マスク姿のレーシング・ポイントF1チームのオーナー、ローレンス・ストロール、2020年 70周年記念GPにて
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レーシングポイントF1のオーナーが激昂…控訴を通して「名前に泥を塗り」「貶めよう」とする競合チームを猛非難

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レーシングポイントの今季型F1マシン「RP20」を巡る裁定が”甘すぎる”等として、控訴する意向を表明したライバルチームの行動と言動に関して、レーシング・ポイントF1チームを所有するローレンス・ストロールが「激昂」している。

2019年シーズンのチャンピオンマシンであるメルセデス「W10」との類似性が広く論争となってきた「RP20」に対し、ルノーがそのブレーキダクトに焦点を絞って違法性を問うた事から、国際自動車連盟(FIA)が調査に着手。その判決が70周年記念GPの初日8月8日(金)に下った。

一連の調査を終えたスチュワードは競技規約違反があったと判断。レーシングポイントに対して計40万ユーロの罰金とコンストラクターでの15点の剥奪を科す裁定を下したが、問題のブレーキダクトを継続使用する事は更なる処罰の対象とはならないと明言。この判決に対してルノー、マクラーレン、フェラーリ、ウィリアムズの4チームが控訴の意向を表明した

強い表現でライバルを非難するローレンス・ストロール

こうした状況に対してローレンス・ストロールは70周年記念GPの決勝当日、ライバルチームが控訴を通して「パフォーマンスを貶め」「名前に泥を塗ろうとしている」などとして、直接的かつ非常に強い表現で競合チームを非難する声明文を発表した。

「私はあまり公の場で発言することはないが、我々が不正あるいはイカサマをしていたと仄めかされている事、特に、ライバルチームから向けられたコメントに対して激昂している」

「私は生まれて金輪際、一度たりとも不正に手を染めたことはない。これらの非難は全く受け入れがたいものであり、真実ではない。私とチームの誠実さに疑いの余地はない」

「レーシングポイントのスタッフ全員が、FIAの裁定にショックを受け、失望している」

「FIAが今週、これまでに存在しなかったグランドファーザー条項(既得権条項、古いルールが既存の一部の状況には引き続き適用される一方で、今後のすべてのケースには新しいルールが適用されるという規定)を新たに導入したことにも衝撃を受けた」

「レーシングポイントがテクニカル・レギュレーションを遵守していたという事実が明らかにされたにも関わらず、ルノー、マクラーレン、フェラーリ、ウィリアムズがこれを控訴のチャンスと捉え、我々のパフォーマンスを貶めようと企てている事にも驚愕している」

「彼らは我々の名に泥を塗ろうとしているが、私にはこれを我慢したり受け入れたりはしない。私は我々の無実を証明するために必要なあらゆる行動を取るつもりだ」

「私のチームは、グリッド上で高い競争力を誇るマシンを用意すべく、たゆまぬ努力を重ねてきた。ライバルたちのスポーツマンシップの低さには本当に腹が立つ」

「FIAが置かれている状況は、さまざまな理由で困難かつ複雑なものだと理解している。スポーツの最善の利益のために解決策を見つけようとするFIAの努力に敬意を表すと共に、感謝を表明したい」

示されなかった”リスティドパーツ”移行の扱い

本件の核にあるのは、コンストラクターによる独自設計を義務付けたパーツのリスト、いわゆる”リスティド・パーツ”だ。ブレーキダクトは昨年まで対象外であり合法的に入手できたが、今季より新たにリストに加えられた。

スチュワードは「RP20」のブレーキダクトについて、フロント側は昨年の「RP19」に搭載のダクトの進化型であるとして独自設計を認定した一方、リア側はメルセデス「W10」のダクトを模したものだと判断。ブレーキダクトの”主たる”設計者はレーシングポイントではなくメルセデスであるとして、本来投じるべき設計コストを不正に圧縮して競争上の優位性を得たと見なした。

ローレンス・ストロールがFIAの裁定に不満を訴える理由の1つがここにある。FIAはブレーキダクトをリスティド・パーツ化するに際しての管理方法や扱いを明確にしていなかった。

レーシングポイントは昨シーズン中に既に、W10のリアブレーキダクトを合法的に知りうる立場にあった。ローレンス・ストロールは「(リスティドパーツに組み込まれる前の時点で)知っていた事や学んだ事は、自分たち自身の情報だ」と主張する。

「非リスティド・パーツからリスティド・パーツへの移行に関するFIAのガイダンスはなく、レーシングポイントは2020年3月にFIAからこの件について規約を遵守している旨の書面による確認を取っている」

なおスチュワードは、ブレーキダクトがリスティド・パーツに組み込まれた2020年度の競技規約の施行日を2020年1月1日とした上で、レーシングポイントが2020年1月6日にメルセデスから2019年スペックのブレーキダクト一式を取得した事実を公にしているが、リスト内容の変更という特殊事情を鑑み、当該受け渡しに関してこれ以上追求する事は適切ではないとの判断を示している。


控訴の意志を表明したチームは正式な控訴手続きを取るか否かを、グリニッジ標準時8月11日午前9時30分までに決断しなくてはならない。1チームでも控訴に踏み切れば、本論争はFIA国際控訴審判所(The FIA International Court of Appeal)に持ち込まれる事になる。

最終的にどういった判断が下されるかはさておき、FIAは「グリッドに10台ものメルセデスのコピーが並ぶ」状況を望んでおらず、2021年のF1レギュレーションを改定することで、RP20のような他車のコンセプトをまるごとコピーするといった類の手法を来季から禁止する方向で調整を進めている

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