優勝トロフィーを持つメルセデスのルイス・ハミルトン、2020年F1トルコGP表彰台にて
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気取っているわけじゃない…ルイス・ハミルトンが事ある毎に「困難な週末を望む」と連呼し続ける理由

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ルイス・ハミルトンは事あるごとに「困難な週末を望む」「厳しいバトルを期待する」と連呼しているが、それは何も気取っているわけでも格好をつけているわけでもない。その背景には1.6リッターV6ハイブリッド時代の絶対王者、メルセデスAMGのドライバーならではの悩みがあるようだ。

2014年のレギュレーション変更以来、メルセデスはドライバー及びコンストラクターズの両選手権で7年連続となるダブル制覇を飾ってきた。まさに文字通りの無敵。ハミルトンが制したチャンピオンシップの内の6つは2014年以降にメルセデスと共に成し遂げられたもので、最強エンジンを積む最速マシンに乗る以上、勝って当たり前と広くみなされている。

ハミルトンの圧倒的な強さについて、一部には「最高のマシンがあるから勝てているに過ぎない」との意見もあるが、ミハエル・シューマッハと並ぶ史上最多タイの7度目の栄冠を手にしたイスタンブール・パーク・サーキットでのレースでハミルトンは、そうした批判的な意見を口にする批評家達を黙らせた。

再舗装したての路面、攻撃性の弱まったアスファルト、低い外気温と降雨。チャンピオンマシンのメルセデスW11は、今季初めて週末を通してライバルに先行を許した。

ハミルトンは予選6番手と、2020年のワーストポジションからレースに臨んだものの、一切のミスなくチャンスと見るや全精力を注ぎ込んでプッシュし、圧巻の大逆転勝利を以て再び世界の頂点に立ってみせた。

なお同じマシンを駆ったチームメイトのバルテリ・ボッタスはオープニングラップで接触事故に見舞われ、フロントウイングの一部とステアリングに問題を抱え、58周のレースで計6度のスピンを喫するなどしてポイント圏外の14位に終わっている。

レース後の会見に臨んだハミルトンは「この手のコンディションの週末がもっと増えれば良いのにって思ってる。自分の実力を証明できるチャンスが増えるからね。今日のレースを見てもらえれば…、、僕はリスペクトに値するようなレースができたと思ってる」と語った。

「多分ライバルのドライバー達もそう思ってくれているんじゃないかと思う。彼らは今日のレースが如何に厳しいものであったかを身を以て知っているからね。それに、今日はクルマのパフォーマンス云々がリザルトを決めたわけじゃないという事も」

「これは素晴らしいチームメンバー達なしには成し遂げられなかった事だけど、その一方で同じマシンに乗る僕の隣のもう一人の素晴らしいドライバーは、僕のようなポジションでフィニッシュする事はできなかった」

7度目の世界タイトルを祝うルイス・ハミルトンとメルセデス、2020年F1トルコGP

ハミルトンはドライバーの腕なしに勝利もタイトルもないと主張するが、何もマシンを軽んじているわけではない。8歳の時にカートでキャリアをスタートさせ、今や幾多ものレコードを保持する35歳のイギリス人ドライバーは、最高のマシンを手にする事の重要性を学んだのは幼い頃だったと語った。

「この仕事が如何に大変か、そしてこの世界がどう動いているかはよく知っている。勝つためには当然、良いチーム、良いクルマが必要だ。過去にチャンピオンを獲得したドライバーの中で、これらなしにチャンピオンシップに勝ったドライバーは存在しない。同じことはカートの世界にも言える」

「最初に選手権シリーズに参戦した時の事を思い出すよ。当時チャンピオンになった子が使っていたのはジェンソン・バトンの父親がチューニングした”ロケット・エンジン”だった」

2009年のF1ワールドチャンピオンの父、ジョン・バトンは、息子がカートを始めた時に「ロケット・モータースポーツ」を設立。彼が手掛けたロケット・エンジンは、ルイス・ハミルトンを始めとして数多くのチャンピオンを生み出した。

「あのエンジンは本当にロケットみたいだった。僕が使っていた安物のポンコツエンジンでは勝負にならなかった。ある週末、たしか1992年か1993年だったと思うけど、ジェンソンが次のクラスにステップアップした際に、これらのエンジンがキンボルトン(ケンブリッジシャー州にある村)で売りに出されたんだ」

「そんな2,000ポンド(現在のレートで約28万円)のエンジンを手に入れるために、父が家のローンを組み直したのを覚えている」

「でも、そのエンジンを手に入れた僕はその後、それまで全勝していた子にコース上で前を許すことはなかった」

「だから装備を揃えるのは当然必要なことだし、それはこのスポーツにおいて今後も変わらず重要な事であり続けるのだろうと思っているけど、問題はそれをどう使うかということなんだ。今日のレースでその事を知ってもらえたら嬉しい」

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