パドックでメディア対応をする角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年12月5日(木) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

角田裕毅、僚友凌駕の好走で「信頼構築」レッドブル昇格へラストスパート―ホンダ障害説を否定

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角田裕毅(RBフォーミュラ1)は、2025年に向けたレッドブル昇格の行方が自身の努力だけでは決まらない複雑な状況にあることを受け止めつつも、チームメイトを一貫して上回る安定した成績が「信頼」を築く上で寄与したと考えており、さらなるアピールを目指して最終アブダビGPに挑む覚悟だ。

セルジオ・ペレスは契約上、2025年のレッドブルのシートを有しているが、今シーズンを通して続く成績不振を理由に、ペレスの母国メキシコのメディアを含め、2024年末での早期退団が有力との報道が飛び交っている。

報道によると現状では、「解雇」を避けるために自ら公の場での引退を発表してアンバサダー兼リザーブドライバーとしてチームに残るか、違約金を受け取ってチームを去るかの2択とされる。

報道が事実であるかどうか、現実がどう転ぶかはさておき、ペレスの将来が危ぶまれた結果、角田裕毅とチームメイトのリアム・ローソンが後任候補として再び大きな注目を集めている。

ヤス・マリーナ・サーキットのパドックで記念撮影するレッドブル系ドライバー、左からアムナ・アル・クバイシ(F1アカデミー、MPモータースポーツ)、角田裕毅(RBフォーミュラ1)、アイザック・ハジャー(RBリザーブドライバー、FIA-F2選手権)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ハムダ・アル・クバイシ(F1アカデミー、MPモータースポーツ)、リアム・ローソン(RBフォーミュラ1)、エミリー・デ・ヘウス(F1アカデミー、MPモータースポーツ)、セルジオ・ペレス(レッドブル)、2024年12月5日F1アブダビGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

ヤス・マリーナ・サーキットのパドックで記念撮影するレッドブル系ドライバー、左からアムナ・アル・クバイシ(F1アカデミー、MPモータースポーツ)、角田裕毅(RBフォーミュラ1)、アイザック・ハジャー(RBリザーブドライバー、FIA-F2選手権)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ハムダ・アル・クバイシ(F1アカデミー、MPモータースポーツ)、リアム・ローソン(RBフォーミュラ1)、エミリー・デ・ヘウス(F1アカデミー、MPモータースポーツ)、セルジオ・ペレス(レッドブル)、2024年12月5日F1アブダビGP

成長と安定好走の「ベストシーズン」

ローソンはフルシーズン参戦の経験がなく、予選やレースで角田裕毅の成績に及んでいない。しかしながらレッドブルは、マックス・フェルスタッペンのチームメイトという極度の重圧に耐え得る精神力、成長の可能性といった今後に対する期待から、ローソンを昇格させる可能性が高いとの見方が広がっている。

今シーズンの角田裕毅は、同じクルマに乗るダニエル・リカルドやローソンに対して、予選やレースで安定的に好成績を残してきた。この点はパドックで高く評価されており、角田裕毅自身も、それがレッドブル首脳陣の「信頼」を得る上で少なからず役に立ったと考えている。

「もっと上手くやれたレースが幾つかあったことは確かだと思いますが、これまでと比べると、今年は間違いなく僕にとってのベストなシーズンの一つだったと言えます」と角田裕毅は振り返った。

「特に、チームのポイントの半分以上を獲得できていますし、安定的にパフォーマンスを発揮することができたと思います」

「チームメイトを一貫して上回ってきたので、それが彼らの信頼を築く上で少なからず役に立っているのではと思います」

さらに、「フィードバックを通じてクルマの改善にも貢献できましたし、多くのレースで不利な状況を好転させることができた点も成長の証だと思います」と強調した。

気性とホンダ、影響を否定

気性の激しさやホンダとの関係を理由に、レッドブルは角田裕毅を昇格の候補から除外したとの見方もあるが、角田裕毅はこれに否定的だ。

英Motorsport Weekによると角田裕毅は「去年ならそれも納得できますが、今年はかなり成長しましたし、感情が爆発してしまった場面はほとんどありません」と自身の成長を強調した。

また、ホンダとの契約関係が昇格の障害になっているとの見方についても否定し、「それが理由なら筋が通りません」と語った。

さらに、レッドブル内での関係性にも触れ、クリスチャン・ホーナー代表との交流は少ないものの、「君のことを注視している」と伝えられたことを明かし、チームから「ブロック」されている感覚はないと主張した。

角田裕毅を支援するホンダは2025年末を以てレッドブルファミリーとの関係を終了し、アストンマーチンとの新たな挑戦に臨む。角田裕毅の現行契約は2025年末で満了を迎える

昇格の行方:冷静姿勢

アブダビGP後の翌月曜日にレッドブルは、株主を交えた会議でドライバーラインナップを議論する予定だが、その翌日に行われるポストシーズンテストの結果も昇格に向けた評価材料となる可能性がある。

しかしながら、レッドブルのマシンを使った初の本格テストについて角田裕毅は、「単なるテストに過ぎないのでは」と語り、昇格の検討において決定的な役割を果たすことはないとの見方を示す一方、レッドブルの首脳陣が「求めるレベルに達するパフォーマンスを発揮できればと思っています」と意欲を示した。

また、アブダビGPについては「かなり重要なのは間違いないと思います」「僕としては兎に角、集中して自分のパフォーマンスに取り組むつもりです」と語り、最終戦の地で更なるアピールを目指す意向を示した。

とは言え、昇格に過度な期待を抱いているわけではない。

「今年の結果を見れば、僕がチャンスを得るべきなのはかなり明らかだと思います」とする一方で角田裕毅は、F1は「かなり政治的なスポーツ」であると指摘した。

レッドブル首脳陣が抱える状況についても触れ、「向こうにも、いろいろと進行中のことがあるでしょうし、決めなければならないこともあると思うので、最終的には彼ら次第だと思います」とも語った。

また、「誰がそのシートを手にするのか、見守りたいと思います。ドライバーによっては、驚くかもしれませんが。兎に角、噂が飛び交っているので、彼らが何を考えているのか予測するのは難しいですね」と付け加えた。

さらに、シート争いは今に始まったものではなく、シーズンを通して続いてきたと指摘し、「最初のレースでダニエル(リカルド)を上回れなければ、僕は今頃はソファに座っていたのだろうと思います」とも語った。

コンストラクターズ選手権争いへの想い

アブダビGPの舞台となるヤス・マリーナ・サーキットは角田裕毅が得意とするコースだ。デビューイヤーには自己最高位の4位でフィニッシュし、昨年も8位入賞を果たした。

アルピーヌとの差は13ポイントと、RBのコンストラクターズ選手権6位奪還は極めて厳しい状況だが、それでもハースとの差は5ポイントであり、7位に関しては決して手の届かない場所にあるわけではない。

「良い結果を残さなければならないと思っています。コンストラクターズ選手権はここ最近、難しい状況になってきましたが、何が起こるか分からないので諦めたりはしません」と角田裕毅は力強く語る。

「ここでは過去に何度か良い成績を収めていますし、できる限りのことをやるつもりです」

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