F1空力テスト罰則、ニューウェイがほぼ影響なく克服できる可能性ありと考える理由
空力テスト削減ペナルティについてレッドブル・レーシングの最高技術責任者(CTO)を務めるエイドリアン・ニューウェイは、マシン開発の「足枷」になると認めつつも、殆ど影響なく克服できる可能性があると指摘する。
コンストラクターズ選手権を勝ち取ったチームはただでさえ、来年の空力開発の割り当てが最も大きく差っ引かれてしまう。F1では2021年より、選手権順位に応じた空力テスト制限が導入された。
従来は空力開発に制限はなく、一部のチームはコンマ1秒のゲインのために24時間年中無休で風洞を稼働させ続けていたが、これには莫大な資金が必要で、小規模資本チームとのパフォーマンス格差を生み出す一因となっていた。
レッドブルは2021年シーズンの予算上限ルールに違反した事で、風洞およびCFDによるテスト時間が更に10%減少する事となった。この結果、テストの割り当ては選手権7位のチーム(100%)に対し、本来70%だったものが63%にまで減少した。
これは2022年シーズンの最下位に終わったウィリアムズの約半分ほどで、ランキング2位につけたスクーデリア・フェラーリより16%少ない。
テスト制限ペナルティについて空力の鬼才と称される天才的デザイナーは「我々にとって足枷となるのは間違いない」とする一方、効果的な設計によって克服できる可能性があるとの考えを示した。
「(実車)テストがないため、(テスト制限罰則が)1周あたりコンマ何秒のコストに繋がるのかについては答えを出すのが非常に難しい」とニューウェイは語る。
「風洞実験の削減によって我々は、評価できる構成要素やアイデアの数が制限されることになる」
「ただそれは同時に、賢明に、そして常に正しいものをモデル化しさえすれば、当然、大きな違いにはならないという事を意味する」
制限付き風洞試験(RWTT)ルールは原則として、テスト回数を320回、計400時間、対気速度が15m/秒超えのテストを80時間に制限するものだ。レッドブルの場合は201.6回、252時間、そして15m/秒超え試験は50.4時間に制限される。
制限付きCFDシミュレーション(RCFD)ルールでは使用可能な計算量をメガ・アロケーション・ユニット時間(MAUh)で計測する。これはチーム毎に異なるCPU性能の差異を考慮に入れたもので、基準は6MAUhに制限されている。
ランキング7位のチームは2000個の異なるパーツ(制限付き空力試験ジオメトリ / RATG)をコンピューターシミュレーションによってテストする事ができるが、レッドブルの場合はこれが1260個、MAUhは3.78に制限される。
2023年シーズンのテクニカル・レギュレーションの変更はグランドエフェクトカー導入初年度の今年と比べれば些細なものだ。だがニューウェイは、過小評価するのは危険だと警告する。
「冬の間にレギュレーションが僅かに変更され、フロアエッジが15ミリ持ち上げられる事になった」とニューウェイ。
「もちろん、これは些細なことのように聞こえるが、実際にはかなり大きな空力的変化をもたらすものだ」
「だからこそ今年は、すべてのチームが今季向けの通常の開発に加えて、その分の赤字を減らすために取り組んでいた。特にシーズン後半はね」
2022年シーズンのF1世界選手権は結果として、レッドブルとマックス・フェルスタッペンがフェラーリとシャルル・ルクレールを大差で下す結果に終わった。
実際、ニューウェイは「我々のクルマがベストだ」と強調するものの、2023年はフェラーリとメルセデスがより激しい競争を仕掛けてくると予想している。
「フェラーリは自分たちの弱点をある程度、解決してくるだろう。今年は信頼性の問題に加えて、明らかにピットウォール側にもミスがあった。だからすぐにでもカムバックしてくるはずだ」
「そして当然のことながらメルセデスもそうだ。彼らのペースは当初、かなり遅れていたが、最終戦を勝ち取るまでにクルマを進化させた」
「彼らが背後に迫っている事は分かっているし、タフなシーズンになることは間違いない」