フェラーリTOP3確保、影の立役者は降格ペナのサインツだった!リカルドを蹴落とし滑りまくるルクレールを援護と大活躍
パワーユニット交換に伴って最後尾スタートが確定していたため、カルロス・サインツがまさか予選で2度に渡って重要な役割を果たすとは誰もが想像だにしていなかった事だろう。
降格ペナルティが科されるが故に、予選でマイレージを節約するのは理に適った考えだった。何しろポールポジションを獲得したとしても最後尾からレースをスタートしなければならないのだから。
結果的にチームメイトのシャルル・ルクレールはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に1000分の69秒差の3番グリッドにつけたが、実はトップ10圏内に進むことなく、早々に予選を終える可能性があった。
指揮官マッティア・ビノット不在の跳馬は2日目に向けてローダウンフォース仕様へとセットアップを切り替えた。だが、イスタンブール・パークでの予選はコースの至る所が濡れた状態で、ルクレールは身の毛もよだつような恐怖を覚えながらステアリングを握り、Q2敗退の危機に晒されていた。
そこでスクーデリアのピットウォールは計画にはなかったものの、秘密兵器の55号車を急遽コースへと送り込み、ロングストレートでスリップストリームを与える事でルクレールを援護させた。
この戦術が功を奏し、ルクレールは最後の最後でQ3のハードルを飛び越えた。
「ちょっとばかり怖かったよ」とルクレールは語った。
「明日のレースを見据えて今日はローダウンフォースのセットアップを選択したんだけど、Q1とQ2のコンディションで手こずってしまった。滑りまくるような状況だったんだ」
「だから、カルロスがQ2で僕を助けてくれて本当に嬉しかった」
「最終セクターのトラフィックは厄介だったけど、彼がスリップストリームを掴ませてくれて本当に助かった」
「つまり素晴らしいチームワークがあったからこそQ3に進んで、最終的に4番手につける事ができたんだ」
レーシング・ディレクターを務めるローラン・メキーズは「今日は天候やエアロダウンフォースのレベル選択など、あらゆる変数をマネージするのが簡単ではなかった。特にシャルルの方はね。でも彼は状況が複雑になってきた時も冷静に対処し、最後に見事なラップを見せてくれた。そしてカルロスは素晴らしいチームスピリットを示してくれた」と2人のドライバーを称賛した。
サインツはQ1でも見事なチームプレイを演じていた。本来であれば走る必要はないわけだが、コンストラクター争いのライバルであるマクラーレンのダニエル・リカルドをQ1ノックアウトに追い込むべくコースへと向かい、見事その役目を果たしてみせたのだ。
無論、SF21にトップ5が狙えるだけの競争力があっただけに、サインツは本気で予選を戦えなかったのは「残念」で「受け入れがたい」と認めるも、広い視野で見ればイスタンブールでエンジンペナルティを消化して残りのシーズンをフレッシュなエンジンで走った方が得策だと納得している。
「今日は計画を完璧に遂行する事ができた。Q1ではリスクをマネージしてコースへと出ていき、マクラーレンの1台を蹴落として余裕を持ってQ2に進んだ」とサインツは予選を振り返った。
「その後のQ2ではガレージに留まり、ミディアムを履くシャルルにスリップストリームを与えるべく、タイミングを完璧に計算してコースに出た」
「明日のレースはトラフィックの中でのクルマのフィーリングと、タイヤにダメージを与えずに何処まで順位を上げられるかに懸かっている」
「今週末は終始、良いペースが刻めているから、明日はできるだけ上位に食い込んでいきたい。やってやるぜ!」
欲求不満のサインツが闘志を燃やす一方、ルクレールはやや冷静だ。表彰台獲得についてのチャンスを問われたルクレールは次のように答えた。
「あまり調子に乗りたくはないんだ。もちろん今日の結果はチームにとって素晴らしいものだけど、すぐ背後には強敵のメルセデスとレッドブルが控えているわけだからね」
「とは言え、今日はクルマのポテンシャルを最大限に引き出すことができたし、明日のレースがドライであれば、セットアップもバッチリだと思うし、そうなれば自信はあるよ」
予選最速を刻んだルイス・ハミルトンがエンジン交換ペナルティで10グリッド降格となる事から、バルテリ・ボッタスがポールポジションを獲得。2番手はマックス・フェルスタッペン。3番手はシャルル・ルクレールという結果となった。
2021年 F1トルコグランプリ決勝レースは、日本時間10月10日(日)21時にスタート。1周5,338mのイスタンブール・パーク・サーキットを58周する事でチャンピオンシップを争う。