バルテリ・ボッタスのピットストップを行うメルセデスのクルー、2021年5月23日F1モナコGPにて
Courtesy Of Daimler AG

何故F1では「ピット」ではなく「ボックス」を使うのか?

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F1ではレース中にピットインを指示する際に「Box this lap.(この周でピットに入れ)」のように「ボックス」を使う。何故「ピット」ではなく「ボックス」を使うのか?

F1競技規約はドライコンディションにおいてタイヤ交換のためのピットストップを義務付けており、レースエンジニアは「Box. Box. Box!」といった具合にドライバーにピットインの指示を出す。

英語の「box」は「箱」「テレビ」「ボクシングをする」等の意味を持つ名詞・動詞であり「ピットインせよ」の意味はないが、レース中に「Pit this lap.」という指示が飛ぶことはない。何故か?

身も蓋もない話だが実はこれ、ピットストップを意味するドイツ語の「Boxenstop」に由来するものだと広く考えられているものの、正確な理由はよく分かっていない。

だが一般化して使われ続けている理由は想像が付く。それはピットストップがレースリザルトを決定付ける重要なレース戦略であり、聞き間違えや聞き逃しが許されないためだろう。

ランド・ノリスのタイヤ交換を行うマクラーレンのピットクルー、2021年9月26日F1ロシアGP決勝レースにてCourtesy Of McLaren

ランド・ノリスのタイヤ交換を行うマクラーレンのピットクルー、2021年9月26日F1ロシアGP決勝レースにて

「pit」のような子音+母音+子音の1音節の単語の場合、何らかの理由で子音が聞き取れないと、何を指しているのかを読み解くための手がかりがなくなってしまう。

例えば軍隊には「A」を「アルファ」、「B」を「ブラボー」等と呼称するフォネティックコードがあるが、これはそうした理由に依るものだという。

F1チームで働くレースエンジニアやドライバーの出身地はドイツ、フランス、イタリア、スペインなどの非英語圏を含む世界各国に渡る。更に無線は必ずしも常に音質が良好というわけではない。

全20台がけたたましくエンジン音を響き渡らせる中、エンジニアとドライバーは出身地と母国語を問わず、基本的に全て英語で意思疎通を行わなければならない。

こうした状況において確実に情報を伝達させるために「ボックス」を用いる事が一般化したのだろうと思われる。もし正確な理由を知っている方がいれば是非お知らせ頂きたい。