「From Sim To Reality」の撮影に臨むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2022年6月23日(木) ベルギー
Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1王者フェルスタッペンの裏側、シムレース賞金は全額譲渡…契約すら結ばぬチーム・レッドラインへの貢献と特別な絆

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大のシムレース愛好家として知られるマックス・フェルスタッペンは、これまでに一度も賞金を受け取った事がなく、その全額を契約すら結んでいないチーム・レッドラインに渡してきたという。

フェルスタッペンが世界屈指の強豪シムレースチーム、チーム・レッドラインに加わるきっかけとなったのはF1デビュー以前のジュニア時代の事だった。

シム・レースチーム「チーム・レッドライン」主催の「Real Racers Never Quit」イベントの告知グラフィックcopyright Team Redline

シム・レースチーム「チーム・レッドライン」主催の「Real Racers Never Quit」イベントの告知グラフィック

ヴァン・アーマスフォールト・レーシングから欧州F3選手権やマカオグランプリに参戦していた当時、フェルスタッペンはアッツェ・ケルコフと出会った。

ケルコフはオランダ代表のスピードスケート選手から競技スポーツとしてのシムレーシングの世界に転身したシムレーサーで、2012年以降、チーム・レッドラインのチームマネージャーを務めており、ヴァン・アーマスフォールト・レーシングでシミュレーター作業に関わっていた。

オランダのレース雑誌「FORMULE 1 Magazine」とのインタビューの中で、フェルスタッペンと出会った当時の事をケルコフは「チームがドライバーのトレーニングのために新しいシミュレーターを立ち上げていてね。僕はドライバーのためにベンチマークとなるラップタイムを設定していたんだ」と振り返る。

「マックスがチームに加わり、僕らはシムで多くの時間を過ごした。F3のレースに向けた準備の一環として何度も競い合った。そうやってお互いを知るようになったんだ」

2015年にスクーデリア・トロロッソからF1デビューを果たしたフェルスタッペンは、これからもシムレースを続けたいと考えていた。そこでケルコフはフェルスタッペンをチーム・レッドラインに誘った。

2014年8月22日のF1ベルギーGPフリー走行を見学に訪れたマックス・フェルスタッペンとヨス・フェルスタッペン、トロロッソのガレージ内にてCourtesy Of Red Bull Content Pool

2014年8月22日のF1ベルギーGPフリー走行を見学に訪れたマックス・フェルスタッペンとヨス・フェルスタッペン、トロロッソのガレージ内にて

チーム・レッドラインのドライバー達は単に金銭的な権利を明確にするというだけでなく、秘密保持を含む契約を結んでいる。その理由の一つはフェルスタッペンという世界的に有名なドライバーがいるためだ。

その一方でフェルスタッペンはマクシミリアン・ベネッケやジェフリー・リートベルトといった他のドライバー達とは異なり、チーム・レッドラインと契約を結んでいない。

その理由についてケルコフは「もちろん、マックスはチーム・レッドラインのために最前線で戦っているけど、我々の側としては彼に何かを望んだり期待しているわけではないから、彼との間に契約はないんだ」と説明した。

大会の賞金総額は多いものになると優に1億円を超える事もある。多くのシムレーサーは収入を得るために定期的にオンライン上でレースを戦うが、フェルスタッペンはグリッド最高年俸を稼ぐようになる以前から、他の多くのドライバーとは異なる立場でステアリングを握ってきた。

「マックスは一度も賞金を受け取ったことがない。いつもチームに支払われるんだ。彼は本当に気前がいい」とケルコフは言う。

「もちろん莫大な金額じゃないけど、マックスはお金のためにやっているわけじゃないんだ」

チーム・レッドラインは2022年、フェルスタッペンと父ヨスが立ち上げたレース活動プロジェクト「Verstappen.com Racing」と提携し、2023年にはレッドブル・レーシングと複数年に渡るパートナーシップを締結した。

「マックスがチームに良い思いを抱いていなければ、こんなことはしなかっただろう。彼の信頼の表れだよ」とケルコフは語る。

「フェルスタッペンの助けがあって実現したんだ。僕らは共に多くの時間を過ごし、情熱と愛情を注ぎ込んできた。だからこその結果だ。これは本当に緊密なコラボレーションなんだ」