健闘を称え合う優勝したカルロス・サインツ(フェラーリ)と2位ランド・ノリス(マクラーレン)、2023年9月17日F1第16戦シンガポールGP決勝レース
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サインツとノリス、対ラッセルで”阿吽”の共闘…戦略的「Carlando」で以心伝心のF1シンガポールGP1-2

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敵の敵は味方。F1シンガポールGPでのカルロス・サインツ(フェラーリ)の優勝とランド・ノリス(マクラーレン)の2位表彰台は、親友ならではの以心伝心の共闘による戦術的プレーの賜物だった。

2戦連続のポールポジションを経てサインツは、計算高い走りとマクラーレン時代の親友ノリスとの阿吽の呼吸によってジョージ・ラッセル(メルセデス)への防衛を成功させ、キャリア2勝目、フェラーリにとって1年2ヶ月ぶりの勝利を掴み取り、レッドブルのシーズン全勝を阻止した。

抜けないマリーナベイ市街地コースで如何にして逆転優勝を狙うか。サインツを攻めあぐねたラッセルとメルセデスは終盤、エステバン・オコン(アルピーヌ)のマシンストップにより導入されたバーチャル・セーフティーカー(VSC)を機に果敢な戦略的判断を下した。

2位の座を捨て、フレッシュなミディアムタイヤを選ぶという判断はラッセルを一時的に4番手にまで後退させたが、タイヤのアドバンテージを以てチェッカーに向け圧倒的優位の反撃体制を築いた。

それまでタイヤを温存する戦略を採っていたサインツは一転、プッシュを余儀なくされた。できる限りマージンを稼ぐ事で逃げ切りを図った。

フェラーリ陣営は4-5番手から猛追するメルセデス勢に対し、首位サインツの防壁としてシャルル・ルクレールという駒を擁していたが、使い古したハードを履くモナコ人ドライバーにできる事は殆ど何もなかった。

「メルセデス勢があっという間にシャルルをパスして、ランドと僕とのギャップを縮めたのには驚いたよ」とサインツは語った。「あれで僕は少し戦略を変えなきゃならなくなった」

F1第16戦シンガポールGP決勝でのトップチェッカーを経てフェラーリSF-23の上で勝利を喜ぶカルロス・サインツ、2023年9月17日Courtesy Of Ferrari S.p.A.

F1第16戦シンガポールGP決勝でのトップチェッカーを経てフェラーリSF-23の上で勝利を喜ぶカルロス・サインツ、2023年9月17日

ルクレールがいとも簡単にオーバーテイクされた事でサインツは、1周辺りコンマ4秒ほどペースを落とした。2番手ノリスとのギャップは1.5秒から1秒を切るまでに縮まった。これが勝利の方程式だった。

ノリスにとって旧友の意図を理解するのは容易かった。ノリスはレース後、サインツは「本当に太っ腹だ」と笑い、「僕らは賢い方法で共闘したんだ」と語った。

「メルセデスが2台ともピットに入って、抜き返されるのは確実だなって思ったけど、カルロスが助けてくれたおかげで、なんとか食い止める事ができた」

「互いに助け合った結果、上手くいったんだ。僕が抜かれたらカルロスも抜かれただろうね。僕らは戦術的にプレーしなきゃならなかったんだ」

「もし僕がカルロスにアタックしていたら、おそらく僕は表彰台に上がれなかっただろうね。賢くやらなきゃならなかった。カルロスも賢くプレーしてくれた。彼は全てにおいてクレバーだった。彼を祝福したい」

サインツがペースを落としたのはノリスにDRSを与え、自身とラッセルとの壁役にさせるためだった。ノリスもまた、DRSなしにラッセルを抑え切ることは不可能だと分かっていた。利害が一致した。

「もしメルセデス勢がランドを交わせば、僕は死んだだろうね。あっという間にパスされたはずだ」とサインツは振り返った。

また、この戦略については「シンガポールのようなコースでは常に頭の片隅に置いておく」必要があるものだとした上で、「問題は、考えるのが容易い一方で実行するのは遥かに難しいってことだ」と付け加えた。

表彰台の上でカルロス・サインツにシャンパンをかけるフェラーリのフレデリック・バスール代表、2023年9月17日F1第16戦シンガポールGP決勝レースCourtesy Of Ferrari S.p.A.

表彰台の上でカルロス・サインツにシャンパンをかけるフェラーリのフレデリック・バスール代表、2023年9月17日F1第16戦シンガポールGP決勝レース

ペースを落とし過ぎればノリスにオーバーテイクのチャンスを与える事になる。かと言って中途半端にペースを落とせば、ただいたずらにラッセルとの差が詰まる事になる。だがサインツは筋書き通りにレースをコントロール。仕組まれた勝利を掴み取った。

サインツは「ドライバーとしてもアスリートとしても、仲が良く尊敬できる友がいるのは例外なく、いいものさ。1人の人間として、素晴らしい瞬間を分かち合えるのはいつだって気分がいい」と述べ、ノリスは「カルロスが上手く言ってくれたように、尊敬できる中の良い人と一緒に表彰台に上がるのはいつだって嬉しいよ!」と付け加えた。

サインツとノリスはレース後、お互いに1-2フィニッシュを祝うツーショット写真をSNSに挙げて「CARLANDOOOO 1-2!」とコメントを添えた。


2023年F1第16戦シンガポールGP決勝は、カルロス・サインツ(フェラーリ)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にランド・ノリス(マクラーレン)、3位にルイス・ハミルトン(メルセデス)が続く結果となった。

三重県鈴鹿サーキットを舞台とする次戦日本GPは9月22日(金)のフリー走行1で幕を開ける。

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