チームメイトを「絶滅」させてしまう状況こそがフェルスタッペン苦境の要因、とジェンソン・バトン
2009年のF1ワールドチャンピオンであるジェンソン・バトンは、チームメイトを「絶滅」させてきたという点で、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがアイルトン・セナやミハエル・シューマッハと同じ次元に立つドライバーであると考えているが、それが故にマシンの改善という点で好ましくない状況に置かれていると見ている。
フェルスタッペンは過去6戦で予選・決勝ともに僚友アレックス・アルボンに全勝し、テクニカルトラブルのためにリタイヤした開幕戦を除く完走全戦で表彰台に上がり、シルバーストンでの1勝を含めて計95ポイントを獲得しドライバーズランキング2位につけている。
対してアルボンのシーズンベストは4位に留まり、総獲得40ポイントとフェルスタッペンに倍の差を付けられ、ドライバーズ選手権ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)やランス・ストロール(レーシングポイント)を下回る6位に甘んじている。
一見すると問題があるようには見えないが、父親姿がすっかり板に付いてきた40歳のイギリス人ドライバーはポッドキャスト「In the Fast Lane」の中で、この圧倒的なパフォーマンス差がフェルスタッペンの苦境の要因になっていると説明した。
「アレックス(アルボン)はマックスに大きく引き離されているけど、これはマックスにとって厳しい状況だと言える。と言うのも、競争力のあるチームメイトがいない状況では十分な進化が望めない可能性があるからね」とバトン。
「チームメイトが自分より0.5秒も離れていると、セットアップ変更やセットアップ作業に関して耳を傾けなくなってしまい1台体制のチームのようになってしまう。これは好ましい状況じゃない」
「シルバーストンでのレースは最高に素晴らしかったと思うけど、バルセロナでは彼の無線からフラストレーションに溢れた声が聞こえていた。満足できるクルマがないためにメルセデスに挑戦できないからさ」
「今の状況は彼にとって難しいものだと思うけど、手持ちの駒を使って最高の仕事をするしかない」
「過去2年間の対チームメイト成績を見れば分かる通り、マックスはチームメイトを全滅させてきた。こうした状況をモータースポーツの世界で目にしたのはかなり前の事で、本当に長い間見たことがない。アイルトン・セナやミハエル・シューマッハの時代にまで遡る必要があるんじゃないかな」
First time the little dude dipped his toes in the Ocean today and he wasn’t best pleased!! 😱 He cheered up pretty quickly once he got a handful of sand in his mouth though!🙄 pic.twitter.com/J4YvcvExYb
— Jenson Button (@JensonButton) August 23, 2020
人工知能が弾き出したランキングを引き合いに出すまでもなく、セナとシューマッハは共に、歴代の中で最も速く、最も偉大と広く見なされているドライバーであり、バトンに言わせればフェルスタッペンは両者に並ぶ途方も無い才能を持っているが、チャンピオンへの道のりは高く険しい。
今季のメルセデスは相も変わらず絶対的なスピードを誇るが、バルテリ・ボッタスはドライバーズランキング首位をひた走るルイス・ハミルトンの敵ではない。フェルスタッペンが倒すべき相手は2010年から2012年までのマクラーレン時代のバトンのチームメイトだ。ボッタスファンは別にしても、バトンはそう考えている。
バトンは「そんな並外れた仕事をしているマックスとルイス(ハミルトン)のチャンピオン争いを是非見てみたいものだよね。この2人は最高のゲームをしているし、誰もが見たいと思っているだろうと思うけど、果たして実現するだろうか?僕には分からない」と続け、ハミルトンの強さの秘密を次のように明かす。
「ルイスは凄く素直なドライバーなんだ。彼は決してゲームをしない。殆どのドライバーはそうだし、僕もゲームをしたことがある。チームメイトだった頃のフェルナンド(アロンソ)は…ワオ!あれは常に完全なゲームだった。誰も見ていなかったし決して話せないような事もあるけど(笑、あれは楽しかった。今でもワクワクする」
「でもルイスの場合は素直で本当に速いから、相手にするのは本当に難しいんだ。バルテリ(ボッタス)にできることは、チームの後ろ盾を得て本当の意味でのチームプレーヤーになる事だけだと思う」
「僕がマクラーレンに移籍した時にルイスを苦しめる事ができたのはそういう理由だった。移籍した時、あのチームは基本的にルイスのチームだったんだ。ルイスは彼らと一緒に世界選手権を制覇していたからね」
バトンはマクラーレン移籍初年度、ハミルトンに26点差で破れたが、2年目は43点差で後の6度のチャンピオンを打ちのめした。
「だからチームから彼と対等に扱ってもらうためには、できるだけ多くの時間をチームと過ごして、僕もチームの一員なんだって事を示すしかないって考えたんだ。その結果、彼らはルイスと同じように僕をリスペクトしてくれるようになった。そうなった後は毎レースでチームメイトにハンマーを打ち込めばいい」
「でも、それもルイスの場合は難しい。あるレースで彼を打ち負かして、頭を垂れている彼を見て満足にふけったとしても、次の週末には打ち負かされてしまうんだ。どういう思考をしてるのか知りたくて、彼の頭の中に入ってみたいと思うほどさ」
「つい1週間前に抱えていたネガティブな感情とか見方をどうやって消し去っているのか分からないんだ。次の週末には突然、相手を打ちのめすんだ。全くの別人みたいだよ。ホント面白い」