F1撤退検討で「裏切り」「残忍」と従業員達がルノー経営陣を非難、エンジン開発継続を要求…スト発展の恐れも
ルノーのF1パワーユニット(PU)開発部門に所属する従業員達は、撤退を検討しているルカ・デメオCEOを含む経営陣に強い不満を示し、メディアを通して激しい言葉で再考を要求している。
現行ハイブリッド・ターボの開発でライバルに遅れを取り続けている名門F1エンジンサプライヤーのルノーは現在、2026年の新規定導入を前に開発を打ち切り、ヴィリー=シャティヨンの人員を市販車部門を含む他のプロジェクトに配置転換することを検討している。
アルピーヌのモータースポーツ部門を率いるブルーノ・ファミンは、ヴィリーで働く350名近くの雇用を保証するとしているが、プライドを以てF1エンジン開発プログラムに携わってきた従業員は憤りを隠さない。
ヴィリーの労働者組合を代表するカリーヌ・デュブレウクさんは仏レキップ紙に対し、「このような事態になるとは思ってもみませんでした。完全な裏切りです」と述べ、「AR26」と名付けられた2026年仕様の次世代PUのテストベンチの結果さえ待たずに計画を進めてきたと経営陣を非難した。
また、仏ユマニテ紙に対しては、「本当に残忍」な決定であり「フランス産業の誇りであるエンジン開発を犠牲にして1億ユーロのコスト削減を行うのは、エゴの戦争に過ぎません」とも語った。
ルノーのPU開発費は年間1億2000万ドル(約173億円)程度で、カスタマーエンジンを購入する場合は約1700万ドル(約25億円)にコストを削減できると考えられている。
更に労働者組合は英AUTOSPORTに対し、ルノーの次世代PUはプロジェクトの継続を正当化するに十分なポテンシャルを秘めていると訴え、ルノーの経営陣に再考を要求した。
同組合によると、今年の6月26日に初めて始動した「RE26A」と名付けられた最初のエンジンは、最初の数時間の走行で400kWを超える出力を記録した。これは2026年の初戦に向けて設定された目標に近い数値であり、合わせて48%の熱効率を達成するなど、有望な結果を残した。
更に、現行のPUと比べて12%短く、車体との統合という点で「大きな余地」を提供できるだけでなく、レギュレーションで定められた最小重量さえ下回っており、信頼性に関する深刻な問題も発生していないと報告されている。
ルノーは従業員を含むリソースを、市販車プロジェクトのほか、フォーミュラEや耐久レース、ハイパーカーの水素燃焼エンジンなどの他のレースプロジェクトに再配置することを検討しているが、組合側によると前者はPU開発で培ったスキルを活かせるものではなく、後者は既に人員が飽和状態にあるという。
F1プロジェクトの今後に関する最終決定は9月30日に正式承認される見通しとなっており、撤退の決定が下された場合、アルピーヌF1チームはメルセデスからPU一式の供給を受ける見通しだが、そう容易に事が進むかどうかは分からない。
従業員たちの不満を背景にウエスト・フランス紙は、シーズン中にストライキが行われる可能性を指摘している。