ロシア人ドライバーとロバート・クビサ
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動くロシアンマネー…加熱するロバート・クビサF1脱落報道、メルセデスからのDTM参戦プランも浮上

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未だ来季ドライバーラインナップを発表していないウィリアムズF1に関する憶測が加熱している。幼少期からの友人ニコ・ロズベルグがマネジメント入りし持ち込み資金を得たことで、ロバート・クビサが筆頭候補に躍り出たとの見方が有力であったが、ここにきてセルゲイ・シロトキンの名が大きく浮上、クビサは既にシート争いから脱落しておりDTM参戦に動いているとも囁かれ始めた。

F1不在を阻止すべく動いたロシアンマネー

事の発端となったのはカナダ紙Le Journal de Montreal。7日に、ロシア人ドライバーのセルゲイ・シロトキンが約1500万ドル、日本円にして約17億円のスポンサー資金をチームに持ち込むと報道。シロトキンは、ロシアの大実業家にしてウラジミール・プーチン大統領の友人ボリス・ロマノヴィチ・ローテンベルクが所有するSMPグループの支援を持つ。

トロ・ロッソに在籍していたダニール・クビアトがF1から放り出された事によって、来年のF1ロシアGPでは母国ドライバー不在の状況が発生する。これに対して、ロシアの権力者達がシロトキンをF1に送り込むべく動いたと考えられる。仮にシロトキンの契約がまとまらない場合、ロシア側はダニール・クビアトを押す可能性もある。ルノーのリザーブドライバー故に、シロトキンとウィリアムズとの間にはいくつかの契約上の障害があるようだ。

一方のクビサの持ち込み資金は約900万ドル、日本円にして10億円強と考えられており、シロトキンのロシアンマネーには遠く及ばない。ウィリアムズは、F1史上最高となる総額91億円もの資金をもたらしたランス・ストロールをレギュラーに据えており、財政事情は芳しくない。

仮にクビサ側が更なる金額を用意したとしても、相手がロシア国家であれば金額面での勝ち目はない。クビサにロシア、そして”1500万”と言えば、ヴィタリー・ペトロフが思い出される。ペトロフは2010年に1500万ユーロの資金持込によってルノーからのF1デビューを掴んだ。その時のチームメイトはクビサ。単位こそ違えど同じ数字というのは何かの偶然だろうか。

パフォーマンス面でも後塵?浮上したDTM参戦話

最終戦後のF1公式アブダビテストで、クビサはシロトキンを上回る総合7番手の1分39秒465をマーク、ウィリアムズ勢最速ラップを残している。だが、両者が履いていたのは別のコンパウンドであり、ソフトタイヤでのタイムを比較すると、シロトキンのタイムはクビサを1.2秒上回っていた。シロトキンのマネージャーを務めるジョアンパウロ・マトゥッチは、契約の進捗状況についてコメントを拒否している。

クビサは、2011年のラリー競技中に事故で重傷を負い右腕に後遺症を抱えている。現在も私生活において腕の動きに制限があるものの、アブダビテストでは100周以上を走破し身体面の不安を感じさせない走りを披露した。チーム側も、クビサのフィードバックやチームへの適応能力の高さに感銘を受けたと述べており、F1へのカムバックに大きな期待が寄せられた。

テスト終了後のインタビューに応じたクビサは、F1復帰の夢が実現しない場合はプランBがある事を明らかにしていた。伊Italiaracingは、クビサの2番目のプランはメルセデスからのDTM参戦だと報道。市販車ベースのドイツレースには過去、ラルフ・シューマッハやデビッド・クルサード、ミカ・ハッキネンやポール・ディ・レスタといったF1ドライバーが参戦している。今季限りでザウバーを追われたパスカル・ウェーレインもDTMへの復帰が噂されている。

シロトキンが所属するSMPレーシングに関与している元F1ドライバーのミカ・サロは、母国フィンランドのタブロイド紙Ilta-Sanomatに対して、候補はシロトキンとクビサの2択に絞り込まれており、発表の時は近い事を明かしている。シロトキンがレギュラーを得るのか、はたまたクビサがシートを掴みシロトキンが開発ドライバーに収まるのか。誰がフェリペ・マッサの後任となるにしろ、クリスマス前には発表される見通しとなっている。

だが最も興味深いのは、一連の報道の発端がストロールの母国カナダの報道機関であった事だろう。その記事を書いたジェーナリストのルイ・ブッチャーは、自身が寄稿した記事ないしはその内容を、しばしば自らのTwitterで拡散させているが、今回の記事はかなりのビッグニュースであるにも関わらずスルーしている。