F1イギリスGP、マスク無し35万人動員のその後…コロナ感染拡大誘発せず?英政府調査報告書の結論は…
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの猛威が続く中、7月15日~18日にかけて開催された2021年のF1イギリスGPは無観客試合として執り行われた昨年とは異なり、観客フル動員の上で延べ35万人の来場者を記録した。感染は拡大したのだろうか?
今季のイギリスGPは英国政府のイベント・リサーチ・プログラム(ERP)指定のイベントとして観客を総動員した。ERPはイベントにおけるCOVID-19の感染リスクに関するエビデンスを積み上げ、参加者が安全にイベントに参加できるような方法を科学的観点から模索する政府プログラムだ。
チケット所持者はサーキットで行われる「ラテラルフロー」と呼ばれる検査方法によって陰性である事を証明するか、またはイベント参加日の14日前までに2回目の予防接種を受けている事を証明できれば入場が認められる。
イギリスGPにおいてはマスク着用は義務付けられず、以下の写真にあるように観客の殆どがノーマスクという状況だった。グランプリ開催期間中、1日あたり6万8千人~10万6千人がシルバーストン・サーキットを訪れ、観客とは別に1日あたり7千人のスタッフが運営に携わった。
英国政府が20日に公表した調査報告書によると、イギリスGPの際に585件の症例が確認された。そのうち343件はイベント前の時点で既に感染していた可能性が高く、残りの242件はイベント開催中に感染した可能性が高い症例だという。
ERP指定として過去4ヶ月間に開催されたイベントは、テニスのウィンブルドン選手権やサッカーのUEFA ユーロ2020、全英オープン、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなど37件に及んだ。
2週間で約30万人を動員したウィンブルドンでは881件(うち、イベント期間中に感染した可能性がある症例は582件)、同じく約30万人を動員したユーロ2020では9,412件(うち、イベント期間中に感染した可能性がある症例は6,376件)の症例が報告された。
こうした数字をどう読み解くべきなのか? 症例数は地域の感染率とほぼ同じか、それ以下であった事が示されているとして、報告書は37件の調査を総括し、対策次第で「大規模な参加型イベントは安全に実施できる」と結論づけた。
ただし、参加者が長時間に渡って”密”となるような種類のイベント等においては「慎重なアプローチ」が必要とも指摘。「今回のデータは、濃厚接触があった場合に如何に容易にウイルスが拡散するかを示している」と警告した。
保健大臣のジェームズ・ベセル卿は調査結果について「パンデミックとの戦いにおける最大の武器であり、大規模イベントに対する我々の今後のアプローチに有益」とする一方で「油断が禁物である事を改めて明らかにした」と述べた。
オリバー・ダウデン文化相は「大規模なスポーツ及び文化的イベントを安全に再開できる事が分かった」と述べ、安全なイベント開催のためにワクチン接種を呼びかけた。
また夜間産業協会のチーフエグゼクティブを務めるマイケル・キルは「文化的なイベント、特にクラブのショーや大規模集会が安全に実施できる事を裏付けるデータが得られた」として、ERPの調査結果が各業界に「自信をもたらすことを期待する」と述べた。