
「大きなチャンス」 角田裕毅の緊急復帰を支えるレーシング・ブルズ、“不利を利点に”入賞も視野
8カ月ぶりにF1に戻った角田裕毅に対し、レーシング・ブルズはスプリント予選から結果を求めるのではなく、本予選と決勝に向けて段階的に2026年型マシンに適応する方針を伝えていた。CEOを務めるピーター・バイエルが、第12戦オランダGPでの代役参戦決定までの舞台裏と角田への期待を明かした。
バイエルは、角田がフィジカルおよびメンタルの双方で万全の準備を整えていると評価。マシンへの適応を続けられれば、ポイント獲得も狙えるとの見方を示し、「彼には、この状況をプレッシャーとしてではなく、大きなチャンスとして捉えてほしい」と期待を寄せる。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
チーム代表者会見でマイクを手に質問に答えるピーター・バイエル(レーシング・ブルズCEO)、2026年8月21日(金) F1オランダGPスプリント予選前(ザントフォールト・サーキット)
段階的なマシン適応でスプリント週末を利点に
角田にとっての最大の課題は、2026年導入の新世代マシンを一度も走らせたことがないことだった。だがバイエルは、古巣チームでの復帰により、その負担は少なからず軽減すると考えていた。
「ユーキにとっては、ちょっとした『里帰り』のようなものだった。チームを知っているし、メカニックも知っている。ガレージの勝手も分かっているし、身体作りも続けていた。フィジカル的にもメンタル的にも、万全の準備を整えている」とバイエルは語る。
旧型マシンテスト(TPC)で走行を続けていたことも評価材料となった。こうした状況を踏まえたうえで、バイエルが開幕前日の夜に角田に伝えたのは、一見するとデメリットにも映るスプリント形式を、逆にアドバンテージへと変える考え方だった。
「アドバイスという意味では、昨夜彼にこう言ったんだ。『ユーキ、スプリント週末は本当に忙しく慌ただしい。でも、君にとってはむしろ利点になるかもしれない。土曜日と日曜日のセッションに集中すればいい。フリー走行があり、予選シミュレーションがあり、何周かレースもできる。そうすれば適切なマインドセットに入って、マシンにも慣れるはずだ』とね」
緊急招集の舞台裏、広報縮小によるサポート
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車から降りて雨のパドックに降り立つ角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2026年8月21日(金) F1オランダGP(ザントフォールト・サーキット)
ドライバー変更に向けた動きが始まったのは、アイザック・ハジャーが負傷した先週後半のことだった。その後、関係者の間で電話による協議が始まり、今週火曜日にはオランダGPのドライバーラインナップが決定した。
バイエルによれば、角田の件を除けば、代役選定や手配、準備に関して特に大きな混乱はなかったという。
「正直、こういうことが起きるのは望んでいないが、ひとたび起きれば何をすべきかは分かっている。言ってみれば、手順書に従うようなものだ」とバイエルは説明する。
「一番大きな変更は、ユーキの移動予定だった。ギリシャから戻ってきてもらい、シミュレーターでの作業に取り組ませるために、最大限のサポートをする必要があった」
急な招集だったものの、角田は復帰一発目のフリー走行1回目(FP1)を17番手で終えた。バイエルは「非常に堅実な仕事をしてくれた」と評価。続くスプリント予選では、SQ2まで進んで12番手を獲得した。
突然のF1復帰によってメディアからの関心が集中し、角田には大きなプレッシャーがかかっているものの、チームは角田の管理能力については何も心配していない。バイエルはこう語る。
「レーシングドライバーであれば誰でもF1マシンに乗ることを切望していると思う。それに若い頃からプレッシャーに対処し、管理する訓練を受けてきている。だから、そこはあまり心配していない」
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ファンステージで大勢の観客を前にトークするレーシング・ブルズの角田裕毅とアーヴィッド・リンブラッド、2026年8月21日(金) F1オランダGP(ザントフォールト・サーキット)
その一方で、可能な限り角田の負担を減らす努力を重ねている。
「先ほど話したように、『本予選と決勝に集中して、それ以外はFP1、FP2、FP3だと思えばいい』と伝えることで、すでに週末のプレッシャーを少し取り除いている」とバイエルは語る。
広報活動も最小限に抑えた。バイエルによれば、ソーシャルメディア向けの対応時間も通常の30分から10分へと短縮された。
入賞を見据えるバイエル、2027年に向けた展望
バイエルが角田に求めているのは、単に週末を完走することではない。バイエルは次のように語り、レーシング・ブルズにはポイントを獲得できるだけのマシンがあるとして、入賞も視野に入れていることを示唆した。
「彼はF1にいたいと思っているし、世界に対して自分の実力を証明したいと考えている。正直に言えば、このまま積み上げていければ、彼にはポイント圏内を走れるマシンがあるわけだ」
もっとも、ポイント獲得を確信しているわけではない。「それが実際に可能かどうかは、日曜日になれば分かる」とし、まずマシンへの適応が優先事項だと強調した。
角田自身も初日のスプリント予選後、本命は決勝のグリッドを決める予選だと語り、リラックスした様子を見せている。チームとドライバーの双方が、セッションごとに積み上げる方針を共有しているのが今のレーシング・ブルズだ。
バイエルは、「彼には、この状況をプレッシャーとしてではなく、大きなチャンスとして捉えてほしい」と付け加えた。
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ザントフォールト・サーキットを走行する角田裕毅のレーシング・ブルズVCARB 03、2026年8月21日(金) F1オランダGPフリー走行
レーシング・ブルズの2027年のドライバーラインナップはまだ確定していない。だがバイエルは、リアム・ローソンとアーヴィッド・リンブラッドの今季の仕事を高く評価している。
ローソンについてはドライバーズ選手権9位につけ、予選と決勝の双方で速さを示していると指摘。リンブラッドについても「素晴らしい仕事をしている」とした。
さらにFIA-F2選手権で目覚ましい活躍を見せるジュニアドライバーのニコラ・ツォロフについては、週明けにイモラ・サーキットでTPCを実施する予定だと明かし、「引き続き彼の準備を手助けしていくつもりだ」と説明した。
とは言え、来季のラインナップを決定するのはCEOの仕事ではない。バイエルは、チーム代表を務めるアラン・パーメインが「チームにとって最善の判断を下すことになる」と述べた。