理由は美観のみに非ず…何故F1マシンは毎戦後に全ての塗装が剥がされ再ペイントされるのだろうか?

エアロパーツにペイントする塗装工、イギリス・ブラックリーに位置するメルセデスF1のファクトリー内のペイントショップにてCourtesy Of Daimler AG

F1チームはレースを戦い終えたマシンの塗装を毎回全て剥がし取り、次のレースに向けてペイントし直している。それは美観のためだけではなく、クルマのパフォーマンスを最大限に発揮するために行われる。

レース中のマシンはデブリや砂埃に晒されたり、グラベルに飛び出たりするため塗装面は荒れてしまうものだが、仮にパッと見で問題がないように見えたとしても、次のレースに向けて全て再塗装される。

メルセデスAMGペトロナスF1チームで塗装工を務めるライアン・デボンポートはその理由を次のように説明する。

「レース後に全ての塗装を除去するのは、単にクルマの見栄えを良くするということだけでなく、ベストなエアロダイナミクス・フローを確保するためにシームレスかつスムーズな塗装面にするため、そして全てのパーツを確実に規定重量に収めるためにも重要なんだ」

「これによって、サーキットで常に最高のパフォーマンスを発揮することができる」

これは通常、チームのファクトリーにあるペイントショップと呼ばれる塗装部門で行われるが、フロントウイングなどの一部パーツについては、時間短縮とファクトリーへの輸送コスト削減のために、塗装系技術パートナーの現地工場に発注される事もあるようだ。

一言で再塗装と言っても簡単な話ではない。

ファクトリーに戻されたパーツはまずカッティングシートや塗装が除去される。その後は超音波探傷器や浸透処理によって目視できないような微細な傷まで徹底的な確認作業が行われ、これが終わると強度チェックに回される。

強度上の問題がなく再利用が可能だと判断されるとようやく塗装工程へと入り、サンディング、補修、下塗り、上塗り、焼付が行われる。全ては競争でライバルチームに打ち勝つために。

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