F1モナコGPを前にパドックを歩くレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2021年5月19日モンテカルロ市街地コースにて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

平穏なのは今だけ? 接触リスク巡るフェルスタッペンとハミルトンのスリリングな駆け引き

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マクラーレンのザク・ブラウンCEOが放った一本の矢により、レース中の接触リスクを巡ってルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンが意見を対立させた。

マクラーレンCEOが今季タイトル争いを繰り広げる2人について、いずれかの段階でクラッシュする可能性が高いとの見方を示した事で、第5戦モナコGPを前に2人に質問が投げかけられた。

両者は開幕からの4戦すべてでホイール・トゥ・ホイールのバトルを繰り広げており、その激しさは徐々に増してきているように見える。

バーレーンではオーバーテイクの際のトラックリミットによって、フェルスタッペンがハミルトンに勝利を明け渡す格好となったが、続くイモラではスタート直後のシケインでサイド・バイ・サイドに。アウト側のハミルトンが縁石を乗り越えた事で接触は回避され、フェルスタッペンが1勝目を挙げた。

そして前戦スペインではオープニングラップでフェルスタッペンがイン側を刺した。レースは「スプリントではなくマラソン」と考えるハミルトンは、必ずしも譲る必要があったわけではないがライバルにスペースを与え、その後安全マージンを取ってオーバーテイク。3勝目を挙げた。

モナコGPを前にハミルトンは、フェルスタッペンとの間に「バランスのとれた尊敬の念がある」とする一方で「知っての通り、彼の方は自身が多くの事を証明しなければならないと感じているかもしれない。僕は必ずしも同じ船に乗ってはいないけどね」と語った。

この意見についての見解を問われたフェルスタッペンは、暫く考え込んだ後に「証明しなきゃならないものは何もない」と主張。接触を避けなければならないのはお互い様だとした上で「僕らは実際、上手くやっている。ハードに戦いながらもお互いが接触を回避してきた。だから今後も同じ様に上手くやって、コース上で激しくバトルできる事を期待している」と語った。

ただ2度に渡って同様の質問が繰り返されると「これ以上何を言えばよいのか分からない。思わずクリックしたくなるような見出しを生み出す事にしかならないし、これまでの素晴らしいレースを紹介するのではなく、(接触は)時間の問題だと言えば視聴者の数も増えるだろうけどね」と返した。

隣に座ってたセバスチャン・ベッテルはこれを追認し、ジャーナリストを含む外部の人間は、僅差での争いが如何にタイトであるか、如何に容易くクラッシュに繋がるかを理解していないように見えると述べた。

フェラーリ時代にハミルトンと激しい選手権争いを演じた4度のF1ワールドチャンピオンは「マックスが言ったように、誰も他車を追いやったり自分自身を退場させたいとは思っていないけど、攻防の最中での僅かな違いが、意図せず悪い方向に転ぶ事はよくある」と述べ、人々はクラッシュにエキサイトするのではなく、接触せずに大接戦を演じるドライバーのスキルの高さに注目すべきだと訴えた。

レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとアストンマーチンのセバスチャン・ベッテル、2021年5月19日F1モナコGP木曜プレスカンファレンスにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

マックス・フェルスタッペンとセバスチャン・ベッテル、2021年5月19日F1モナコGP木曜プレスカンファレンスにて

接触スレスレを狙って仕掛ける事はフェルスタッペンほどの技量があれば容易い話で、危ういと思われるような動きの一切はハミルトンが一歩引く事を確信してのものと捉えるべきだろう。

使えるものを全て使い切らなければ今季のタイトル獲得などあり得ず、追う立場としては正しいアプローチと言えるが、それがいつまで通用するかは分からない。

ハミルトンは今はまだ、リスクとリターンの両方を加味して譲歩する事が得策と判断しているようだが、ある一定の段階を超えた時、必ずやフェルスタッペンに対して「俺は今後一切譲らない」との強いメッセージをドライビングで示してくるはずだ。例えそれが2台揃ってのリタイヤという結果に終わろうとも。

ハミルトンがいずれかのタイミングでスタンスを変えてくるであろう事は無論フェルスタッペンも承知の上だろう。2人が接触リスクを巡って一級レベルのスリリングな駆け引きを繰り広げている事は明白で、衝突は時間の問題とするブラウンの見解はその意味で正しいように見える。

ただ、それも僅差での争いがシーズン終盤まで続き、ハミルトンが8度目のタイトル獲得を”危うい”と感じない事には起こり得ないとも言えるだけに、両者の接触を望むわけではないものの、やはりそれ程までに緊迫した争いを期待したいと思う。

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