レッドブル、競合「退屈」の連続1-2快勝!初陣ベアマンは抱擁7位…角田は後退 / F1サウジアラビアGP 2024 《決勝》結果と詳報
2024年FIA-F1世界選手権第2戦サウジアラビアGP決勝レースが現地3月9日(土)にジェッダ市街地コースで行われ、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が後続に13.643秒差をつけ、ポール・トゥ・ウインで通算56勝を飾った。角田裕毅(RB)は15位に終わった。
僚友セルジオ・ペレスはピットストップ時のアンセーフ・リリースによってチェッカー後に5秒ペナルティを受けたが、それでもシャルル・ルクレール(フェラーリ)を振り切るのに十分なギャップを築いて2位でフィニッシュ。レッドブルが開幕戦に続く2戦連続の1-2フィニッシュを果たした。
最終ラップでファステストラップを刻み、意地のボーナスポイントを持ち帰った3位ルクレールは「レッドブルが速すぎて差が広がってしまい少し退屈なレースだった」と語った。
レース中盤のRB20のレースペースはフェラーリ、マクラーレン、メルセデス、そしてアストンマーチンより1周あたり1秒も速かった。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)はフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)からポジションを奪って4位でフィニッシュし、ジョージ・ラッセル(メルセデス)が6位に続いた。
初陣入賞ベアマン、フル参戦は「時間の問題」
虫垂炎により手術を受けたカルロス・サインツに代わってフェラーリ史上最年少F1デビューを果たした18歳のイギリス人ドライバー、オリバー・ベアマンは、コース上で次々とライバルを抜き去り、11番グリッドから殊勲の7位入賞フィニッシュを飾った。
「悪くないと思う」と自身を評価したベアマンは、48%の得票率でDriver of the Day(ドライバー・オブ・ザ・デイ)にも選出された。後輩についてルクレールは、F1フル参戦は「時間の問題」だと述べた。レース後のパドックには父と抱き合うベアマンの姿があった。
ランス・ストロール(アストンマーチン)が6周目に単独クラッシュを喫してセーフティーカー(SC)が導入されると、メルセデスとマクラーレンは2台同時ストップ、いわゆるダブルスタックによるリスクを嫌ったのだろう。各々チームで下位につけていたハミルトンとランド・ノリスをステイアウトさせた。
これにより2人は2回目のSC導入を心待ちにしながらのレースを繰り広げたが、その機会が訪れることはなく、スティントを引っ張った事により2台はベアマンにアンダーカットされ、ノリスは8位、ハミルトンは9位でチェッカーを受けた。
ハース、RBを苛立たせる戦略で初入賞
ピットウォールの物議を呼ぶ戦略とケビン・マグヌッセンのチームプレイにより、最後の入賞枠はニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)が掴み取った。
ヒュルケンベルグはSC導入の際にステイアウトした4台のうちの1台で、マグヌッセンは大多数と同じようにハードタイヤに履き替えていた。
角田裕毅とアレックス・アルボン(ウィリアムズ)に対するドライビングで計20秒のペナルティを受けていたマグヌッセンに入賞の芽はなく、チームは意図的にペースを落として走行するようマグヌッセンに指示を出した。
その狙いは、マグヌッセンの後方にいるライバル勢を抑え、ヒュルケンベルグがピットストップを終えた後に、マグヌッセンの前でコースに復帰できるようにする事にあった。
マグヌッセンはペースを緩めつつも締めるべきところはシッカリと締め、自らに託された役割をやり遂げた。足止めされたライバル勢は団子状態となり我慢のレースを強いられた。
この結果、ヒュルケンベルグは35周目にハードタイヤに履き替えると、マグヌッセンの前、実質的なポイント圏内でコースに戻り、最終的に10位フィニッシュを飾った。
この1ポイントは非常に大きな価値を持つ。実際、ハースは今季初のこの1ポイントによってコンストラクター選手権6位に浮上した。これはトップ5チームと下位5チームとの間の溝の大きさを示すものであると同時に、如何に中団が拮抗しているかの左証でもある。
ハースの活躍はRBにとっては実に苛立たしいものだった。
角田裕毅は懲罰が下される事になったマグヌッセンのルール違反の追い抜きによって前を塞がれ立ち往生した。ハードタイヤを履いたVCARB 01のペースが非常に悪かった事もあり、立て続けにライバルにパスされ、ポイント圏内9番手からスタートしながらも14位フィニッシュに終わった。
さらにレース後には、レコノサンス・ラップに向けて危険な形でガレージからファストレーンに出たとして5秒ペナルティを受け15位に降格した。
RBのレーシング・ディレクターを務めるアラン・パーメインは、ハースのレース戦略を「スポーツマンシップに反する」と評し、統括団体の国際自動車連盟(FIA)に問題提起する意向を示した。
チームメイトのダニエル・リカルドも一度も見せ場を作れず、ファイナルラップではターン1でスピンを喫し、ザウバー勢を抑えて16位でフィニッシュするのが精一杯だった。
レース概要
決勝は日本時間9日(土)26時にブラックアウトを迎え、1周6175mのコースを50周する事で争われた。現地ジェッダは晴れ、チャンピオンシップポイントを争うレースのフォーメーションラップは気温25℃、路面32℃のドライコンディションで開始された。
公式タイヤサプライヤーのピレリは2番目に硬いレンジのC2からC4までのコンパウンドを投入。レースでは最低2種類のコンパウンドを使用する義務があり、ミディアム、ハードと繋ぐ1ストッパーが主流となった。
ソフトタイヤを選んだ11番グリッドのベアマンと16番グリッドのバルテリ・ボッタス(ザウバー)を除く全車がミディアムを履いてグリッドに着いた。
レース展開
