レッドブル・ホンダ「バルセロナの二の舞は御免だ!」リスク恐れず一旦自らリードを捨てた戦略判断
F1第7戦フランスGPでのマックス・フェルスタッペンの勝利の背景の一つには、ラップリードを捨ててまで再度ピットに入るというピットウォールの勇気ある決断があった。それは第4戦スペインGPの反省から来るものだった。
5月のバルセロナで行われたレースでフェルスタッペンは、2番グリッドからスタート直後にルイス・ハミルトン(メルセデス)を交わして首位に浮上したものの、レース中盤にハミルトンが2回目ピットストップを実施。新品ミディアムに履き替えてペースを上げた7度の王者は、最終盤にタイヤの履歴差を活かしてフェルスタッペンをオーバーテイク。1ストッパーのレッドブル・ホンダは逆転負けを喫した。
フランスGPが行われたポール・リカール・サーキットはスペインGPの舞台、カタロニア・サーキット同様にマシンの総合力が問われるコースで、メルセデスが過去数年に渡って無敗を誇ってきた場所だ。ミルトンキーンズのチーム首脳陣とストラテジストの脳裏には、この時の手痛い思い出がうずいていた。
20日のフランスGP決勝でポールシッターのフェルスタッペンは、1周目にラップリーダーの座をハミルトンに明け渡すも、1回目ピットストップでアンダーカットを成功させて首位を奪還。レース中盤に先頭を走っていたが、敢えて再びピットに入った。
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は「マックスは好スタートを切ったものの、序盤の小競り合いでリードを失った。だが何とかそれを切り抜け、最初のピットストップ後の見事なアウトラップによってトラックポジションを取り戻してみせた」とレースを振り返り、攻めの戦略に打って出たのはスペインGPの悪夢を恐れての事だと認めた。
「バルセロナの二の舞は御免だったから、我々は自らトリガーを引いて2ストップ戦略を採ることにしたわけだが、有り難いことにこれが功を奏した」
「残り21周というタイミングで自らリードを捨ててピットインするのは簡単な話ではないが、我々はリスクを恐れず敢えてそうする事を選んだ」
最終的にこの判断が功を奏し、フェルスタッペンは残り2周で1ストッパーのハミルトンを軽々と抜き去って今季3勝目を飾ると、前戦アゼルバイジャンGPウィナーであるチームメイトのセルジオ・ペレスと共に表彰台に上がった。
「2連勝とダブル表彰台を達成し、両チャンピオンシップでのリードを広げる事ができた。チーム全体を心から誇らしく思う」とクリスチャン・ホーナーは続ける。フェルスタッペンは満額ポイントでドライバーズ選手権でのリードを12点に拡大。チームは計41点を得てコンストラクターズ選手権でのリードを37点差にまで広げた。
「我々は戦略を分け、チェコ(ペレス)の方は1ストップで行く事にした。彼は見事それをやり切って3位という結果を持ち帰ってくれた。全てにおいてファンタスティックなチームパフォーマンスだった」
「ご覧の通りの接戦で、2チームのマシンの性能差は本当に僅かしかない。チャンピオンシップはまだまだ先が長いし、今後もプッシュし続けて更にパフォーマンスを追い求めていかねばならない」
「保証など何処にもありはしないが、今はこの勢いと共にオーストリアに向かい、チームのホームで行われる2連戦の初戦に臨みたい」
レッドブル・リンクを舞台とする次戦シュタイアーマルクGPは6月25日のフリー走行1で幕を開ける。