トロ・ロッソ、ファエンツァのファクトリーのエントランス

知られざるF1マシンの開発現場と製造工程…トロ・ロッソのファクトリーを360度パノラマビューでみてみよう!

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「ファクトリー」と呼ばれるF1マシンの開発現場はどのような施設なのだろうか?F1マシンはどのようにして開発・製造されているのだろうか?

今季よりホンダとタッグを組むスクーデリア・トロロッソは、2018年マシン「STR13」の発表を目前に控え、イタリアのロマーニャ州ファエンツァの郊外にあるファクトリーの様子を360度写真に収めた特設サイトを公開した。

トロ・ロッソのファクトリーは、元々ミナルディF1チームが使用していた建物に加えて、新たに建設された3棟を含む大規模なものとなっている。新設された第4棟には、シミュレーター部門がオフィスを構える。一般的に、テクノロジーの発展は雇用を奪うものと考えられているが、高度専門化の一途を辿るF1では、ますます多くの人材が必要になってきている。

世界最高峰と称されるF1の世界で戦っていくためには、フェラーリやメルセデス、レッドブルといった強豪チームの半分に満たない低予算で運営されているトロ・ロッソでさえ、大規模な設備と多くの人員が必要となる。

以前は製造とマシンの組立のためのスタッフが最も多かったそうだが、現在はエンジニアやコンピュータの専門家等、知識労働者の雇用が多くなっているという。高度化するフォーミュラ1で競争し続けるためには、中堅チームと言えどもファクトリーの増築が必要不可欠なのだ。公開されたファクトリーの様子を、マシンの製造工程に沿って少しばかり紹介しよう。

デザイン・設計オフィス – 多様な専門家達

F1マシンのデザイン室

設計オフィスは、ビル2階の広大なオープンスペースに設けられている。ここには複合材、サスペンション、油圧、トランスミッション、システム設計を主な業務とするスタッフが多数勤務する。また、エアロパフォーマンス、ビークルダイナミクス、計算流体力学(CFD)、ストレス分析といった専門家達もここで作業を行う。

F1マシンは各方面の最先端技術の結晶、幅広い職種のスタッフが1台のマシンの製作に携わる。スタッフ同士が対面でコミュニケーションを取りながら協力する事が不可欠と考えるトロ・ロッソは、同じフロアに多様な職種のオフィスを配置している。

トロ・ロッソの風洞とエアロダイナミクス部門は、イギリス・オックスフォードシャー州の北東にあるバイチェスターにあるため、デザイン部のスタッフ達は国を超えて密接な連携を取る。

工作室 – 図面からモノが生まれる現場

トロ・ロッソの工作室の様子。フライス盤や3Dプリンタを備える

図面に落とし込まれたパーツは、メインビルにある「マシンショップ」と呼ばれる工作室で形を与えられる。マシンショップには、大型のフライス盤や3Dプリンターが備えられており、技術者達は様々な種類のモデルを作成する。

彫刻されたモデルの多くは、次に紹介する複数材料貼り合わせの専門家の手によってカーボンで覆われる。

クリーンルーム – カーボン積層作業

トロ・ロッソのファクトリー内にあるクリーンルーム

軽量と高強度という相反する2つの要件を求められるF1は、鉄よりも硬く軽いカーボンファイバーなしには語れない。カーボンの積層作業は、空気中の浮遊微小粒子が完全にコントロールされたクリーンルームで行われる。

スタッフは、樹脂に浸されたカーボンシートを手に、複雑な形状のモデルにこれを貼り合わせていく。張り込みが終わると、パーツはビニール袋に入れられ真空パックにされる。そしてその後、圧力炉へと送られる。

トロ・ロッソの従業員の多くは男性だが、クリーンルームでのこの作業は繊細さと正確さと集中力が必要とされ、他の部門と比較して女性の割合が高いという。

オートクレーブ室 – 硬化形成

トロ・ロッソのファクトリーにある4基のオートクレーブ

クリーンルームでパックされたパーツは、オートクレーブと呼ばれる圧力釜の内で、熱と圧力を掛けて硬化成形される。ファクトリーでは毎日釜が稼働しており、チームは「まるでパン屋のようだ」と形容する。

トロ・ロッソは4基の窯を備えており、成形するパーツのサイズによってこれらを使い分ける。”焼きあがった”パーツは、最終加工のために加工室に送られる。

仕上げ・加工室 – 24時間体制で最終加工

仕上げ・加工室

1階にあるマシンパーツの仕上げ・加工室では、マシンのフロアやシャシーなどの大型部品から、非常に小さなエアロパーツまで、何千にも及ぶカーボンパーツが送り込まれる。24時間体制で運営されている部署もあり、この部屋の照明が落ちることはない。

最終仕上げを終えたパーツは品質管理部門へとまわされ、十分な強度を備えているかどうかを確かめるための負荷テストが行われる。

品質検査室 – 耐久性と強度のチェック

品質管理室でマシンパーツの負荷テストを行うトロ・ロッソのスタッフ

時速300km超の高速でコースを駆け抜け、上下左右前後に5G以上のGフォースが絶え間なく押し付けるF1マシンにおいては、これ以上のない程に厳しい品質管理が要求される。検査官達は目を凝らし、細部に至るまで念入りに分析を行う。

検査は、モールド、完成部品、外部サプライヤーからの部品など、F1マシンに使われる全てのコンポーネントが対象となる。検査方法は様々で、超音波、顕微鏡の他、非破壊検査(NDT)で使われる浸透性の蛍光塗料等が用いられる。検査に合格したパーツはワークショップに送られ、組み立ての時を待つ事になる。

組み立てエリア – オイル一滴落ちていない純白の床

マシン組み立てエリア

完成したパーツを組み上げるエリアは「ワークショップ」と呼ばれる。町中の自動車修理工場とは異なり、トロ・ロッソのF1マシンはビル2階の光り輝く白いフロア上で組み立てられる。工場というよりもオフィスといった方が似つかわしい。

社内で製造したパーツと社外から購入したコンポーネントの全てがここに集められる。組み立てが終わったマシンは、大型リフトで1階に降ろされ、搬送専用のトラックに載せられサーキットへと送られる。

その他オフィス・エリア – 後方支援部隊

フランツ・トスト代表と話をするオテッロ・バレンティ法務部長

チームを支えるのはマシンの製造に関わるスタッフだけではない。一般的な企業である以上、総務や経理などのバックオフィスもある。トロ・ロッソでは世界28カ国を超える様々な国籍の人々が働いている。

オテッロ・バレンティ(Otello・Valenti)法務部長は「文化や言語が異なったとしても、誰もが情熱を持って仕事に取り組めるような仕組みが求められるんだ」と語り、後方支援部隊の重要性を指摘する。

トロ・ロッソは、F1での成功のためには才能ある専門家を集めるのと同時に、将来のチームを背負って立つ若者の育成が必要と考えており、フォーミュラ・フューチャー、レース・アカデミー、エンジニアリング・ユニバーシティと呼ばれる開発プログラムによって、将来の才能を発掘・育成する等の、マシン開発とは直接関係のない事業も展開している。

360度パノラマビューは、特設サイトで見ることができる。