不必要で自滅的…バーレーンでの角田裕毅を海外の専門家はどう見たか?
F1バーレーンGPでの角田裕毅の振る舞いを海外の専門家はどう見たのか?その中には、自らが掲げる目標、つまりレッドブルへの昇格の道をリスクに晒すものでしかなく、その意味において「不必要で自滅的」との指摘がある。
角田裕毅は2024年シーズンの開幕戦で入賞を視野にレースに望んだものの、戦略が彼を後押しすることはなく、ピットストップの度にアンダーカットされ順位を落とし、その結果として最終スティントでは、自身より柔らかいタイヤを与えられた事で好ペースを刻んでいたダニエル・リカルドに順位を譲るよう指示された。
これではフラストレーションが溜まらないはずもないが、その後の振る舞いは彼の評価を高めるものではなかった。
ピットウォールからの指示に不満をあらわにした後、しぶしぶ道を譲ると、無線を通して「みんな、ありがとう。感謝するよ」と皮肉を口にし、前走車両を追い抜きあぐねる前のリカルドを見て「全然速くないじゃないか!」とぶちまけた。
さらに、チェッカーが振られた後のクールダウンラップでは、リカルドを煽るようにクルマを乱暴に走らせた。彼は何か怒りを買うような事をしたのだろうか。
開幕に先立ち、自身に足りないものはリカルドが持つ「自制心」であるとして、それを学んで身につけたいとしていた矢先のことだった。
蘭「RacingNews365」で編集主任を務めるジェイク・ニコルは、「公衆の面前で感じた不当さに対して、そのように反応すべきではないと知っているべきドライバーによる子供じみた不作法な反応」であるとして、「リカルドに対してアドバンテージを持ち、チーム内バトルにおいて早い段階で打撃を与えることができたはずの週末を締め括るには良くないやり方だった」と指摘した。
また、英「The Race」で編集補佐を務めるジョシュ・サティルは、ドライバーがチームオーダーに腹を立てるのはごく一般的だとしつつも、「暴言が飛び交っていたチーム加入当初よりドライバーとして成熟している事を示そうとする彼の努力の精神にそぐわない」と指摘した。
「ツノダが冷静さを失う頻度と、レース後の行為の両方が、レッドブルや他のチームが求める成熟度の欠如を如実に示している」
「ツノダのキャリアにとって重要なレッドブルや、将来的に雇用主となり得るチーム関係者は、ツノダがこうしたポジションを争っていたのはチームオーダーとレース戦略によるものである事を十分に理解しているはずだ」
「ゆえにリカルドの前であろうが真後ろであろうが、こうしたポジションでフィニッシュしても、彼に対する評価は何も変わらないだろう。(一方で)あのような反応は(彼に対する評価に対して)遥かに大きな影響を及ぼす」
サティルが指摘するように、13位であろうが14位であろうが、リカルドより角田裕毅の方が速かった事は関係者にとって自明の事だった。
英「Sky Sports」のピットレポーター、テッド・クラヴィッツは「ユーキはレース全体を通してリカルドより速かった」と指摘し、「2人とも本当にナイスガイなだけに、円満でないのは見ていられない」と語った。
否定的な評価は無線での悪態やクールダウンラップでの行為に対するもので、それ以外についての評価は肯定的だ。
戦略が上手く機能しない理由の一つとして角田裕毅はレース後、タイヤに関する自身の状況報告の頻度が少ないがために、チームが的確に戦略を調整できていないためだろうとして、自らにも改善すべき点があるとの考えを示した。
サティルはこれを「成熟した認識」と評価し、この日のRBの戦略を「まずかった」と指摘。リカルドを上回り、Q3進出にあと一歩と迫った予選でのパフォーマンスにも触れた。
つまりそれだけに、チームオーダーに対する反応とその後の行為はサティルにとって「やはり不必要なもの」で「自滅的」だった。またサティルは時期も悪かったと考えている。
新しくチーム代表に就任したローラン・メキーズを含め、RBの上層部、つまり角田裕毅を評価する側の面々は大きく変わったばかりだった。
サティルは「RBは新しいマネジメントを迎えた。良い印象を与えるべき時だった。例えば、新たにレーシングディレクターとして加わったベテランのアラン・パーメインは、こうしたふざけた行為に対してキッパリとした反応を示すだろう」と記し、次のように続けた。
「ファーストチームまたはセカンドチームの2025年のドライバーに関してレッドブルは、その選択肢に事欠くことはないため、こうした乱雑な対応を繰り返せば、レッドブル、そして間もなくホンダを搭載する事になるアストンマーチンなどが将来のドライバーラインナップを検討する際に、望ましくない注釈をまたひとつ追加するだけだ」