アゼルバイジャンGP予選を終えてヘルメットを脱ぐフェラーリのセバスチャン・ベッテル
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バクーの週末を圧倒していたフェラーリ、強大なアドバンテージは何故予選で消滅したのか?

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SF90の強大なアドバンテージは何故予選で消滅したのか? F1第4戦アゼルバイジャンGPの週末、全てのプラクティスで1-2を果たしたスクーデリア・フェラーリは、メルセデスとレッドブル・ホンダに対し、一貫してコンマ6秒もの大量ギャップを築いていた。

赤旗遅延によって急激に低下した路面温度

「最後は難しい選択を迫られた」とセバスチャン・ベッテル。「路面温度が低下したためにクルマのバランスが変わってしまった。1周のウォームアップだけでタイヤを機能させるのが難しい状況だった。アタックに入る前にロングストレートがあるから尚更さ」

ルクレールがトップ、ベッテルが2番手に続いた予選前の最終フリー走行。3番手につけたマックス・フェルスタッペンに1.248秒もの大差を付けた際の路面温度は44度。対して、ロバート・クビサのクラッシュによってスケジュールに遅れが生じた予選Q2のそれは32度。週末を通して最も低く、実に12度もの開きがあった。

予選Q2でクラッシュする直前のシャルル・ルクレール、ミディアムタイヤを履いていた
© Ferrari S.p.A.、予選Q2でクラッシュする直前のシャルル・ルクレール、ミディアムタイヤを履いていた

バランスに苦しみ、パワーユニットの優位性を活かせなかった開幕オーストラリアGPでの敗因の一つはバルク温度にあった。クルマを路面に合わせこむことが出来ず、タイヤの内側温度を適正領域に入れ込めなかったため、期待はずれの週末に終わった。

メルボルンよりも暖かいコンディションに恵まれたバーレーンでは、プレシーズンテスト時の強烈な速さが復活。スピードトラップがそれを物語っていた。続く上海では再び後退。汚れた路面と涼しい気温がSF90の本来のパフォーマンスを閉じ込めた。

皮肉にも、ルクレールのクラッシュによってQ3開始時刻が更に遅延。刻々と日は沈み、Q3でのベッテルは、ポールシッターのバルテリ・ボッタスから0.302秒遅れた。

熱入れかスリップストリームかの二択

ベッテルは2つ目の敗因としてスリップストリーム=トウを上げる。高速で走るマシンの後方には空気抵抗が小さいエリア、スリップストリームが発生する。スリップの中を走行することで、トップスピードを妨げる空気抵抗を抑える事が可能となる。バクー市街地コースには2kmを超えるエンジン全開区間があるため、トウの効果は極めて大きい。

「残り時間が少なくなり、全車一斉に最後のアタックに出た。その時に判断を迫られた。タイヤとトウのどちらを取るかってね。ライバルはみんなトウを得ていた。トウを優先した場合は集団の中でアウトラップを走らなければならない。僕はトウを捨ててクリーンラップを選んだ」

ベッテルはトウが得られなかった分の損失について「(トウがないために)多分コンマ4秒くらいを失ったと思う。かなりのタイムロスだった事は間違いない」と語った。

頼りないロングランペース…挽回の見込みは?

3レースを終えて、フェラーリはメルセデスに対して選手権で57ポイントのビハインドを抱えている。負けが許されない第4戦。低速コーナーでのハンドリング改善のために、マラネロはSF90にフロアを始めとする大規模なアップグレードを投入した。

一発の速さに関してフェラーリの右に出るものはいなかったが、ロングランペースではメルセデスとレッドブル・ホンダに遅れを取っている。金曜のレースペースで言えば、フェラーリはメルセデスに対して1周あたりコンマ8秒、レッドブル・ホンダに対してはコンマ4秒失っていた。

9番手スタートとなるルクレールはフロントランナーから離れており、連携プレーも難しい。巻き返しは可能だろうか?

「このサーキットでは時折起こる事だけど、シャルルがバリアに突っ込んでいるのが見えた。彼の予選が終わった事を悟ったよ」とベッテル。「僕らは一つのチームだし、ガレージ関係なくチーム全体が懸命に仕事に取り組んでいるわけだから、もう一台を失ってしまった事は残念だ」

「とにかく、今日はもう終わったわけで明日は明日だ。気持ちを切り替えなきゃね。レースは長いし何が起きても不思議じゃない。チーム一丸となって巻き返しを目指し、ライバルにプレッシャーを与えたい。僕らには速いマシンがあるから、激しくバトルしつつレースを楽しむつもりだ」

波乱必至の2019年F1第4戦アゼルバイジャングランプリ決勝レースは、日本時間4月28日(日)21時10分にブラックアウトを迎え、1周6,003mのバクー市街地コースを51周する事で勝敗を決する。

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