レッドブル、2022年以降のホンダF1エンジン継承実現に向け大きく前進も最大の正念場
レッドブル・レーシングが2022年以降も競争力を発揮できる否か。それはホンダ製F1パワーユニットの継承計画が実現するかどうかに懸かっており、英国ミルトンキーンズのチームは正念場を迎えている。
日本のエンジンメーカーが2021年末でのF1撤退を発表した昨年10月以降、レッドブルはホンダが血肉を注いで開発を進めてきた日本製のF1パワーユニットを2022年以降も継続使用できるよう、ホンダやF1、国際自動車連盟(FIA)との間で交渉を進めてきた。
アルファタウリ・ホンダの角田裕毅、2020年F1アブダビテストにて / © Red Bull Content Pool
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを努めるヘルムート・マルコは独AMUSに対して、ホンダ側との交渉は合意に至ったと明かし、計画が大きく前進した事を認めているものの、実現に際しては最後の難関を突破する必要がある。
F1は1月25日(月)に、現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンの開発凍結に関する電子投票を計画している。ホンダPUの継承を実現させるためにはPU開発の凍結が条件となるが、チームには各々思惑があり、凍結によるコスト削減の恩恵とパフォーマンス的な影響の両方が考慮される事になる。
性能が劣る状態で開発が禁止されれば、新型エンジンが導入される2025年まで悪い意味で安定的に不利な状況に置かれる。
レッドブルは各マニュファクチャラーのパワーユニット性能を平準化するための仕組みとして、性能差を元にした燃料流量調整の導入を提案しているが、メルセデスのトト・ウォルフ代表は昨年「それはF1の終わりの始まりだ」との表現で反対の立場を示している。
承認にはチーム、PUマニュファクチャラー、F1、そして国際自動車連盟(FIA)の各当事者による投票で大多数の賛成票を必要とする。チームとPUマニュファクチャラーは各1票、F1とFIAは各々10票を持つ。PU供給先の関係上、メルセデスは4票、フェラーリは3票、ルノーは1票を持っているものと見なせる。
ヘルムート・マルコとホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクター、2020年F1スペインGPにて / © Red Bull Content Pool
仮にPU開発の凍結案が破棄された場合、レギュレーションの規定に従いルノーがレッドブル並びにスクーデリア・アルファタウリにPUを供給する義務を負うことになるが、そうなった場合、この2チームが2022年以降もF1に留まる保証はない。
ヘルムート・マルコは開発凍結案が破棄された場合「レッドブルはF1での計画を抜本的に見直さなければならない。これは恐喝ではない」としており、プランB、つまり代替案を用意していないと公言している。
ミルトンキーンズのチームにPUの保守・開発を担えるだけの人材や予算・設備はない。2020年シーズンのホンダPU「RA620H」がそうであったように、予期せぬ問題が発生した場合にレッドブル単体では対処のしようがない。開発凍結はホンダ資産引き継ぎ計画の必要条件だ。