爆笑フレキシブル論争:レッドブル・ホンダ、メルセデスを標的にフロントウイング規制強化をFIAに要請
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F1フランスGPが閉幕し、レッドブル・ホンダを含む幾つかのチームを標的としたフレキシブル・リアウイングに掛かる疑惑と非難の応戦が一つの終焉を迎えた。次はメルセデスをターゲットとしたフレキシブル・フロントウイングだ。
メルセデスの告発をきっかけに国際自動車連盟(FIA)が介入する事態となったリアウイングの剛性規制。技術指令書の発行によってフランスGPより厳格化された負荷テストが行われたが、施行までに猶予期間が設けられた事もあり全ての車両が合法と判断された。
この新たなルールに対応するため、チャンピオンシップをリードする英国ミルトンキーンズのチームは想定外の支出を余儀なくされる事となった。今季より導入された予算上限ルールに頭を悩ませる中、レッドブル・ホンダはウイングの再設計と製造に日本円にして約5,500万円程度の費用を捻出したものとみられる。
興味深いのは、”たわむ”事のないウイングによってストレートでのアドバンテージが消滅するかと期待されたレッドブルRB16Bにダメージらしきものがなかった点だ。ポイントリーダーは予選・決勝共に高速のミストラルストレートでライバルを凌駕した。
ストレートで「0.35秒」ものアドバンテージがある以上、メルセデスがライバルに対して先行の2ストッパーに打って出る事はできず、逆にレッドブルはリードラップを捨ててまで2ストップ戦略へと切り替え、ラスト2周での逆転首位劇を演じてみせた。
更にはタイヤ内圧の引き上げもレッドブルの競争力を目に見える形で削ぐ事はなかった。前戦アゼルバイジャンGPでのタイヤブローの一件で、レッドブルとアストンマーチンは不適当に内圧を低く抑えているのではとの疑念が向けられていた。
フランスGPでピレリが指定内圧を引き上げた事でこの領域においてもパフォーマンスダウンがあるかに思われたが、フェルスタッペンはポールポジション、優勝、ファステストラップと、完全試合でゲームを制した。
コース上でのバトル、戦略、舞台裏での開発・研究競争、そしてフレキシブルリアウイング論争を含めたコース外での場外戦。レッドブル・ホンダ対メルセデス、そしてマックス・フェルスタッペン対ルイス・ハミルトンのチャンピオンシップ争いは一進一退の大激戦であり、選手権制覇のためにはあらゆるエリアで”プッシュ”し続ける必要がある。常勝を志とするV8時代の王者は手を緩めず反撃に打って出る。
フランスGPからの剛性規制強化が決定した際、レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は、イモラでの映像証拠を理由にメルセデスもまた不当にたわむフロントウイングを使用していると主張した。リアウイングが規制強化の対象となったのであれば、フロントのフラップに対する監視も強められて然るべき、という理由だ。W12のフロントウイングはストレートを走行中に後方に傾斜し、ブレーキングと共に元の位置に戻るという。
実際に違法か否かはさておき、レッドブル・ホンダはFIAに対してメルセデスのフロントウイングの合法性を調査するよう働きかけている。レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「FIAはその件に取り組んでいる。確たる映像がある」と独Skyに述べ、FIAに一件の審査を要請した事を明かした。
フランスGPのレースを終え、Sky Sportsで解説を務めていた元メルセデスF1ドライバーのニコ・ロズベルグはホーナーに対して「トト(ウォルフ / メルセデス代表)や他のチームにリアウイングを標的にされ変更を余儀なくされたわけだけど、メルセデスの方はまだフロントウイングが平均以上にたわんでる。どうするつもりなの?」と直球を投げた。
これに対してホーナーが「基本的には仕返しだ。今日はバルセロナでの借りを返したし、数週間以内にはフロントウイングで借りを返す事になる」と答えると、隣にいたトト・ウォルフが割って入り、ロズベルグに対して「おいおい、俺たちにケチをつけるのか? 我々は君に長年に渡って高い給料を払ってきたというのに!」と反撃。3人は大爆笑した。
恐らくはフロントウイングも厳格化された剛性検査の対象に加えられる事になるだろうが、リアウイングの時と同様に猶予期間が設けられるものと考えられる。まだフロントウイングの規制に関しては具体的な動きはないものの、一連のフレキシブル論争は早くも終わりを迎える兆しを見せている。