フェラーリの”大胆不敵な”タイヤ戦略は誤り?ベッテルは何故失速したのか? / F1イギリスGP
メルセデスとレッドブル・ホンダが揃ってミディアムコンパウンドでQ2突破を果たした一方、スクーデリア・フェラーリは意図的にソフトタイヤを選択。決勝レースを見据えてライバルとは異なる戦略を選んだ。
ソフト=C3コンパウンドはミディアムと比べて摩耗が大きく、タイヤへの負荷が大きいシルバーストンでのレースには適さないと目されていた。マラネロの判断は誤りなのだろうか?それとも…。
フェラーリの判断を信頼するルクレール
シャルル・ルクレールは持てる力の全てを絞り出したものの、ポールには1000分の79秒届かず予選3番手。セッションを振り返ったルクレールは、結果と戦略へと満足感を示した。
「3位は今日の僕らがなし得た最高のリザルトだ。心から満足してる」とルクレール。「Q2での僕らはかなり良かったけど、Q3になってからは、メルセデスが多少エンジン出力を上げたんだろう。彼らは本当に恐ろしく速くコーナーを走っていた」
「僕らは決勝でのスタートを考えて、大胆なタイヤ選択をした。僕らのスタートタイヤはライバルよりも柔らかい。僕はそれに全てを懸けるつもりだ。うまくいけば最初の数コーナーで幾つかポジションを上げられるはずだ」
チーム代表のマッティア・ビノットはこの戦略判断について「もう一つ別の変数を付け加えるために予め計画していた事」と説明する。
「タイヤの磨耗がレースの鍵を握るであろう事は十分に認識しているし、長いレースになる事も覚悟の上だ。ロングスティントを上手く走りきれるような適切なセットアップである事を願いたい」
「我々はオーストリアでもかなり似通った選択をした。第一スティントではソフトタイヤが適していると考えている。最初のスティントは上手くいくだろう。明日になってみないと何とも言い難い部分はあるが、少なくとも我々のチョイスはライバルとは異なるものだった。それが我々に利益をもたらしてくれるかもしれない」
© Ferrari S.p.A. / 予選を終えたシャルル・ルクレール
ソフトスタートは最速戦略、とピレリ
レッドブル・ホンダやメルセデスは、ソフトより耐久性に勝るミディアムでレースをスタートする。理論上、フェラーリがライバルよりも前にピット作業を強いられる事はほぼ疑いないが、ルクレールはチームの決断に全幅の信頼を置いている。
「レースシミュレーションを見ても、2つのタイヤに大きな違いはない。僕に言わせれば、ミディアムとソフトの差は、昼と夜の違い程じゃないと思ってる」
「前の連中はミディアムだから混乱させられれば良いね。それに天候も重要なファクターだし、コースそのものもチャレンジングだ。面白いレースになるはずさ」
日曜のシルバーストンは気温19度、降水確率20%の曇り予報となっており、コンディション的には予選が行われた土曜日に近い。フェラーリが選んだ戦略は彼らにアドバンテージを与えるだろうか?
奇しくも公式タイヤサプライヤーのピレリは予選後、レースでの最速ストラテジーとして、ソフト(13周)、ソフト(13周)、ハード(26周)と繋ぐ2ストッパーを予想した。1ストッパーは除外されており、ミディアムスタートでの2ストッパーの場合、第一スティントが2周増えて15周へと伸びるのみで、両コンパウンドのデグラデーションをほぼ同一と見積もっている。
© Pirelli & C. S.p.A.
ガスリーに敗れ5番手…ベッテルに何が?
6月のカナダGPでポールポジションを獲得して以来、ベッテルはルクレールに対して3戦連続で予選負けを喫した。今回はレッドブル・ホンダのピエール・ガスリーにすら遅れを取り、チームメイトから0.615秒落ちの5番手。一体何があったのか?
「単純にスピードが足らなかったんだ」とベッテル。「大抵の場合、特に何もしなくても、Q1からQ3へ向かって徐々に速さを増していくものだけど、今日はそうならなかった。クルマの感触も最高とは言えず、速さがなかった」
「シャルルの方は良い仕事をしたと思うけど、僕が上手くいかなかった理由は今のところよく分からない。彼は至る所でゲインを得ていたように思う」
アップダウンの激しい週末を過ごすベッテルだが、レースになれば再び競争力を示す事ができると楽観視する。
「レースで問題になる事はないはずだ。もっと上のポジションからスタートできればそれに越したことはないけど大丈夫。メルセデスはかなり速いと思うけど、僕らのレースペースも悪くない。程度の差こそあれ、毎年いい感じだからね。問題はレッドブル・ホンダだ。彼らとは厳しい戦いになるだろう」
2019年F1イギリスグランプリ決勝レースは、日本時間14日(日)22時10分から行われ、1周5891mのシルバーストン・サーキットを52周する事で勝敗を決する。