FIAの医療チームに肩を借りて救急車に向かうハースのロマン・グロージャン、2020年F1バーレーンGP決勝レースにて
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F1、バーレーンGPの事故原因調査に着手「ヘイローがグロージャンの命を救った事は疑う余地なし」とロス・ブラウン

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大炎上を伴う激しいクラッシュであったにも関わらず、ハースのロマン・グロージャンが致命的な怪我を負わずに済んだ事についてF1の競技部門を率いるロス・ブラウンは、コックピット保護デバイス「ヘイロー」のおかげである事に疑いの余地はないとの考えを示した。

グロージャン駆るハースVF-20は、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われた第15戦のオープニングラップでバリアに激突。衝撃でシャシーとバリアは真っ二つに分断され、グロージャンが座っていたモノコック側は鉄製ガードレールに埋め込まれる形となった。

事態は悪い方向に転がり、インパクトと同時に大きな炎が一帯を包んだが、幸いにもグロージャンは数秒ほどでクルマを降り、事故現場を離れてメディカルカーに乗せられた。更に朗報だったのは、あれだけの事故にも関わらず両手の甲に軽度の火傷を負ったのみで済んだという事だ。

グロージャンはその後、更なる検査のためにヘリコプターで地元のバーレーン・ロイヤル・メディカル・サービス(バーレーン軍事病院)に搬送され、大事を取って一晩入院した。

F1レースディレクターのマイケル・マシは、レースが行われている最中の段階から、映像を始めとした入手可能なあらゆる種類のデータを収集するなど、”徹底的な調査”に着手済みである事を明らかにしている。

事故を振り返ったロス・ブラウンは、今となっては完全に解決されたと思われていた安全障壁の分断と、激しい火災が発生した事に対して特に強い懸念を表明した。

「本来は起きてはならない事が幾つか発生した。全てを見直して詳細な分析を行わなければならない」とブラウン。

「火災は懸念事項だし、バリアが分断された点も心配だ。ポジティブであったのはクルマ自体の安全性だ。それが今日を無事に乗り切れた理由だ」

「(バリアの分断について)あれは何十年も前の古典的問題だった。これが問題となるようなアクシデントが発生した際は大抵の場合、致命的な結果に繋がったものだ」

ヘイロー(ハロ)はF1マシンの美観を害する等として、2018年の導入に際しては一部から批判を浴びていたが、ヘイローがグロージャンの命を救ったと思うか?と問われたロス・ブラウンは「ああ、疑いの余地はない」と答えた。

「思い起こせば導入当時は多くの論争があったが、今や、特に今日以降、その妥当性と価値を疑う人はいないだろう」

事故の恐怖感を煽ったのは非常に激しい火災だった。車両の安全性が向上している昨今は目にする事がない規模のものだった。ロス・ブラウンは激しい炎が上がった原因について、タンク内の全ての燃料に引火したのではなく、衝撃によって壊れた供給ラインから漏れ出た燃料によるものだと疑っている。

「我々は燃料火災を目にする事になったが、こうしたことは非常に長い間起きていなかった。私は破損したコネクションが引き起こしたものではないかと疑っている」

「詳細に調査しない事にはハッキリした事は分からないが、あれは驚くほど大きな火事だった。マシンはあの段階で100キロの燃料を積んでいた。もし100キロの燃料に一気に火が付いたとしたら、とんでもない炎が上がっていた事だろう。私見だが、あれは100キロ全てが燃えたのではなく、その一部によるものだったと考えている」

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