メルセデスを抑えて前を走るレッドブル・ホンダRB15
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ホンダは既にパワーでメルセデスを上回っている、とハミルトン…レッドブルを脅威とみなす

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メルセデスAMGのルイス・ハミルトンは、ホンダ製F1パワーユニットは既にメルセデスと遜色ない、あるいは、場合によってはこれを上回るパワーを備えていると考えており、ホンダRA619Hを搭載するレッドブル・レーシングに強い危機感をつのらせている。

現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンがF1に導入された一年後の2015年、ホンダはエンジンサプライヤーとしてF1世界選手権に復帰するも、信頼性と性能不足に苦しみ続け、マクラーレンとの提携は3年を以て解消された。

当時マクラーレンに在籍していた2度のF1ワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソは、ホンダの性能不足に苛立ちを強め、あろうことか、ホンダのお膝元である三重県鈴鹿サーキットで開催された日本GPで「GP2エンジン=格下のエンジンだ!」と、これを罵った。

英国ウォーキングのチームとの契約解除によって、F1撤退が囁かれたホンダに手を差し伸べたのは、イタリア・ファエンツァに本拠を構えるスクーデリア・トロロッソだった。

ホンダは2018年にトロ・ロッソと再出発を切り、チームの献身的な協力のもとで信頼性とパワーを大幅に向上。そして今年、F1で4連覇を成し遂げた経験を持つ強豪レッドブルとの提携を勝ち取り、目標とするチャンピオンシップ制覇に向けての第一歩を踏み出した。

ホンダはポール・リカール・サーキットで開催されたF1フランスGPで、今季3世代目となるアップグレード版「スペック3」エンジンを投入。車体側のアップデートと相まって急速に戦闘力を上げたRB15は、翌オーストリアGPでマックス・フェルスタッペンを今季初優勝へと導いた。

勢いに乗ったフェルスタッペンは、次のイギリスでもフェラーリを打ち破りメルセデスと遜色ないレベルのパフォーマンスを発揮。残念ながら、セバスチャン・ベッテルの追突を受けてポジションを大きく落としたものの、潜在的には2位表彰台の可能性があったレースだった。

アクシデントによる不遇を経て迎えたホッケンハイムリンクでのドイツGPでは、雨で混乱するレースを制してフェルスタッペンが今季2勝目をマーク。荒れたレース展開となった事を踏まえれば、ドイツでの優勝はオーストリアのそれとはやや性質が異なるものの、ハミルトンはF1でかつて4連覇を成し遂げたチャンピオンチームを侮るべきではないと考えている。

レッドブルは今後も継続的に優勝争いを続けると思うか? ハンガロリンクでこのように質問されたハミルトンは「彼らがマルチチャンピオンシップの優勝チームだということを忘れてはならない」と返し、次のように続けた。

「彼らのマシンは常に優れていたし、レッドブルにはF1界屈指のデザイナーとして知られるエイドリアン・ニューウェイがいる」

「レッドブルはエンジンパワー不足に苦しみスランプに陥った時期があった。その間は(パワーがないために)ライバルよりも少ないダウンフォースに抑えなきゃならなかったが、今はそれを着実に取り戻し、多くのダウンフォースを利用できている」

「それに加えて、二人のドライバー達は素晴らしいパフォーマンスを示しており、もうすぐそこまで迫っている。彼らのマシンが非常に良いことは明らかだし、僕らは今、彼らと対峙する時期を迎えている」

「一年を通して常に最速であるマシンは存在せず、サーキットによって上下するものだ。オーストリアGPの時は、レッドブルのパッケージの方が僕らのものよりコース特性にマッチしていたんだと思う。彼らは僕らだけでなくフェラーリと比べても優れていた」

「今週末も同じような状況なのかもしれない。恐らくシンガポールGPでは手強いだろうね。ロングストレートを持つモンツァのようなコースであったとしても、今年はこれまでとは違った展開になるかもしれない。今や彼らは新しいパワーユニットを手に入れ、馬力に関して僕らに劣らない力を持っている」

「さらに言えば、ある特定の場所では僕らよりも上回っている事すらあると思う。そういった場所で彼らがどうなるかは本当に興味深い」

ハミルトンがホンダのパワーユニットを脅威とみなし始めた一方で、ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターは「依然としてトップチームとのギャップは大きい」として、エンジン開発を一層加速させる必要があるとの認識を示している。

ホンダはメルセデスとの差を更に縮めるべく、サマーブレイク明けのイタリアGPで最新型スペック4エンジンを投入する計画を立てており、日本グランプリ直前に開催されるロシアでは、エクソンモービルが新しい燃料を投入する見通しだ。

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