ルノーF1エンジン撤退計画の原因は「デ・メオの破滅的リーダーシップ」元幹部が”怒り”の痛烈批判と警告
ルノーのF1パワーユニット(PU)サプライヤー撤退計画について、かつて法務マネジャーを務めていたピエール・ショーティは、ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOの「破滅的リーダーシップ」に起因するとして痛烈に批判した。
ルノーがF1事業からの撤退を検討しているという噂は数ヶ月前からあったが、元ルノーF1代表のフラビオ・ブリアトーレがF1担当エグゼクティブアドバイザーとして古巣エンストンのチームにカムバックすると話が加速。切り替えに向けたメルセデスとの交渉の事実が浮上した。
これを受け、2015年4月から2022年10月にかけてルノー・スポール及びアルピーヌで法務マネジャーを務めていたショーティはSNSを通して、「深い失望と怒り」を覚えるとした上で、この状況をもたらしたのは「デ・メオの破滅的なリーダーシップの直接的な結果」だと糾弾した。
2021年のルノーからアルピーヌへのリブランドのタイミングでデ・メオは、シリル・アビテブールに代えてローラン・ロッシをF1プロジェクトのトップに据えたが、2度のF1王者フェルナンド・アロンソとオスカー・ピアストリをライバルチームに奪われ、昨年はトップ5チームから転落した。
ロッシは自らが最高責任者であるにも関わらず、パフォーマンス不振の責任を負うのはチーム代表のオトマー・サフナウアーであるとメディアを使って世間に訴えたが、その2ヶ月後の昨年7月に退任。さらにその1週間後にはサウナウアーとスポーティングディレクターのアラン・パーメインがチームを去った。
数々の混乱と成績不振から2年半で首を切られるまでの間に、ロッシが「政治的な理由」で解雇したスタッフの数は計り知れないとショーティは指摘し、その原因はデ・メオにあると主張した。
「2年半以上に渡るローラン・ロッシの過ちをデ・メオが認識、是正しなかったことは容認できるものではない。デ・メオが彼自身の失敗を認めなかったこと、そしてロッシを任命するという彼の判断ミスが、アルピーヌとルノー・グループ全体に多大な損害を与えた」とショーティは主張する。
「あまつさえデ・メオは、F1エンジン製造の終了を自ら発表する勇気さえ持たなかった。これは彼の臆病さと責任逃れの姿勢を露呈するものだ」
「臆病と言えば、アルピーヌのCEOとしてローラン・ロッシが在任した期間もまた、劣悪なリーダーシップと人間性の欠如を示す一例だ」
「彼は純粋に政治的な理由で多くの従業員を解雇し、前経営陣と親しいと見なした人々に対し、直接面談するという良識さえ持たず、自ら手を汚さず解雇の仕事を人事部に丸投げした(無論、関連部署への配慮も皆無だった)」
「ロッシが内部コンプライアンスを無視したこと、そして彼の倫理基準の低さが状況をさらに悪化させた。彼の決定により多くの才能と経験が失われ、ブランドとF1チームは現在の窮地に追いやられた」
ルノー及びアルピーヌの長年に渡る停滞の原因が無能なリーダーシップにあると主張した元関係者はショーティだけではない。
かつての非常勤取締役、4度のF1王者に輝いたアラン・プロストはチームを去った後、ロッシを「傲慢さと部下に対する人間性の欠如によって、自らの非力さを克服できると考えている無能なリーダー」と痛烈に批判するとともに、ルノーの経営陣が「部下に意思決定をさせる機敏性と柔軟性」を備えていないことが低迷の元凶だと指摘した。
プロストの批判についてショーティは「内部の混乱を目の当たりにした多くの人々の共感を呼んだ」と言及し、メディアに訴えることを含めて自身も「倫理的懸念を提起」すべきだったとして「後悔」していると明かした。
英AUTOSPORTは、アルピーヌは早ければ2025年にもメルセデス製エンジンに切り替える可能性があると報じているが、不可能でないにせよ、あまり現実的ではないように思われる。
報道によると供給されるのは現在のアストンマーチン同様、PU一式に加えてギアボックスとリアサスペンションが含まれるという。現時点ではまだ決定は下されていない。
2025年型「A525」はルノー製PUおよびアルピーヌ製の関連コンポーネントの搭載を念頭に開発が進められているため、この段階での方針転換は膨大な作業とプロジェクトの大幅な巻き戻しが必要となる。
ルノーの上級管理職は今週火曜日、F1パワーユニット拠点および、アルピーヌF1チームの拠点であるエンストンの両従業員に対して現在の状況を説明するとともに、PUファクトリーの事業転換の可能性についての評価調査を開始したとされる。
自社製PUを放棄した場合の課題の一つはファクトリーで働く従業員の雇用だ。ルノーはヴィリー=シャティヨンのファクトリーを水素エンジン技術やバッテリー技術の研究開発に転用することで、従業員の雇用を確保したいと考えていると伝えられている。
しかしながらショーティは「有能かつ経験豊富な人材の喪失」は免れないと考えており、「500人以上の従業員、特にほとんど何らのセーフティーネットもなしに即時解雇される契約社員への影響」を考えると「心が痛む」と付け加え、これはアルピーヌおよびルノー・グループに「回復不可能な打撃」を与えるだろうと警告した。
一方で「個人的な感情はさておき、アルピーヌとメルセデスとの提携は技術的な利益をもたらすかもしれない」とも指摘した。