ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターの後ろ姿、2020年F1ポルトガルGPにて
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逆襲に向けた”新骨格”採用のF1パワーユニットRA621Hは「ホンダF1の意地」と田辺TD

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ホンダの集大成、2021年型F1パワーユニット「Honda RA621H」は昨年型とは構造が異なる“新骨格”を採用する。リスクを負ってまでアーキテクチャを一新したのは「ホンダF1の意地」だった。

ホンダは昨年10月、カーボンニュートラルへの注力を理由に、2021年末限りでのF1参戦終了を発表した。屈指の強豪レッドブル・レーシングとのコラボレーションが上手く機能し始めた直後の撤退発表に、ファンの中には落胆ではなく怒りに近い感情を表す者も少なくなかった。

ただそれは恐らく、実際のコースやHRD SakuraでホンダF1プロジェクトに全てを注ぎ込んできた現場の人間も同じ事だろう。高ぶる感情はそのベクトルに関わらず、対象の存在・想いの大きさに比例する。猛烈な嫌悪と愛好の根本にあるものは得てして変わらない。

長谷川祐介の事実上の後任として、2018年1月よりホンダF1の現場を指揮してきた田辺豊治テクニカルディレクターは”ホンダストーリー”の中で、ホンダが昨年、王者メルセデスに遅れを取っていた事は「明らか」であるとして、「悔いなく戦いきるため」「ライバルと同等、そしてその上に行くため」に今回導入した”新骨格”が重要だとの考えを示した。

下を向きながら歩くホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターcopyright Honda

下を向きながら歩くホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクター

田辺TDは更に、新骨格導入の発端はF1プロジェクトの開発総責任者を務める浅木泰昭HRD Sakuraセンター長からの一言だったと説明し、一切の出し惜しみなく全てのノウハウを投じたRA621Hの新骨格は「ホンダF1の意地」の表れだと語った。

「浅木さんから『新しい骨格で』との話があり、導入を決断しました。PU単体で見ると変化の度合いはつかみにくいかもしれませんが、従来のものを搭載したマシンと21年のものを並べて見ると、車体の後部が明らかに違います」

「小さく、コンパクトになっていて、車体のパッケージングにも寄与できていると思います。この新骨格は、Sakuraとミルトンキーンズにいる開発部隊が最終年にかける情熱を表すものですし、Honda F1の意地とも言えるものです」

田辺TDが「マシンのトータルパフォーマンスを上げる」ためと語るように、RA621HはPU単体でのパワーと信頼性の向上だけでなく、レッドブル開発の今季用シャシー「RB16B」を含めたパッケージ全体での性能向上を狙ったものだ。

F1ベストエンジンに仕上がっている可能性があると指摘されるなど、RA621H + RB16Bの組み合わせには海外からも大きな期待が寄せられており、メルセデスによるV6ハイブリッド時代支配体制の終焉となるかが注目されている。

田辺TDは「この2021年がプロジェクトの最終年となるわけですので、関わる一人ひとりが悔いのない形で最後の年をやり切った、と思えるシーズンにしたい」と述べ、新骨格の導入は必然だったと付け加えた。

高まる期待とは裏腹に、メルセデスを打ち負かすのは決して簡単な話ではない。

確かにプレシーズンテストでのメルセデスは信頼性を欠きリアエンドに課題を抱えていたが、現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンが導入された2014年以降、ドライバー及びコンストラクターの両タイトルを独占し続けている。

レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は「メルセデスによる7年間のF1支配に終止符を打つ事ができるのではとの期待感が高まっていることは否定できないが、直面が想定される様々な課題の大きさを過小評価する事はできない」と述べ、次のように続ける。

「テスト後のチーム内でのデブリーフィングを経て、我々はこの件について少し慎重だ」

「メルセデスは過去7年間に渡って高いレベルを維持してきたチームだ。挽回に向けたモチベーションに溢れているはずだ」

「2年前のプレシーズンテストも似たような状況だったが、結果として彼らは初戦のメルボルンで見事に完勝した」

「彼らは昨年、最も力強いシーズンを過ごした。今年のマシンはそんな昨年のマシンを進化させたものなのだ」

勝ってその名を歴史に刻めるか? 2021年FIA-F1世界選手権開幕バーレーンGPは3月26日のフリー走行1で幕を開ける。