルセデスからフェラーリに変わった。開幕2戦で抜きつ抜かれつの激闘を演じながらも、フェルスタッペンとシャルル・ルクレールは互いへのリスペクトを忘れたりはしなかった。
フェルスタッペンは開幕バーレーンで燃料システムのトラブルにより失望のリタイヤを余儀なくされながらも、レース後に笑顔でルクレールの健闘を讃えた。ルクレールは第2戦サウジアラビアでコンマ5秒届かず2位に甘んじたが、敗北の直後に無線を通してフェルスタッペンの勝利に敬意を表した。
テレグラーフによると、自身もかつてレーシングドライバーとして活躍した経験を持つ78歳のマルコはジェッダでの2人の争いについて「過去10年間の中で最高のレースの1つ」と称した。またServusTVの中で、メルセデスに変わってフェラーリが今季のライバルとなった事を大いに歓迎した。
「フェラーリは我々と似たような歩み方をしている。我々の間には情熱やエモーション、スポーツマンシップやリスペクトがある。それはドライバー同士の間で顕著だが、技術面においても変わらない」とマルコは語る。
「フェラーリとは意見交換ができる。本当に気持ちが良い。こうしてフェラーリを対戦相手として迎えることができ、本当に嬉しく思っている」
開幕2戦のパドックではフェラーリのマッティア・ビノット代表と言葉を交わすホーナーの姿が何度か目撃された。これはウォルフとの間では殆ど見られなかった光景だ。
確かに現時点では良好なライバル関係に見えるものの、シーズンを追う毎にタイトル争いが激化していけば昨年と同じ様に緊張関係に至る可能性も考えられる。だがマルコは「メルセデスと戦うより、ルクレールやフェラーリと戦う方が美しい」として「まだ2戦しか終わっていないが、メルセデスとの時のようにエスカレートすることはないと思う」と付け加えた。
現時点ではフェラーリ対レッドブルの一騎打ちの構図だが、マルコは何もメルセデスがタイトル争いに絡んでこないと考えているわけではない。
1971年のルマン・ウィナーは「メルセデスは現時点では少なくとも0.5秒遅い」としながらも「ハミルトンとフェルスタッペンと差は僅か9ポイント」であり、必ずや巻き返してきて最終的には三つ巴の争いになるはずだと予想した。
マルコによれば、レッドブルRB18がジェッダでフェラーリを下したのには「幾つかの理由」があるが、それでも潜在的なポテンシャルを全て発揮できているわけではないと言う。
パフォーマンスを阻害している要因の一つとしてマルコは「我々のクルマは重すぎる。最小重量を10kg超過している場合、サウジアラビアのようなトラックではコンマ25~3秒の違いが生まれる」と述べ、車重に言及した。
構造強化と18インチタイヤの導入を受け、2022年のF1レギュレーションは燃料を除く車両最小重量を798kgへと引き上げているが、RB18はグリッドの中で最も重いマシンだとみられている。
レッドブルは8kgとも噂される軽量化を目的としたアップデートを早ければ第4戦エミリア・ロマーニャGPで導入する事を目指している。マルコは「これでかなりのタイムアドバンテージ、言い換えればタイムゲインが得られるはずだ」と述べ、ミルトンキーンズが開発を進めている改良パーツに自信をのぞかせた。