直線速度の謎…メルセデスのリアの車高変化に注目するレッドブル・ホンダ、その理屈とは?
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直線区間でのメルセデスW12の驚異的なトップスピードについてレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は、ストレートでのリアの車高変化に注目し、何らかのトリックが使われていると考えている。
英国ミルトンキーンズのチームはフランスとオーストリアで優勢に立ったものの、メルセデスは再びアドバンテージを取り戻し、イタリア、ロシア、トルコの過去3戦でライバルを上回るマシンを作り上げた。
この序列変化のスイッチ期間に位置しているのがイギリスGPだ。新たな空力パッケージを導入したシルバーストン以降、メルセデスはトップスピードを飛躍的に上げた。パドックではその理由について様々な説が飛び交っている。
タイトル争いを繰り広げるライバルのトップスピードの秘密についてクリスチャン・ホーナーは、F1アメリカGPの初日にSky Sportsのインタビューに応じ、メルセデスが今現在「作動させているシステム」から生じている可能性があるとした上で「彼らはトルコでリアの車高を大幅に下げていた」と指摘した。
ストレートの走行中にマシンのリアを下げるとストレートスピードが向上するというのはどういう理屈なのだろうか?
走行中に車体後方下部が地面に近づくと、地面とフロアとの間を流れる空気の流れが悪化し、フロア後端に取り付けられているディフューザーへの供給が滞り、その効果が低下、あるいは失われる。
つまり、フロア下で生成されるダウンフォース量が減少するのだが、それは同時にドラッグ(空気抵抗)の低下も意味する。つまりトップスピードを引き上げる事ができるというわけだ。
ただし、これがコーナーで発生してしまうとグリップが低下しコーナリング速度が落ちてしまうため、あくまでもストレートでのみリアのライドハイトを下げる必要がある。
この手法が恐ろしいのは、単にトップスピードが向上するだけに留まらないという点にある。
通常よりも余計にトップスピードが速いという事は、その分だけよりダウンフォースが多めのウイングを装着できるという事であり、結果として直線でのトップスピードだけでなくコーナリング速度も向上させる事ができる。
無論どんなクルマであれ、より大きな力が掛かる高速域での走行ではリアが下がるものの、メルセデスのリアの車高変化は特に大きく、ローレーキという車体特性があって初めて可能な仕組みとも言える。
例えばレッドブル・ホンダRB16Bはハイレーキの空力哲学を貫いている。よってW12より平時のリアが高く、ディフューザーの機能を無効化する程にライドハイトを下げる事は不可能と思われる。
なおメルセデスのトト・ウォルフ代表は金曜会見の中で前述のホーナーの指摘について問われると、問題を一発で解決できるような「銀の弾丸」は存在しないと強調し、トリック的なデバイスの存在を否定した。
「F1は銀の弾丸のようなものがないかを常に見つけだそうとする競技者達が住む世界だという事を我々の誰もが認識している事と思うが、私の経験から言えばそんなものは存在しない」
「小さなゲインの積み重ねがパフォーマンスをもたらすのであって、我々は雑音に耳を傾けすぎる事なく、自分たちのクルマに対する理解を深め、パフォーマンスとラップタイムを向上させようと取り組んでいる」
「我々はシルバーストンでアップグレードを導入して以来、すべてのレースを通して少しずつ理解を深め、最大限のパフォーマンスを引き出す方法を見出してきた。そしてそれはソチ、トルコ、そしてここ(アメリカ)を経て、間違いなく正しい道だという事が証明された」
また、トルコGPで大きな一歩を踏み出した事について問われるとトト・ウォルフは、セットアップの「スイートスポット」を見つけたのだと説明した。
「それは今日のラップタイム(FP1)にストレートラインでのゲインとして表れている。ドラッグとダウンフォースの適切な妥協点を見つける事ができたのだ」
「我々は高速コーナーで非常に速く、低速コーナーではレッドブルと互角に戦えている。つまり全体としてクルマが遥かにまとまっているという事だ」