F1では、コンストラクターズ選手権で3位になっても僅か〇〇円しか儲からない
F1に参戦しているチームはどのくらい儲けているのだろうか?
この程、ウィリアムズF1チームを運営するウィリアムズ・グランプリ・ホールディングス(WGPH)が、2016年事業年度の財務実績を発表した。ウィリアムズは、現在株式市場に上場している唯一のF1チームであり、財務結果を公開する義務がある。
2015年のF1コンストラクターズ・ランキング3位に輝いたウィリアムズの儲けはいくらであったのだろうか?これを知るためには、まずはウィリアムズという企業について学ぶ必要がある。
ウィリアムズの事業体制
ウィリアムズ・グループは以下の2つの企業から構成されている。
- ウィリアムズ・グランプリ・エンジニアリング
- ウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング
“ウィリアムズ・グランプリ・エンジニアリング”がウィリアムズF1を運営している会社で、”ウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング”は自動車産業や航空産業などに技術供与等を行っている会社である。
財務報告書によると、上記2つの企業を含めたグループ全体の売上は、2015年の173億3280万円(£125.6m)から231億円(£167.4m)へと増加、利益(EBITDA)は2015年の4億5500万円(£3.3m)の赤字から21億3900万円に黒字化したという。ただし先の述べたように、この売上と利益はF1事業単体での数字ではない。F1のみの売上と利益を知るためには、グランプリ・エンジニアリング単体のそれを見る必要がある。
F1事業のみの売上と利益
同報告書によると、F1事業を手がけるグランプリ・エンジニアリングの2016年事業年度の売上は161億円(£116.7m)、利益は17億円(£12.4m)となっている。
ウィリアムズは、2014年と2015年にコンストラクターズ・チャンピオンシップで3位、そして2016年は5位となっている。これらの成績から発生する商業権収入は1年後に支払われる取り決めになっているため、2016年の売上は2015年のコンストラクターズ3位の結果を反映していると言える。ここから、F1ではコンストラクターズで3位になっても17億円の利益しか得られない、という真実が導き出される。ただし、同じく3位となった2014年の結果を反映している2015年の売上は140億円(£101.5m)、利益は2760万円(£0.2m)しかない。これはフロントウイングを2回壊してしまえば軽く吹っ飛んでしまう程度の利益である。
ストロールはペイドライバー以上の存在
2017年のF1はレギュレーションが大幅に変更されたため、チームは今年巨額の研究開発費を計上することになるだろう。ランス・ストロールはウィリアムズ入りに際し、チームに91億円とも噂される資金を持ち込んだとされている。これが如何にウィリアムズにとって大きな金額か、そしてこれなしに2017年のレギュレーション大改革を乗り切ることが如何に難しいかがよく分かる。
このように考えてみると、ランス・ストロールをペイドライバー呼ばわりするのは筋違いなのではないかと思われてくる。彼はコンストラクターズ3位になった時の5倍以上もの利益をチームにもたらしたのだ。新しい社員を一人雇うだけで昨年の5倍の利益が得られるとしたら、誰だってこの社員を雇うだろう。ストロールにペイドライバーという呼称を用いるのは実態を的確に現しているとは言い難い。
決して揶揄する意図はないが、彼の実力云々はさて置き「主要取引先ドライバー」「コンストラクターズ・チャンピオン級ドライバー」または「チームオーナー」とでも呼んだ方が的確なのではなかろうか?いずれにしても、このような状況が続く事がF1にとって好ましくないのは言うまでもない。