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)はフォーメーションラップでギアボックスに問題があると報告。グリッドには着いたものの、即座にリタイヤとなった。
ノリスはジャンプスタートを犯したものの、発進した後に再び停止。ペナルティが科されることはなかった。
注目のオープニングラップでペレスは、ターン1でルクレールから2番手を奪ったが、その後すぐに抜き返された。角田裕毅はストロールにポジションを許して10番手に後退したが、ソフトの優位性を以て果敢に攻めるベアマンからは順位を守った。
ペレスは4周目に再びルクレールに襲いかかり2番手に浮上。レッドブルは早くも1-2体制を築いた
6周目、ストロールがプラクティスの際と同じようにターン22のウォールに接触。単独クラッシュを喫してSCが導入された。ノリス、ハミルトン、ヒュルケンベルグ、周冠宇を除く全車がピットイン。ハードタイヤに履き替えた。
この際、レッドブルはタイヤ交換後のペレスをアロンソの目前でファストレーンに送り出した。スチュワードはアンセーフ・リリースがあったとして5秒ペナルティを科した。
10周目にレースが再開されると角田裕毅はベアマンにオーバーテイクを許して12番手に後退した。フェラーリの新人は14周目に周冠宇、21周目にはヒュルケンベルグを抜き去った。
マグヌッセンはリスタートのターン4でアルボンと接触。1回目の10秒ペナルティを受けた。
圧倒ペースのフェルスタッペンは13周目にノリスを交わしてラップリーダーに復帰。ペレスも18周目にノリスを攻略した。
17周目に角田裕毅は、アルボンとの接触によりフロアを破損したと報告するマグヌッセンに追い抜きを許して13番手に後退した。これはコース外に出たアドバンテージによるものと判断され、マグヌッセンは2回目の10秒ペナルティを受けた。ここでハースはマグヌッセンに意図的にペースを落として走行するよう指示を出した。
30周目、角田裕毅はターン1でマグヌッセンに仕掛け、一旦は12番手に浮上したかに思われたが、マグヌッセンがターン2で反撃。アクセルを緩めざるを得ず、この間にオコンに前を許して14番手に後退した。
無線での暴言が注目を集めた前戦バーレーンでの反省だろうか。角田裕毅はマグヌッセンのディフェンスについて「なんて危険な運転だ」と静かにコメントした。
VCARB 01のペースは上がらず、角田裕毅は34周目のターン1でアルボンにもオーバーテイクを許し15番手に後退した。
37周目、アロンソがターン9のインサイドウォールに接触する場面があったが、大きな問題には至らなかった。
同じ周、SCを待ち続けていたハミルトンが先行ピットイン。ソフトタイヤを履いて9番手でコースに復帰した。翌周にはノリスが同じくソフトに履き替えた。右リアの交換に手間取ったが、メルセデスのアンダーカットを防いでハミルトンの1.6秒前でコースに戻った。
その後、ハミルトンに対してストレートで蛇行運転をしたとしてノリスは黒白旗の警告を受けた。
ステイアウト組の最後の一人、周冠宇は残り9周でピットイン。右フロントの交換に手間取り最下位でコースに戻った。ザウバーは開幕戦でもボッタスのピットストップで大きく遅れた。
2024年F1第2戦サウジアラビアGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | フェルスタッペン | レッドブル | 50 | 1:20:43.273 | 25 |
2 | 11 | ペレス | レッドブル | 50 | +13.643s | 18 |
3 | 16 | ルクレール | フェラーリ | 50 | +18.639s | 16 |
4 | 81 | ピアストリ | マクラーレン | 50 | +32.007s | 12 |
5 | 14 | アロンソ | アストンマーチン | 50 | +35.759s | 10 |
6 | 63 | ラッセル | メルセデス | 50 | +39.936s | 8 |
7 | 38 | ベアマン | フェラーリ | 50 | +42.679s | 6 |
8 | 4 | ノリス | マクラーレン | 50 | +45.708s | 4 |
9 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 50 | +47.391s | 2 |
10 | 27 | ヒュルケンベルグ | ハース | 50 | +76.996s | 1 |
11 | 23 | アルボン | ウィリアムズ | 50 | +88.354s | 0 |
12 | 20 | マグヌッセン | ハース | 50 | +105.737s | 0 |
13 | 31 | オコン | アルピーヌ | 49 | +1 lap | 0 |
14 | 2 | サージェント | ウィリアムズ | 49 | +1 lap | 0 |
15 | 22 | 角田裕毅 | RB ホンダRBPT | 49 | +1 lap | 0 |
16 | 3 | リカルド | RB ホンダRBPT | 49 | +1 lap | 0 |
17 | 77 | ボッタス | ザウバー | 49 | +1 lap | 0 |
18 | 24 | 周冠宇 | ザウバー | 49 | +1 lap | 0 |
NC | 18 | ストロール | アストンマーチン | 5 | DNF | 0 |
NC | 10 | ガスリー | アルピーヌ | 1 | DNF | 0 |
コンディション
天気 | 晴れ |
---|---|
気温 | 25℃ |
路面温度 | 32℃ |
セッション概要
グランプリ名 | F1サウジアラビアGP |
---|---|
レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | ジェッダ市街地コース |
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設立 | 2021年 |
全長 | 6175m |
コーナー数 | 27 |
周回方向 | 反時計回り |