F1新車解説:レッドブル・ホンダ「RB16B」は前季型と比較して一体何が変わったのか?
カラーリングに大きな変化がないため、一見なにも変化がないように見えるレッドブル・ホンダの新車「RB16B」だが、屈指の強豪チームが冬を通して炬燵の中でヌクヌクしながらミカンを頬張っていたであろうはずもない。
大きな変化がないのは当然かもしれない。コスト削減の一環としてメカニカルコンポーネントの開発に制限が掛けられているのは勿論だが、テクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェが「RB16のポテンシャルはメルセデスを凌駕する水準にあった」と語るように、チームは昨年型マシンに大きな欠陥があったとは考えていないためだ。
闇雲に変更を施せば何が正しくて何が誤っているのかを見失う恐れがある…そういう意味では変更が多くないというのは何も悪いことではない。
レッドブルは特にだが、チームは新車発表のレンダリングで見る者の目を欺こうとする嫌いがある。細かな変更箇所とそれによるパフォーマンスに関して現時点で多くを語る事は賢明ではないが、そうは言っても何処が変わったのかはやはり興味深い。
フロントウイングのコンセプトに大きな変化は見られない。その一方で、コースコンディション等に応じて変更される部分ではあるものの、フロントブレーキダクトは下半分がタイトになり、スリットが3つから2つへと減っている。
ノーズが変わったように見えるが、比較の対象としてるのは昨年の新車発表時にリリースされたレンダリングで、チームは昨年のオーストリアで新型ノーズを投入している。
昨年のトレンドの一つであったノーズ下部の”ケープ”は一新された。ノーズと並行するように車体後方に伸びるこのウイングは若干小型化され、昨季型よりもやや後ろに配置された。バージボードやフロア下への気流の改善を狙ったものだろうか。
フロントサスペンションやサイドポット周り、インダクションポッドに目立った変化は確認できない。バージボードやサイドポットは少し変更されている。
注目はリアエンドだ。リアサスペンションに関してはアッパーアームは同じ位置にあるように見えるが、ロアアームはプルロッドの下部に配置転換され、この構図ではウェストゲートパイプが確認できない。
これまでに新車を発表したマクラーレン、アルファタウリ・ホンダ、アルファロメオとは異なり、レッドブルは2アングルのレンダリングをリリースしたのみで何も情報を明かしていない。しかしながらレンダリングを見る限り、開発トークンはリア周りの変更に使われた可能性が高そうだ。
コーナリング速度の低減を目指したルール変更により、今季はリア側のエアロダイナミクスが大きな影響を受ける。チームはこれらの規約変更の結果として失われたダウンフォースを取り戻すべく開発に取り組んでいる。
ルノーからメルセデスへとパワーユニットを切り替えたマクラーレンを除くアルファタウリとアルファロメオはフロントエンドにトークンを投じた事を明かしている。レッドブル・ホンダが別のアプローチを取ったとすれば興味深い。
いずれにせよ、進化した(と思われる)RB16Bが8年連続でのダブルタイトルを目指すメルセデス待望「W12」にどれだけ迫れるかは、バーレーンでのプレシーズンテストと開幕バーレーンGPを待つ他ないわけで、まずは3月12日を心待ちにしたい。