激動の22時間…ヒュルケンベルグ、払拭なるか”無冠の帝王”…RP20のポテンシャルの高さに興奮
セルジオ・ペレスが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した事で、ニコ・ヒュルケンベルグは悲願のF1初表彰台のチャンスを手に入れた。「今はまだ学習中」と語るように、1発の速さに関しては改善すべき部分が多いものの、レースペースは堅実であり、モチベーションは高い。
F1第4戦イギリスGPの初日前日の午後4時30分にオトマー・サフナウアー代表からの電話を受け、滞在先のスペインからイギリスへと急遽飛んだニコ・ヒュルケンベルグは、飛行場に到着したその足でファクトリーへと向かい、深夜2時までシート合わせに取り組んだ。
初日の朝は、僅か45分間という短い時間ながらも8時からシミュレーターで準備に取り組み、2度目のウイルス検査の結果が出たプラクティス1開始の15分前にようやくパドックへと入り、慌ただしくレーシングスーツに着替えた後、243日ぶりにF1マシンのステアリングを握った。サフナウアー代表からのオファーの電話から22時間後の事だった。
ヒュルケンベルグはこの22時間を「特別で、クレイジーで、ワイルド」と形容した。
the last 24 hours.. 🤠#hulkenback #f1 pic.twitter.com/DHEll1adBT
— Nico Hülkenberg (@HulkHulkenberg) July 31, 2020
最初のセッションでは、まずは無線のチェック、ピットストップの手順など、必要事項の確認を行いつつ、マシンの感触に慣れる事を優先。23周を走り、トップを刻んだマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)から1.170秒遅れ、チームメイトのランス・ストロールから0.588秒遅れの9番手タイムを刻んだ。
続くFP2では28周を走り込んで、トップタイムをマークしたストロールから0.636秒落ちの7番手を記録した。ライバルと比較して、計6日間のプレシーズンテストと3回分のグランプリのハンデを負っている事を考慮すれば、上出来の初日と言って良いだろう。
ウィリアムズ、フォース・インディア、ザウバー、ルノーと乗り継いできたヒュルケンベルグにとって、ピンクメルセデスとも称されるRP20がこれまでに手にした中で最速のマシンである事は疑いない。時に褒め言葉として、時に皮肉として使われてきた「無冠の帝王」を払拭する最大のチャンスが訪れたと言える。
ストロールがFP1で3番手、続くFP2でトップタイムを記録したという事実は、アレックス・アルボン(レッドブル・ホンダ)の赤旗の影響によって何台ものマシンの予選シミュレーションが中断に追いやられた事を踏まえても、ヒュルケンベルグが駆るRP20のポテンシャルの高さを否定するものではない。
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「ルノーではもっと遅いステアリングラックを使っていたが、これはとてもシャープだ。まるで(コックピットではなく)ノーズに乗っているような感覚を与えてくれる」ヒュルケンベルグは昨年まで乗っていたルノーのマシンと違いをこの様に説明する。
「ステアリングの反応は超ダイレクトかつセンシティブで、ステアリングを少し動かすだけでクルマがグッと動くんだ。アクティブというか、即座に反応する感じというのかな」
「とてつもないポテンシャルを秘めているし、クルマはとんでもなく速い」
ロングランに関してはストロールと殆ど遜色ないペースを刻んでいたが、ヒュルケンベルグの予選ランには多くの改善の余地がある。
シミュレーションの際、ヒュルケンベルグはスタートラインから数えて最初のブレーキングゾーンであるタイトなターン3と、最終セクションのターン17でタイヤをロックさせていた。いずれも低速コーナーで、慣れない”センシティブ”なステアリングに手こずったためだろう。
「どんなクルマであれ、すべてを理解し吸収し、どのように運転すべきかを把握するのは時間がかかるものなんだ。今は学習している最中だ」とヒュルケンベルグは語る。
「ソフトタイヤを上手く使いこなせていなかった。もう少し貯金があると思うし、もっと上手くタイヤを使えると思う。今夜は週末に最高の結果を得るべく、そういった内容に取り組むつもりだ」
「昔ながらの顔なじみの連中と仕事ができて嬉しかったし、そういった要素も感覚を取り戻す上での役に立っている。今夜も皆と仕事をするのが楽しみだ。明日はマシンから全てのパフォーマンスを引き出せるように頑張りたい」
2日目のヒュルケンベルグがストロールとのギャップをどこまで縮められるのか、実に興味深い。F1イギリス・グランプリ3回目のフリー走行は日本時間8月1日(土)19時から、公式予選は同22時から1時間に渡ってシルバーストン・サーキットで開催される。