F1:計3戦で計画中の「スプリントレース予選」の実態…2021年の導入問う投票実施へ

F1オーストラリアGP2018、金曜フリー走行でのグリッドcopyright Andy Hone / LAT Images

本格導入に向けた実地評価のため、F1は2021年シーズン中に3回のスプリントレース予選を行うべく、2月11日(木)に開催されるF1コミッションでその是非を問う。

リバティメディア体制のF1は、エンターテインメント性の向上によって既存のF1ファンのエンゲージメントを高め、更には潜在的ファン層を取り込むべく様々なアイデアを模索している。

昨年はチャンピオンシップでのランキングを元にしたリバースグリッド形式のスプリントレースが俎上に載せられていたが、V6ハイブリッド時代に無敵の強さを誇るメルセデスが真っ向から反対の立場を示した事でお蔵入りとなった。

新たにF1の最高経営責任者の席についたステファノ・ドメニカリはこのアイデアが完全に消滅した事を認めた上で、今年の幾つかのグランプリにおいてスプリントレース形式の予選導入を検討している事を明らかにした。

スプリントレース形式の予選…一体どういうものなのだろうか?

F1では現在、3ラウンド制のノックダウン方式による予選で決勝レースのスターティンググリッドを決している。これは各ドライバーの1ラップタイムを競うものだが、新たな試みはこれに換えてレース形式でグリッドを決めようというものだ。

1時間という従来の予選時間枠に収めるため、距離は約100kmと通常のレースの3分の1の長さで行われる。スプリントレースの並び順は初日金曜2回目のフリー走行のリザルトを以て決定される。

F1は金曜プラクティスセッションの存在意義を再考している。各種データは初日フリー走行を見ているのがコアなファンのみである事を指し示しており、商業権利者はこれを課題と捉えている。

詳細はF1コミッションにて議論されるとの事だが、スプリントレースの上位8名に通常のレースの半分のポイントを付与する案が出ているようだ。ランキングに影響を及ぼすとなると決勝の価値が下がる可能性がある反面、特に上位勢は手を抜く事が出来ず、エキサイティングなバトルが期待できる余地がある。

現在のF1には耐久レース寄りな側面がある。ドライバーはレース中にタイヤやエンジン、ギアボックスを労らなければならない。スプリントレースが最初から最後までマネジメントなしの全開走行をもたらすのであれば幾らか興味深いものがある。

テストケースの候補地には、カナダGPのジル・ビルヌーブ・サーキット、ブラジルGPのインテルラゴス・サーキット、そしてイタリアGPのモンツァ・サーキットが挙げられている。

実地テストによって期待する結果が得られれば、2022年以降の本格導入が検討される事になる。

リバースグリッド計画を廃案に追い込んだメルセデスは今回の提案に前向きだと伝えられているが、その他のチームがこのアイデアに賛成票を投じるかどうかは不明だ。最大の問題は費用だろう。

例えばF1のフロントウイングはノーズを含めて約30万ドル(約3,100万円)と非常に高価であり、レース中に破損すればチームは余計な出費を余儀なくされる。年間の投入基数に制限があるエンジンについても考慮が必要だ。

F1はスプリントレースの開催に際して必要となる経費分として、1チームあたり7万5000ドル(約780万円)を支払う用意があるとしているようだが、それで十分と考えるチームは限られるだろう。

木曜に予定されているF1コミッションで可決されるためには、30票中28票の賛成が必要となる。統括団体の国際自動車連盟(FIA)とF1がそれぞれ10票、10チームがそれぞれ1票を持っているため、3チーム以上が反対票を投じれば否決される。

同様の案は昨年の開幕前の段階で提案されており、その際は同一開催地でのダブルヘッダーが計画されていたレッドブル・リンクとシルバーストンを対象としていた。当時は可決に全会一致が必要であったが、ご承知の通り導入される事はなかった。

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