ハースF1史上初のマラネロ発「VF-22」レンダリングから分かる事、分からない事
マシンの外観とレースを一変させ得る新たな技術規定が施行される2022年シーズンに向け、ハースF1チームが一番乗りで新型チャレンジャー「VF-22」のリバリーを発表した。
ただ、世界屈指の技術競争の場たるF1において、先んじてライバルにディティールとトリックを明かすチームはいない。それはハースとて同じ事。殆どは闇の中に隠されたままと見るべきだ。
全く以て驚く余地はないが、レンダリングで明らかなのはカラーリングに大きな変更がないという点だ。カラースキームはタイトルスポンサーを務めるウラルカリ社の参入に合わせて変更された昨年型を踏襲した。「1&1」「IONOS」「Tricorp」「Under Armour」「CYRUS Genève」などのパートナー企業のロゴが確認できる。
テクニカル・ディレクターを務めるシモーネ・レスタ率いる新しいデザインオフィスから生み出された最初のマシンという点で、VF-22は米国カナポリスのチームにとって大きな意味を持つ。
このオフィスはフェラーリのお膝元マラネロに設けられた。そこで働く人々の多くはレスタを含めて事実上、フェラーリの出向者だ。設計にはダラーラのサポートもある。F1での7シーズンを迎えるに際してチームは、新たな人材を既存の体制に如何に統合させるかという点に注力した。
シモーネ・レスタはリバリーの発表に際して「さまざまな理由から、これはウラルカリ・ハースF1チームがこれまでに手がけた中で最も複雑なプロジェクトだったと言える」と語った。
「刷新された新たなレギュレーションを前に、VF-22の開発に向けて新しいチーム体制が構築された。顔ぶれが一新されたわけではないが、多くの人達がこの新たな体制に携わっている。プロセスという点では大成功だと思う」
「プロジェクトはまだ始まったばかりであり、これから1年間を通して共にクルマを作り上げていくという過渡期ではあるものの、スタート地点を振り返って考える限り、このチームは既に成功していると言えるだろう」
チーム代表を務めるギュンター・シュタイナーもレスタ同様に、これまでの進捗に自信を持っているようだ。
「この新たなマシンは一新されたレギュレーションに基づき、新しいデザインチームによって生み出された。自分達に何ができるかは全員が分かっているし、我々は過去にそれを証明してきた。私は再びレースで戦えると信じている」
「これは関係者全員のこれまでの多大な努力の成果だ。そしてこれからは、新車をサーキットに持ち込んであらゆる要素を調整していくという楽しい作業が待っている」
「去年は本当に長いシーズンだったが、2022年はVF-22で再び戦いに復帰できるはずだ」
今回発表されたのはレンダリングイメージに過ぎず、読み取れるものは非常に限定的だが、FIAが発表したショーカーと完全に一致しているわけではなく、少なからず実車に基づいたものだ。
ギュンター・シュタイナー代表はレンダリングについて、2月末のバルセロナテストでお披露目される実車と異る事を認めつつも、開発途上のマシンが反映されたものだと説明した。また、テストから開幕戦に向けて変更される部分は殆どないという。
レンダリングを額面通りに受け取るならば、フロントサスペンションはプッシュロッド式だ。だがフェラーリはプルロッド式を採用したとの情報もあるため確定的とは言い難い。なおリアはプルロッド式を継承している。
サスペンション等の本家との共通が疑われる部位に関してはダミーの可能性がある。ハースはトランスファラブル・コンポーネント(TRC)の多くをフェラーリに頼るはずだ。VF-22の後部にはフェラーリの2022年型1.6リッターV6ターボユニット「066/7」が搭載される。
2022年のF1レギュレーションはより接近したバトルを念頭に練り上げられたものだ。故にVF-22の空力特性は従来型とは大きく異る。
グランドエフェクトを引き出すフロア、簡素化されたフロントウイング、ドラマチックな形状のリアウイングなど、新しい要素が取り入れられた。また、新たに導入されたピレリの18インチタイヤは、オーバーヒートを抑え、ドライバーが1スティントでより多くのパフォーマンスを引き出せるように設計されている。
ハースが目指すのはコンスタントにミッドフィールド上位を争い、コンストラクターズ選手権で5位を獲得した2018年のようなシーズンだろう。昨シーズンを捨ててまで今季に懸けた戦略は功を奏するのだろうか? 2月末のバーレーンテストに注目が集まる。